ワンピースぶりのスーパー歌舞伎!これアレか、もしかしてステアラでやる予定だったやつ???って席に着いてから思い出しました。
今年はちゃんと記録しよ、と思って忘れないように幕間に書き殴ったメモを元にしているので、いつも以上に脈絡がない。
ちなみに、わたしのヤマトタケルの知識は荻原規子の白鳥異伝のみです。小碓、大碓、武彦、橘、八岐大蛇を退治した剣…全部知ってるけどぜんぶ絶妙に違う。ちゃんと古事記読もうと思いました。
スーパー歌舞伎ってこうだった
オープニング、なぜか宇宙に浮かぶ地球が投影されて「スーパースペクタクル…?!」と混乱しました。
幕が開いたらいきなり廻り舞台で横幅いっぱいに並んだヤマトの男たちによる「壮観なビジュアル」でぶんなぐってきて、さすがスーパー歌舞伎だな!!!って感じ。
わたしはワンピース歌舞伎が初スーパー歌舞伎にして2回目の歌舞伎だったんですけど、当時の思い出がすごい蘇ってきた。そう、歌舞伎isジャパニーズ・エンタテインメントなんだよな!!!!!
(6年前の拙いレポ……もう6年経つの??!?!)
ちゃんと伝統的な歌舞伎の技法を、これでもか!!!!!!ってくらい派手な演出と絢爛豪華なビジュアルで次から次へとお出しされるのすごい好き。御覧じろ日本の伝統芸能!ドヤ!!!って感じ。しかもこれを40年くらい前からやってるの、ほんと歌舞伎って意味わからんよな…(ほめてます)
豪華な衣装!!!鳴り響くツケ!!!豪快な立ち回り!!!大量の紙吹雪!!!心配になるほど壊されるセット!!!不安になるほど飛び交う樽!!!大胆な宙乗り!!!ほぼぜんぶ本家歌舞伎にもある要素です!!!(嘘でしょ?!!?!ってなる)
ほんとここにエンタメ極まれりって感じでした。最高。
クマソ、飛び交う樽
そう、樽が飛んだ。
そもそもクマソとの戦い、スーパー物量シーンだったんですよ。ジャンヌ・ダルクかと思った。舞台上に、群衆はね、作れるんだよ!!!!
ほんとクマソ陣営、圧倒的物量だった。二階建てのセットに所狭しと並んで宴会を楽しむクマソの男たち、西の果ての手強い軍勢をビジュアルでお出しされてこっちが弱気になっちゃった。めちゃくちゃ強そう。
しかもそのあと花道と客席通路から相模やら琉球やらの陣営がわらわら出てきて、まだ増えるのォ?!ってギョッとした。
カテコで判明したけど、出演者4列に及ぶほどいました。4列って!!!!!筋書き買ったら写真のある主要登場人物だけで13人いた。(主演ダブルキャストなので14人分あった)
物量!!!!!!!
そんな物量バトルシーン、まじでダイナミックというか、あなたたちもしかして、派手にすることだけ考えましたよね???っていう…(すき)
小碓は髑髏城の百人斬りかな?ってくらい斬ってるし、アクションチームはガンガン飛び回るし、途中で樽の山を崩したと思ったら舞台上でポイポイ樽を投げ付け合うクマソと小碓……
ワンピースの滝のような本水にもあっけに取られたけど、樽を投げ合う小碓とクマソタケル弟にもあっけに取られたよ。歌舞伎なんでもアリだな。(すき)
そう、團子くんね、やっぱり本人も若いし小碓も若い役だから余韻とかは正直ちょっと若々しくて物足りないところもあるんだけど、どう考えても殺陣がうまい。圧倒的な強さ。
クマソタケル兄の腰から刀を抜いた瞬間、空気が変わるんですよ。殺陣への解像度が低くてどこが上手いのかちゃんと言えないけど、剣舞でも殺陣の手を踏んでるんでもなくて、ちゃんと目の前にいる相手を斬っている感じ。その後ろ手に相手へ向けた切先がちゃんとガチで牽制になっている感じ。人を斬れるタイプの殺陣だった……
なんだろうね、運動神経が良いのかな。体幹が強いのかな。わからん!けど学んだ。團子くんは殺陣が上手い!
