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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

自粛期間と浦カチとわたし【浦島さんとカチカチ山】

世の中は両国花錦闘士に踊り狂っている今日このごろですが、先日、獣道一直線!!!を観た帰りに、なんか書かなくちゃいけない気がして、なぜか2ヶ月前の浦カチを振り返ることになってしまいました。

獣道の話はあらためて書く。たぶん。短くても書こう。いまはとりあえず浦カチをまとめる。

ちなみに令和版にせつねの書きかけエントリも3本眠ってる。

永遠にレポが現場に追いつかない。





現場が無かった半年のこと

ちょっとどうしても最初にこの話をしないと、エントリ再開できないなって思ってて、この話をするなら浦カチエントリだったんですよね。

完全に個人的な話なので、飛ばしてもらって大丈夫です。


ステアラ以前は年にせいぜい3〜4作品の観劇のペースだったし、半年空くくらいどうってことなかったんですよ。そのはずだった。

今回はほんとに現場が無いのがしんどくてしんどくて、何が堪えたかって言われたら、よくわかんない。

なんだろう。存在するはずだった芝居が消えてったことなのかなあ。

めちゃくちゃ楽しみにしてた中島かずきの新作・神州無頼街が、かなり早い段階で無くなったのがダメ押しだった。


夏に東京で少しずつ芝居が再開しても、関西にはほとんど戻ってこなかった。歌舞伎座は開いても、松竹座も南座も開かなかった。

そりゃそうだよね。だって役者は軒並み東京にいるんだもの。地方の弱みを感じた。


代わりに配信作品が増えたものの、「映像を観る」ってのがどうしても苦手で、配信も録画も円盤も、結局あんまり観られなかった。

昔から、ドラマもアニメも、続きものの映像作品はめったに最後まで追えない。

映画館でなら何時間でも観られるけど、家では集中して観ていられない。本なら何作品でも続けて読めるのに、アニメ化すると観られない。

ほんと、家で画面に集中するの苦手なんです…なんでだろうね…


だから芝居がすき。

会話も、仕事も、通知も、生活から断絶された世界で、有無を言わさず五感ぜんぶで目の前のエンタテインメントを受信させられる環境だから。

あんなに五感フル活用することなんて日常で滅多にないから、現場で芝居を観てると心から「生きてる」って感じがする。


めちゃくちゃしんどかったこの半年、自分にとっての観劇体験が一体なんなのか、考え直す機会になりました。決して「良い機会」ではなかったけれど。


だから浦カチが決まったとき、この作品は絶対に現地で観る作品にしようと思った。配信で観ずに、ちゃんと現地で五感使って浴びようって。

まあ、仕事のイベント時期と完全に被ったので、日程としては一択で危なかったけどね!チケット取れてほっとしたよ!

結局夜に別現場も突っ込んで、go to使って1泊2日、3本ハシゴした弾丸TOKYOになりました。
(東京に芝居を観に行くと大抵弾丸になる)


長くなったけど前置きおわりです。

お付き合いありがとうございました。



浦島さん

さあ!浦島さんだよ!!!

こんにちはわたしの苦手な倉持脚本!!!



五感で観る芝居

客席に入ったら、独特の音の響きと、音楽と、照明と、そういうのを肌で感じて、席に座っただけなのに泣けてきた。

始まったらシャボン玉が飛んできて、スモークが流れ込んできて、やっぱり五感で楽しむお芝居めちゃくちゃ楽しい〜〜〜!!!


そもそも良席だったし、あんまりオペラで抜くようなシーンも無かったけど、乙姫の衣装とネイルはガン見した。ネイルがさあ、ラメラメしててキラキラしてて、めちゃくちゃ乙姫で可愛かったんだよお。


あと福士蒼汰のメイクも抜きました。いのうえさん、福士くんに青シャドウさせたい芸人か?似合うよ!!!



脚本とは仲良くなれなかった

良いところは後で書く。


わたしと倉持作品、相性がすこぶる悪い。

乱鶯がぜんぜん楽しめなくて、けむりの軍団は(めちゃくちゃ楽しんだけど)脚本とは仲良くなれなくて。

でも今回は会話劇だろうから期待してたんですよ。きっと、大味エンタテインメントよりもソッチが得意分野なんだろうって思って。

結論、やっぱり仲良くなれなかった。


原作読んでから観たんですけど、なんていうか、原作変えるなら変えるで、変えた意味が欲しかったな…

けむりのエントリでも「物語の筋が先にあって、筋に都合がいいようにキャラクタとか設定とかを動かしてる」って書いたんですけど、うーん、やっぱりそうかあ、という気持ち。


短い原作を最低1時間の芝居に膨らませるのに苦労したってサイトに書いてたけど、各シーンの会話量が増やされてて、でも伸びた箇所に付加価値はあんまり感じられなくて、観劇しながら「脚本家、苦労したんだろうな」って思ってしまったのはちょっとがっかりした。

決めたゴールに向かって組み上げていく作風なのかしら。うーん。

でもまあやっぱりこれも原作ありきの作品なので、ちゃんと彼のホームグラウンドで観てから判断しなきゃだめだなとは思ってます。思ってますけど、今後も警戒はします。



三人で演る二人芝居

楽しかった話をしようね!!!!


