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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

「命のやりとり」を見せられている【劇団新感線 天號星】

太一さんお誕生日おめでとうございます!

初日振り2度目の天號星、東京公演 9/24マチネを経たエントリです。2回観たけど結局おんなじとこで「ハァ〜〜最高〜〜〜!!!」ってなっちゃってその先の感想に進めないので、とりあえずちょっとでもエクスポートして咀嚼して一歩ずつ進んでいこうね、という試みです。


ちなみに初日の感想殴り書きはこちら。


役を乗せた命のやりとり

最後の殺陣が刺さりすぎていて、なんでこんなに刺さってんのかなあってぼんやり考えながら一晩経って、ふと気がついたのは、私たちは初めてシンプルな「命のやりとり」を見せられているのかもしれないなってこと。

「みんなを守るために強くなってお前も斬る」
「本気になれないなら女どもを先に殺すか?」
「最後の悪縁を切る」

と一応理由付けしてはいるものの、どちらかの復讐を果たすでもなく、相手に引導を渡すでもなく、なんの因果もない2人がただ命を賭けた斬り合いをすることが目的なんですよね。

「あの頃は楽しかった」と笑ったワカ天魔王も、無界で「楽しいなあ」と嘯いた蘭兵衛も、「ただ殺しが好きなんだ」と泣いたランディも、舞台上で「ただ斬るための斬り合い」はしてなかった。

新感線ではじめて「ただお互いの命を掛けたやりとり」を見せられてるのかもしれない。


しかも「早乙女太一早乙女友貴」が勝負をつけずに熱量をぶつけ合う「剣舞」じゃなくて、「半兵衛と朝吉」が勝負を付ける殺し合うための「殺陣」をやってるんですよ。

殺陣の途中で見えるのは兄弟の感情の発露じゃなくて、「剣の腕はまだまだだけど嫌いな人斬りとしてすっかり成長してしまった半兵衛」と「何度も銀次に失望した果てにようやく命を賭けた勝負ができて清々しい気持ちの朝吉」が、ヒリヒリする命のやりとりをしてる表情なんですよ。

兄弟で作り上げる剣舞じゃなくて、人斬りと人斬りとして命を賭けた殺陣やってんですよお。

観てて昂らんわけがないやろがい!!!


言葉にしたら朱雀と同じ「兄弟殺陣」なのに、同じふたりが同じように刀を合わせてるのに、こんなに違うものを見せられてるんですよ。なんで?????新感線に輸入したからです。天才か?????

お互いが役を乗せて斬り合う殺陣、兄弟だけじゃないんだよなあ、そう、古田新太もですね。半兵衛として逃げ惑いながらなんとか応戦するアワアワした姿と、銀次として寸止めして、朝吉を軽くあしらって、くるりと刃を下に向けて刀を持ち主に返すあの感じ、なんだろうね??!!?!

「朝吉をあしらう銀次」は藤壺屋の前と特訓中と、別の身体で2回あるけどアレ絶対同一人物だもんな。なんでだよ???????

殺陣付けたひともすごいし、殺陣なのに演じ分けられる役者まじホント、ほんとうにすごい。

早乙女太一はさあ!殺陣がとても上手い早い強い動ける人だから、出力下げるのめちゃくちゃムズイことやってんな、それ……って感嘆の溜息なんですけど、古田新太はさあ!中に早乙女太一の剣技入れるってどういうこと?!って思ってたのに、「身体がなまくらだから追いつかないけどほんとはめっちゃ強いおっさん」なのマジで本当にすごい。尊敬した。映像でしか見たことがないアカドクロの捨之介とか97年の天魔王とか、ほんとにこの人なんだな……って改めて思いました。

早乙女兄弟が古田新太の殺陣に憧れるって言い続ける理由がものすごく分かる。剣舞の速さとか美しさとかじゃなくて、「カッコいい殺陣」っていう技術なんだよなあ。新感線以上にワクワクする殺陣ってそんなに出会ったことがなくて比較したことがなかっただけで、初めて比較対象を得た私があらためて新感線の殺陣の何がすごいか説明できるようになりましたね、という話でした。おわり。