あと二階建てセットがめっちゃよかったなあ!明かりが消えてだんまりが始まって、二階の窓が開いて明かりが差して、戦いが始まったら後ろの壁がバンバン壊されていく。思い切り壊すねえ!って笑っちゃったし、最後は屋根まで落として心の中で手を叩いて喜んじゃった。屋台崩し、本家の歌舞伎でも観てみたいです。
蝦夷、飛び交う人間
フラッグの演出ってスーパー歌舞伎お馴染みなのかなあ???炎が燃え広がる様をフラッグで表すの、雰囲気ピッタリですごーい!と思ってたら神の炎を起こすことになって、割と人数の多いフラッグ炎隊が2倍になって「やっぱり物量……」と思いました。
炎タイムが思ったより長くて、ちょっと単調になってきたな〜と思ったタイミングでアクションチームによる大バク宙大会。ぐるんぐるん回るフラッグと人間。最終的にトランポリンまで出してきてポンポン飛び出してくる人間。すごい。
そういえば蝦夷編で初登場した武彦、いやこれみんな好きになるやつだな……と思ったら本当に最後までめちゃくちゃ良いやつで、3幕で小碓に肩を貸すシーンとかほんとグッときた。
素直で感情が表に出やすい小碓と、ちょっと斜に構えて冷静で大人な武彦、組み合わせとしてパーフェクトだよね。白鳥異伝も読み直そう。
武彦の福之助くんととヘタルベの歌之助くんがリアル兄弟だってことは、帰ってきて筋書き読んで初めて知りました。
兄弟ふたりを付き従える團子くんが1番年下。そう考えるとホント、めちゃくちゃ若い座組みだなあ…!
正直、小碓がまだ子供っぽい役柄の1〜2幕は他のお役も含めて全体的にちょっと余裕が少ないというか、ピリッと締まるシーンが少ない印象を受けたんですよね。四代目が抜けたってこういうことだなって実感した……
この話をすると別の論点が入ってきそうだからアレだけど、シンプルに公演の構造として、歌舞伎座で真ん中張れるベテランの役者が手綱握ってるかどうかで、やっぱりメリハリとか重みとかが変わってくるのは当たり前だよなって話です。中車さんの帝、リアル親子なのはすごいエモいけど、ぶっちゃけるともうちょっと重鎮感が欲しかった。
ちなみに、若い座組みなのは分かっていて團子くん回をわざわざ選んだので観劇体験としては満足しています!!!
それに、心配しなくても3幕では團子くんの「凄味」にぶん殴られることになるので……
病床のヤマトタケル、狂気
大好物の狂気をお出しされて笑うしかなかった3幕。スーパー歌舞伎、全体的に予想を超えすぎて「わはは!まじかやべえ!」って笑いがちです。ほめてる。
愛する大和の国の手前で病に倒れた小碓、自分の限界を信じたくなくて、故郷を夢見て、焦点の定まらない生気を失った目でフラフラになりながら進むちょっとヤベエ姿がぐさぐさ刺さった。
絶望と期待と諦めがないまぜになった表情。「凄味」ってまさにアレのことだよ。素直で無邪気だった小碓が、女がみんな愛らしく思うと言われた尊が、あんなに自信満々だったヤマトタケルが、ボロボロになって、ただひたすら叶わぬ未来に手を伸ばしてる。
歌舞伎ってわりと「死際」をめちゃくちゃ劇的に描くから、ヤマトタケルの死のタイミングで宙乗りかなーと思ってたんですけどね。
まさかあんなにスッと密やかに命を終えるとは思いませんでした。美しかった。
そうよね、せっかくの宙乗りはキラキラと希望の光を目に湛えた小碓がいいよね!!!!
