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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

混乱を極めたミュージカル衛生エントリ

スケジュール的に微妙だったので見送っていたんですが、ご縁があって駆け込み観劇してきましたわよ!!!!!

書きたいことがいっぱいあって、ちゃんと章立てして書き始めたのに、ものの3分で見出しから外れてしまったのでもう諦めた。

筆が乱れに乱れている衛生エントリです!!!



衛生エントリは自分との闘い

脳内麻薬がドバドバ出て「なんか分からんけど楽しかった!!!」で思考停止してしまいそうになるので、衛生の感想言語化は自分との闘いです。

最初に失礼な感想を言わせていただくと、コレ観なきゃいけないのに観そびれてる人いっぱいいるのでは???

前評判というか、触れ込みというか、事前のイメージと観劇後の印象が(いい意味で)サッパリ一致しないお芝居なので、敬遠してる人も、思ってたのと違った人もいそう。わたしはもっと汚ねぇ芝居だと思ってたのに、観劇後は清涼感すら感じて混乱した。


とにかく歌が良くて(歌詞除く)、女性陣がサイコーで、右近くんと石田さんがサイコーで、とにかく歌が良かった。(歌詞除く)

歌詞は除かねばならんな???


いやこれ歌詞を真剣に聞いちゃうとさ、酷すぎる所業だし酷すぎる人生じゃない?シリアスに持っていこうと思えばどこまでもシリアスに重苦しくなる酷い話なのに、観了感(読了感的なことが言いたい)がこんなにスッキリ爽やか☆なの、よく考えたら怖すぎるんですよ。これが音楽の力なのか?


中島かずきの地獄に慣れすぎているわたしは、1幕ラストの地獄で「アッそういう感じ?!」と思って、ドキドキしながら2幕始まったら全然そういう感じじゃなくて、「アッッッそういう感じね?!」と思った。

何も伝わらねぇ感想しか書けなくて落ち込んでいる。


なんていうか、「シリアスではない」「悲劇ではない」「地獄ではない」って仕掛けが一貫して織り込まれていたような気がします。こんなに救いも解決もない話なのに、ウッカリすると「あー!良い話だった!」と言ってしまいそうになるような、そんな感じ。こちらのテンションがシリアス側に、重く受け止める側に振れてしまわないように、巧妙に操られていたような感じ。

そういう意味ではフェイクスピアとは真逆のアプローチだった。あれは、観客にいかにして「言葉」と真剣に向き合わせるかという話だったので。


とにかく衛生を包んでいる、ふわふわと楽しい幸せな雰囲気をむりやり剥ぎ取って、中身と向き合わないとちゃんとした感想が出てこない。ふわふわと楽しい歌とか女性陣とか右近くんとか石田さんとかの話をしているだけではダメなんですよ…でも喋りたいから…このエントリは闘いの記録なのです。



女性陣が良すぎ

ほんとにサイコーだった女性陣!!!

男性主体の脚本でこんなに女性陣が女性としてではなくふつうに人として魅力的なの、珍しいと思ったんだけど、私の世界が狭いだけかな…



咲妃みゆ

信じられないくらいかわいい。可愛いっていうか、なんか、穢れてない。あの「穢れのなさ」が無かったら、麻子の人生は本当に見ていられなかったと思うんだ。他の人たちも大概だけど、麻子はあまりに人生ハードモードすぎて、それでもあんまり浮きすぎずに「キャラクタのひとり」として馴染んでたの、咲妃みゆさんの手腕なんだと思いました。

小子がまた全く違ったキャラクタに仕上がってるのが意味わかんない。遠目で見てたら完全に別人だったよ…オペラ持ってなかったのが悔やまれる。



ともさかりえ

わたしこの人がこんなに刺さるなんて思わなかった!!!瀬田夫人の歌がどれもこれもめちゃくちゃ良くてシビれるよね。マイクのおしりが発光したときはメチャクチャ笑ったけど、マイクのライン上にいたので眩しすぎて半分くらい目つぶってた。惜しい。

