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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

これだから「生の舞台」はやめられない【ジャージー・ボーイズ チームBLACK】

昔からタイトルだけは何度も見かけていたミュージカル、ジャージー・ボーイズ。なんとなく見ずに来たけど、なんとなくいろんなタイミングが合ってついに観劇です!

ミュージカルってたぶん映像で観ても楽しいけど、あの声量と歌唱力を生で正面から浴びるとほんとに身体が震えるから、現地で聴いてこそだよなあ、といつも感じます。


2022年10月はなぜか観劇まつりになっていて、ぼやぼやしているとぜんぶ端から抜けていっちゃうので自分のための観劇記録。



舞台ギミックがズルすぎる

いきなりキャストが客席にお尻向けて歌い始めて何事かと思ったら、舞台両袖の大小様々なモニターにモノクロで映し出されるリアルタイムのパフォーマンス。

TVショウの世界をこんなに綺麗に表したギミックある?!と思ったら突然回り出す盆舞台。

鉄骨の骨組みだけで作られた舞台セット越しに、さっきまでお尻向けてたパフォーマーたちの表情が見えてくる。

こんなズルい舞台構造ある??!!?!?!


フランキーの初ステージで、突然4人で背中向けて歌い出したと同時に盆舞台が回り出すのが本当に最高の演出!

主役陣の顔が見えないからこそ、ハイトーンボイスに驚く観客の顔がとっても印象的で、そのまま彼らの会話が始まって、その間も回り続ける盆舞台の奥で中川さんが歌ってる…

ステージも観客も見せながら主役陣の生歌をBGMにして回しちゃう贅沢な盆舞台、ズルすぎました。



語り継ぐリレーがズルすぎる

1/4ずつ4人が語り継いでいく構成、「人によって見えている景色が違う」があまりにも明確に示されていて超良かった!!!

冒頭の語りがトミーじゃなかったら後半のアレコレがぜんぜん伝わらないだろうし、あそこでボブが熱を込めるからフランキーの輝きが際立つし、そこからの歪な姿を描けるのはニックだけだし、最後にようやく登場するフランキーはずいぶん大人になっていて物語の深みを語り出す。


大山さんが観たくてチームBLACKを選んだんですけど、予想以上に出番が多くてめちゃくちゃ堪能しました。歌がうまい。

いや、ミュージカルの感想に「歌がうまい」って言うの死ぬほど野暮なのわかってるんですけど、みなさん本当に歌がうまいんだよ…

ミュージカルあんまり踏んで来なかった人間なので毎回驚いてしまう。


歌ったと思ったら喋り出して会話して歌って語り出すあの「語り手」としてのパート、めちゃくちゃ大変そうだなって思いました。あと衣装替えのタイミングも。

っていうか衣装めっちゃ良くないですか???次の項目にしよ。



衣装がどれもズルすぎる

どのジャケットもどのシャツもかわいいんだよお…

4人お揃いのジャケットもめっちゃいいし、ちょっと私服っぽい衣装もめっちゃいいし、私服もめっちゃ良い。良いっていうか「ぽい」から服装観てるだけでキャラクタの解像度がガシガシ上がる。

それぞれ何着あるのかなあ。全部イラストにしてステッカーとかにして売ってほしい。衣装一覧。


わたしがいちばんすきだったのは、秋冬っぽい私服バージョンのステージ衣装です。フランキー以外の3人が楽器演奏してたときのやつ。

あのときのボブ・ゴーディオがたまらなく好き。



東ゴーディオがズルすぎる

わたし、わたし、東さんのこと、こんなに好きだった?????

グランギニョルマリーゴールドは映像で観たけど、あの繭期の地獄で会ったときはこんなに感情揺さぶられなかったんですよ。ボブというキャラクタが特別好きというわけでもない。「ボブを演じる東さん」がメチャクチャ刺さったんだよな。


「あっ好きだな」と気がついたのは、女の子あてがわれてお酒飲みながら歌うところです。なんでかわかんないけど。

圧倒的な歌唱の中で、人間味のある「揺れる」歌声を聴くのはそもそも好きだけど、それとは別で何かが刺さった。何だったのかは今でもわからない。


あと、どのボブもそうなのかもしれないけど、ボブだけはパフォーマンス中ずっとフランキーを見てるんですよね。演奏中も、ダンスの合間も、歌いながらも、ずっと。

フランキーの才能に惚れ込んで、フランキーに曲を書くために加入し、表に立つのが好きじゃなかった(意訳)とも白状するボブ。


前述の秋冬っぽい私服で演奏するとき、オルガンらしき鍵盤を弾きながらずっとフランキーのほうを見ていて、途中目があってアイコンタクトを交わすところがもう、なんか、めちゃくちゃ好き。(言語化無理です)

その時の私服が白いハイネックニットにチェックのダブルボタンジャケットなんだけど、本当に恐ろしく似合っている。スタイルがいいってそもそもズルいよね…



音楽ってズルすぎる

厳密にはミュージカルに限らずだけど、やっぱり音楽ってズルいよなあと思います。「衛生」を観たときも思った。

どんな感情も音楽で(全てとは言わずとも)塗り替えてしまえるんだもの。


それだけの魅力とパワーがあるから、音楽を志すひとの悲しみや苦しみは音楽の向こう側まで手を伸ばさないとなかなか見えてこない。

最後に語り出すフランキーの人生は他の3人に比べてどこか現実離れしていて、音楽や歌の代わりに失ったものはあまりにも大きいはずなのに、なんだか靄の向こう側にあるみたい。

そういう意味では、殿堂入りした喜びを語るのがフランキーじゃなくてトミーだったのがとても良かったんだよなあ。いちばん「ジャージーっ子」でいちばん「クズ」なトミーが震えるほど喜んでいる殿堂入り、ほんとにこっちまで嬉しくなる。


わたしにとって、最後までフランキーはよくわからない雲の上の天才でした。ただ「フランケンシュタイン」でもおんなじように感じだから、もしかしたらシンプルにわたしが中川さんをそう認識してるだけなのかもしれないけど…(褒めてる)

次に観る機会があれば別キャストで観てみようと心に決めました。


そんなこんなで名曲をたらふく浴びたミュージカル「ジャージー・ボーイズ」でした。

わたし舞踊と歌唱に関しては「良かった!!!」以外に言語化ができないポンコツなんですが、最近ようやくミュージカルの感想もちょっとずつ出力できるようになってきた気がします。ちょっとずつね。

このあと「キンキーブーツ」と「エリザベート」が待ってるので、ミュージカルの解像度もっと上げたい。