宙乗りはぜったい鳥になって飛んでいくんでしょう、と思ってはいたけど、あんなに鳥だとは思いませんでした。衣装もそれはそうなんだけど、飛ぶ前の舞台上での舞踊がさあ、顔の動きとか完全に鳥でびっくりだよ。
宙乗りは宙乗りで長袴の裾も吊られてて、手は鳥だし足も吊られて何の自由も効かないバランスも取れない体勢こわ……と思ってしまったけど、まあシルエットの美しいこと!!!
宙乗りって江戸時代からあるらしいですね……歌舞伎すご……
ちなみに1幕でも、小碓より圧倒的に大碓の方が好みでした。キラキラ純情主人公属性より、ちょっと影を背負ったニヒルな役の方がハマりそうな気がする。キャラデザ的には武彦みたいなイメージ。
なんか團子くんて頭が良さそうなんですよね、とても。だから草薙剣を置いていくとか、そういう判断をしなさそう。頭脳派の方が似合うよ、きっと。いや、初見なのでなんも知らんけど!
それにしても小碓は、ヤマトに兄姫という妃がありながら、余裕で弟姫を囲い込んで、躊躇いなくみやず姫も貰い受けるの、さすがあの大碓の弟って感じ。
そもそも冒頭で兄姫を妻としながら弟姫に手を出そうとするのを、弟姫が咎めてた気がするんだけどな。大碓も「悪いこと」だと分かってやってる感じがあったと思ったんですけどね……
小碓、無邪気に喜んでるからな!!!もっとタチが悪いぞ!!!と思ってしまうけど、どういう理屈なんだろうな?
兄姫、どタイプ
突然ぶっちぎりで頭の悪い感想ですいません。米吉くんの兄姫、どタイプでした。
新春浅草歌舞伎でも第一部2幕の与話情浮名横櫛・お富の役が刺さりすぎてヤバかったんですけど、ちょっと歳を重ねた女を演じる米吉くんがめちゃくちゃ好みだということがわかった。妹より姉、姫より未亡人。
2幕ラストの船の上の場面で、絶望を呑み込んで昏い目をした弟姫もめっちゃタイプでした。あの翳りのある表情、さすがあの姉の妹だなって思った。いやまあ同一人物ですけども……
とにかく酸いも甘いも分かっている側の米吉くんがすき。
米吉くんをちゃんと認識したのはFF歌舞伎なので、ユウナのかわい〜いイメージが強かったし、顔も可愛い系だし、未亡人は新悟さんの印象が強かったけど、ちょっと気怠げで大人の余裕が出た米吉くんの女方、とても良いんだ……もちろん姫はあざとかわいいんだ……
関係ないけど、苔玉くんは「かわいい」で、米吉くんは「あざとい」って感じです。どっちも好き。
そう、今回は米吉くんも團子くんも1幕で一人二役の早替わりがあって、立ち回りが大混乱で面白かったです。
一人二役で同じ人が演じてるその二人が立ち回りを繰り広げて代わる代わる顔を見せるタイプの歌舞伎の早替わり、ほんと面白いよね。
ワンピースではルフィとハンコックが二役で、2人が取っ組み合いしながら入れ替わってたけど、今回は大碓/小碓の兄弟と、兄姫/弟姫の姉妹が両方入れ替わり立ち替わりするから……たぶんあれ30分間くらい 、登場人物4人もいるのにずっと2人芝居だったよね???
そもそもあんな豪華な衣装を早替えで仕上げるのもすごいし、物理的に衣装着変えてバタバタしてるだろうに、ちゃ〜〜んと全然違う人物として登場できるのがほんと……早替わりってすごいよな……
余談ですが「エヒメ」と「オトヒメ」が「兄姫」と「弟姫」だってのは、帰って筋書き開いてもしばらくわからんかった、なるほどね……ニホンゴムズカシイ……
衣装、景気がいい
とにかく派手で派手で、ビジュアルisパワーなお衣装でした!!!景気がいい!!!