三人芝居といえば、ずいぶん前に三谷幸喜の「ろくでなし啄木」を観ました。三人の掛け合いと二人になった時の駆け引きがめちゃくちゃ楽しかった。

浦島さんも三人芝居だけど全然違って、こっちは三人で二人芝居をしているようなイメージ。

ギリギリの情勢下で再開するために、最大限距離と安心を確保したんだろうなあ。目が足りる舞台ってのもいいなと思いました。


それぞれのペアのシーンでそれぞれの価値観の共通点と相違点が少しずつ見えてきて、だんだん関係性が深まっていく仕掛けが面白かった〜!

亀と浦島さんの間に、だんだん少しずつ友情が育まれていく様子が微笑ましくってにこにこしちゃったな。


あと何が良かったって、舞台機構。回る舞台の上に幾何学で無機質な山。最低限の背景と、最低限の小道具。余計な雑音が入らない空間は、何にでもなれた。

こんなシンプルないのうえ演出、観たことない。


山しかない(小道具いろいろ仕込んであったけど)舞台、ほんとになんにもなかったし、何にでもなった。

NODA・MAPのQを観た時も思ったけど、こういう「なんにもない」舞台を観ると、とっても「嗚呼、演劇だなァ」って思う。

あっ、新感線のいつものやつも大好きだよ。そっちは「いやっほー!演劇!!!」って感じ。


シンプルな舞台で、たった3人で、衣装替えもほとんど無く、ただ福士蒼汰を堪能する芝居。

堪能しましたとも。



福士蒼汰をお腹いっぱい味わう

舞台2回目ってほんとに???


宮野みたいに「ずっと演じてる」役者さん(いやまあそりゃみんな演じてるんですけど、そうじゃなくて)も目立つけど、福士蒼汰って、なんていうか、福士蒼汰のまま板の上に立ってる感じがする。

演じてるっていうより、福士蒼汰をちょっとチューニングしたら浦島になりましたって感じ。うまく言えないけど。

ここ、浦島さんレポのハイライトです!!!うまく言えてないけど!!!!!


いや、ちょっと鼻につく金持ちのボンめちゃくちゃハマってたし、あの大量の台詞があんなに流れるように出てくるの意味わかんないし、普通にすごいんですけど、そうじゃなくて。

なんて言ったらいいんだ。

「ちょっと鼻につく金持ちのボン・浦島を福士蒼汰が演じてる」んじゃなくて、「ちょっと鼻につく金持ちのボンver.の福士蒼汰が浦島」って感じ。

伝わる気がしない。

福士蒼汰が演じる浦島」じゃなくて、「福士蒼汰が浦島」なところがめちゃくちゃ良かったんだよ。


実は一度だけハプニングで、浦島じゃない福士蒼汰を感じる瞬間があって、めちゃくちゃ動揺した。

なんてことはない。着付け用のクリップが袖口に付いたままだったんですよ。いつから付いてたのか分かんないけどオペラしてて見つけたの。

浦島が袖にクリップ付けたまま話が進んでいって、大好きな波に揉まれるダンス(※後述)の手前のシーンで、そっと福士くんがクリップ取って袖に仕舞ったの。


めちゃくちゃ些細な、ハプニングとも言えない一瞬の出来事だったんですけど、あっ、そうか、ちゃんとこの人演じてるんだ、って動揺した。

あんなに動揺したの、それまであまりにも「福士蒼汰が浦島」だったからだと思うんですよね。ナチュラル、とはちょっと違うんだけど。演じてるのは演じてるんだけどさ。

やっぱり伝わる気がしないよ。


とにかくほんとに、なんか、こんなに真っ白でピュアな役者さん、みんなで大切にしていきたいし、たぶん今後も新感線で真ん中張り続けるんだろうなって思った。



好きだったとこ

波に揉まれるダンス〜〜〜!!!!!

圧倒的に好きだった!なんかもう、これめっちゃ好き!!!って思ったのと、同時に起こったハプニングのせいで細かく覚えてないけど、お山の上で踊る福士蒼汰がめちゃくちゃ好きだなって思いました。(語彙力)


あと浦島がめちゃくちゃナチュラルに座るとこが好き。(なにそれ?)(だって、すごい好きだったんだもん。)


粟根さんは粟根さんすぎて特にコメントはないんですけど、粟根さんに「亀」と言われると頼朝が頭を過ぎるよね。かめ。


衣装のギミックも好きだったなあ。肩のスナップボタンを外して裏返しに下ろしたらぼろぼろの衣装に変わるあの仕掛け。

最小限のセット、最小限の衣装、大量のスモーク。

スモーク多すぎて笑っちゃった。玉手箱だもんね。仕方ないよね。


映像ではどうなってたのかも気になってはいる。いつか円盤か何かでまた会えるかなあ。



カチカチ山

続いて行きます!カチカチ山も現地で見といてほんと良かった!