もうちょっと身体の使い方の違いとか分かればいいんですけど、わかんねえから悔しい。精進します。



早乙女太一と「父性」

今回かじゅきが「早乙女太一」というステレオタイプを剥ぎ取った先に意外性の面白さとして付与したオプションのひとつが「父性」なのめちゃくちゃ面白いなと思っています。

捨之介だった古田新太が極で天魔王として子を持つようになってるってのもそうだけど、年齢を重ねないと出てこない説得力のひとつ、というか年齢を重ねたからこそできる新しい試みが「親」なんだろうなって。親心が有るにしても無いにしても、知らないと出すことも無くすこともできないと思うので。

17歳で初出演した子が「親」を演じるようになるの、そらカンパニーみんな親戚顔になるわな…


そんで物語のキーワードとしての「父」という存在、朝吉が父親を殺して振り返らずに進んできた人斬りの道の果てに立ちはだかるのが半兵衛という「父」なの、あまりにも完成されていてさすがかじゅきだなと思いました。かじゅきはこんなエモさはミリほども感じてないと思うけど…

朝吉くん、碌でもねえ親父を斬ったらしいけど、そのほかの家族はどうなってますか?ただの面倒見の良い悪餓鬼だった朝吉が、碌でもねえ父親から家族を守るためについに殺し、そのまま家と縁を切って人斬りとして血に染まっていく話は、いつ出ますか??????

朝吉の過去、何パターンでも妄想しておいしくいただけてしまうな。もうちょっと情報をお出ししてくださってもいいんですよ?



早乙女友貴の「兄性」

初日はわりとしゃんとした台詞だなと思ったんですけど、だんだん「いつもの」に変わっていってるっぽいですね。大阪で5ちゃいになってたらどうしよう……という心配が残る。ひでのり、頼むからあんまり楽しくなっちゃわないで、珍しい渋さもちょっとくらい残しといてください……


とはいえ今回「面倒見の良い兄貴分」みたいな立ち位置に置かれてたの、すごく良かったなあってしみじみ味わってます。川北長次の長吉観たときの「良かったなあ」と同じ感覚。

すっごいイマサラな話をするんですけど、早乙女友貴って確かに「弟」なんだけど、このひと「兄」でもあるんですよね???という気付きを得たんですよ。

銀次に挑むっていうより対等な人斬りとして現れて、無駄な殺しはせず、半兵衛を鍛え、すべての決着が着くまでじっと見守って、勝った半兵衛を認めるかのように笑って、全力で最後の戦いを挑んで、潔く死んでいく。

朝吉、ぜんぜん弟の顔じゃねえのよ。過去編の妄想が混じるけど、ぜったい長兄だと思うよ。


や、ほんと最後にお社に片腕引っ掛けてすごい楽しそうに誇らしそうに見守ってる朝吉、完全に師匠が「俺を超えてみせろ」って言うやつだったもんな。飛天御剣流も奥義を会得するには師匠を倒さんとダメですからね。人斬りの宿命。

あのへんずっと朝吉を観てるので主人公ふたりの決着の殺陣あんま観れてません。次は下手席で朝吉の顔は見えづらいから殺陣ちゃんと観ような……(観れるかな)



とりあえず一旦ここまで

観た直後は「タイトルコールずっっっっっるい!」に全部持っていかれる感想だけど、じっくり落ち着いて思い返せばちゃんと咀嚼できる、大丈夫だいじょうぶ。

ほんとは成志さんの愛おしい「いつもの」の話とか、サンボさんのあまりにも「いつもの」の話とか、娘たちの話とかいろいろあるけど、エントリとしてアウトプットできるほど言葉にまとまってないから一旦ここまで。

人が善くて小心者で仲間想いの元職人が、血で手を染めて人殺しとしての腕を磨いた先で、何の恨みもない赤の他人を手に掛けることへの考察はちょっとまた次回やります。

戯曲本読んだり(まだ読んでへんのかい)東京楽まわり観てまた違った角度の感想が出てくるんだろうか…

なんにせよ早いとこみんな元気を取り戻して無事に公演が再開されますように!!!