クマソのタケル兄弟、背中にそれぞれタコとカニを背負ってて、胸には龍と魚を抱えててとっても可愛かった。クマソって海沿いの国だっけ?と思って調べたら熊本あたりらしい。フルーツも出てたし南国だね。
帝と大后は胸元にジャラジャラと勾玉を身につけていて、まさに白鳥異伝……!!!
皇族は冠の意匠がまた素晴らしくて、翔三くん…綺麗だよ…と思いながらオペラしました。市川翔三くん、ワンピース歌舞伎のカマバッカ王国で見つけた美人です。クマソの女も皇子も美人さんでした。
小碓の衣装は物語が進むごとに少しずつ豪華になっていって、何者でもない自信のない小碓から、強く人心を掴むヤマトタケルになっていく様が見えて素敵だった〜!
特に2幕の、たぶんカテコでも着てくる金の衣装!!3幕はちょっと天狗になってるからか赤も入ってゴテゴテしてくるから、やっぱあの2幕がいちばん神の力がそばにあって最盛期って感じなんだろうな。
あれはねえ、ちょっと短めの袂に肩のあたりから放射線状に金の模様が入ってるんですけど、海に消える弟姫に追い縋って手を伸ばす場面でその模様がいちばん綺麗に見えて、すごい残酷な衣装!!!!!と思いました。ほめてます。
いちばん神に愛されている衣装が、弟姫を失う時に1番輝くようにできている……
同じ船の場面で弟姫の衣装も、大きな袖の柄がとっても綺麗で、船室から顔を出したときとか、小碓を振り切って我が身を抱くときにいちばん綺麗に柄が見えて、残酷……と思いました。とてもいいよね。
あと素敵だなって印象に残ってるのは、山神さまと姥神さまのお衣装です。同色の柄物の布を何重にも襲ねて縫い合わせたみたい着物、めっっっっっちゃ素敵でオシャレだった!!!!!!!!あの加工のスカートかジャケットが欲しい。かわいい。すてき。
あと個人的に気になっていたのが武彦の衣装。小碓と合わせて結構いろんなお衣装に着替えるけど、ずっと蝶が飛んでる。ぜんぶ蝶の柄。なんでなんだろうなあ。気になるなあ。
書き殴りメモ、終了
物語については、兄殺しの小碓が向き合う敵がいつも「兄弟」なこととか、父帝との関係とか、史実と白鳥異伝と合わせていろいろ捏ねくり回せそうなネタはあるものの、今回は力尽きたので割愛です。
予習せずに行ったから、團子くんと中車さんと猿弥さんと翔三くん以外の出演陣の顔とお名前が一致せずだったけど楽しかったです。ごめんね。筋書き読んで勉強します。
たしか宝塚のパンフレットも同じスタイル(もっと細かい場ごと)だった気がするけど、幕ごとの配役書いてあるのホント天才。
おかげで琉球のおどりがものすごく好きだった踊り子さんのお名前がわかりました。市川笑野さんでした。
あと笑三郎さんの倭姫がものすごく魅力にあふれていたので次もチェックしようと思いました。
後ろの子役がめちゃくちゃかわいくてオペラしたんだけど、名前判別不可でした。特に帝の裾持ってた子がめっちゃ好みだったな。
歌舞伎の世界って総じて角子似合いすぎで、大和の血だな……と思いました。白塗りの角子、そんなに似合うかよ……
いつも以上にぶつぎりだけどおわりです。スーパー歌舞伎、やっぱり半日かけて味わうドデカ大衆エンタテイメントだった。
何も要らんからとりあえずビジュアルとド派手立ち回りにぶん殴られに来い!!!!!って感じ。なのに話の筋がちゃんとしてて(語彙力がない)、ちゃあんとエンタメと教養を両立してるのが最高だなと改めて思いました。あー楽しかった!!!