いま巷を賑わせている両国花錦闘士が、このカチカチ山を書いた青木さんなので、期待が爆上がりしている。



どうしても比べてしまう脚本

カチカチ山の脚本、めちゃくちゃ面白かったねえ?!

いやもう好みの問題でほんとごめん。同じように短い原作を1時間の芝居に組み上げるのに、こんなに差が出るかね?!と思ってしまったんだごめんな。その差を純粋に楽しめなくてごめん。


人間と動物と、虚構と現実とが混ざり合ってわからなくなるあの感じ。

人間が話し始めて、動物を演じはじめるのに、あんなに違和感なくスライドしたの、ちょっとかなり感動しちゃった。


なんだろうな?!めちゃくちゃシンプルな筋なのに、あんなに深みを感じたの、何なんだろうな???

宮野真守という武器を最大限活用した狸と、井上小百合という飛び道具を最大限活用した兎、それぞれのキャラデザがめちゃくちゃ天才だった。


カチカチ山の原作読んで、ラストシーンの構成が難しそうだなと思ってて。あの台詞に収束させるのって、現代語劇である以上めちゃくちゃ難しくない?

舞台って余白で落とすことが多くて、台詞で落とすのって難しそうじゃないですか。あまりにキマる台詞じゃなきゃ落なさそうで。

(そういう意味では、けむりの軍団(倉持脚本)のラストの台詞は天才だった。)


カチカチ山は「惚れたが悪いか」で終わるわけだけど。作者ですら「曰く」で書いてるじゃない?

演劇にしたらどうなるのか、ちゃんとまとまるのか、どうなるんだろと思ってたら、台詞改変ナシでスッと話が落ちたからびっくりした。

明確な感想は覚えてないけど、脚本とキャラデザと役者の力が乗算されるとこんなふうになるんだなとぼんやり思ったことは覚えてる。



宮野真守がウザすぎる

人としても狸としても本当に最低な宮野真守、サイコーすぎんか???

正真正銘、2人しかいないからずうっと喋ってるわけなんだけど、1時間ずうっと明瞭に喋ってるのほんとにわけわからん。


原作読んで、37歳の汚い臭いウザい狸を、どうやって宮野真守ver.に変換するのかなと思ってたら、宮野真守37歳、めちゃくちゃ汚くて臭くてウザかったのでほんとこの人すごいと思った。


正直、話が面白かったのでそんなに細かい考察とか感想とか出てこない。1回しか観てないしね。シンプルに面白かった。



井上小百合が良すぎた

可愛い顔した腹黒いウサギ、めちゃくちゃサイコーでびっくりした。

井上さん初見(初認識)だったんですけど、かわいいの化身だったね!!!衣装さんにお金払いたかった。


場が変わって井上さんが衣装変えて出てくるたびにオペラで抜かざるを得なかったので、ちょっと話が入ってこなかったくらいには釘付けだった。


井上うさぎ、可愛いだけじゃないのがサイコーなところで、普通に演技が上手い。

小悪魔というかドSで口の悪い悪魔な兎、一歩間違えるとわざとらしい演技になっちゃうキャラクタを、あまりに自然に演じてて、まさか普段からそのダミ声出してませんよね???


知らなかったけど「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」に出てたみたいで、あんな評判の良かった稲作(収穫?)観に行かなかったのが悔やまれる…


二人芝居、マジで想像を絶する台詞量だったんですけど、全くそれを感じさせない役者陣ほんとすごすぎた。



現場が戻り始めた冬

だんだん芝居が再開しはじめて、関西公演も決まり始めて、ようやく手元のチケットを抱きしめられるようになってきましたね。


こんなご時世、外出は控えて、配信してくれてありがとうって言うべきなんだけど、やっぱりどうしても、劇場に行かせてくれてありがとう。


円盤でもゲキシネでも配信でもない、生の観劇の価値と魅力を噛み締めた浦カチ。

すいません、って言いながら他人の荷物を跨いで自分の座席にたどり着くあの時間すら愛おしくなった浦カチ。


ヴィレッジプロデュースと新感線の違いがイマイチよく分かってない(どちらにせよ面白いので)んだけど、次の両国花錦闘士は身近なフォロワーが踊り狂っているのでライブビューイングが楽しみ。

大阪初日と千穐楽のチケットは確保してあるけど、スケジュール的にあと3回まで増やせるのでたぶん大丈夫です。(何が?)


でもその前に劇団朱雀が待っています。

半年の自粛の反動で欲望のままにチケット押さえてて、ひと月の出費が過去最高額になりそうです。

観る前から沼ってて大丈夫か?