なによりも瀬田夫人にいちばん人生の「ゆがみ」を感じていて、このひとの論理のズレ方がめちゃくちゃ刺さったんですよ。そこまで酷い人生でもないし、それなりに良い暮らしをしてきた、知性もある、それなりの常識人のはずなのに、いちばんゾッとする。歪んでしまった理由も我々には分からない。最初からちょっと歪んでるんだもん…

頭が悪い人に理解してもらうために宗教にするって、それもう理解させてないからね…この話はあとでします。



佐藤真弓

ひとりだけ愛に生きたひとだよね。だけどちゃんと自立していて、自分の力で選んで、立ち向かって、物語を進めていく感じがとても良かった。

それなのにひとりだけ何も手に入れられずにひっそりと全てを失うの、辛くない?!愛も努力も地位も相手もなくなってしまう。

市境を跨いでからはどうしても「瀬田夫人と小子の復讐」になって影が薄まっていたけど、彼女はどんな気持ちで見ていたんだろうな。もう一回観たい。



右近くんが良すぎ

とにかく右近くんがハチャメチャに良かったんですよ!!!!!

これまで本職の歌舞伎でもそんなに観たことがなかった右近くん。(スーパー歌舞伎Ⅱは観ました)

こんなに現代劇にハマる役者さんだとは思ってなかったので、本当にぶったまげた。


芝居はもちろん、歌もダンスも最高に良くって、「知ってましたか?尾上右近ってこんなことも出来るらしいですよ!!!わたしは知らなかった!!!」って叫んで宣伝して回りたくなる。みんな知ってたの?なんで教えてくれなかったの???


歌舞伎役者が外部の舞台に出ると漏れなく見得を切らされると思うんですけど、今回はあのほら、なんて言うんですかあの歩き方?!重心を後ろに置いて、足を放り出して歩くやつ!(説明がへたくそ)
歌舞伎の、というか日舞のというか、重心を落とした身体の動きにめっぽう弱いのでそんなところで?!ってタイミングで無事に被弾しました。ありがとうございました。


諸星親子と言う役については違和感というか謎というか、もにょもにょするところがあるんですけど、それはあとで書きます。



石田さんが良すぎ

思わぬ伏兵だったんですが?!?!

あまりにも良くて、「知ってましたか?石田明ってこんなことも出来るらしいですよ!!!わたしは知らなかった!!!」って叫んで宣伝して回りたくなる。衛生、わたしを宣伝カーにする気か?!


あのねえ、めちゃくちゃ小者なんですよ。ちっちぇえの。大それたことなんて全然出来そうにない(し、実際にできない)ちっちゃい男なんです…それがあんなにハマるかよ…

大袈裟なわけでもなく、かといって演じてないわけでもなく、ちゃんと禎吉っていうキャラクタを生きてるのにあんなにナチュラルなの、衝撃だった。

もう何がどう衝撃だったのかあんまり覚えてなくて、石田明が下手側の階段を歌いながら降りてくるときに「あっ良い…」って思ったことしかわからん。


ちなみにわたしが禎吉さんのふるまいでいちばんすきなのは、2幕で「麻子さんっ…!」ってマジで呼んじゃうところです。それは、ダメだろ!!!!!この小者らしいクズっぷりが大好きでした。 



話のバランスが良すぎ

アレ?これ章立てしたけど半分くらい冒頭で
書いたな…?シリアス行くかと思ったら2幕で「違った!!!」ってなったやつです!シナリオはめちゃくちゃ汚くて重い話なのに、汚さも重さも感じさせないように巧妙に手招きされてて、シリアスさは一切感じなくて、かわいくかわいく作られていた。

麻子の生い立ちも瀬田夫人のゆがみも、かわいいすてきな音楽に乗せられてスルッと入ってきちゃう。ねえそれ、言ってること結構狂ってるけど大丈夫???


諸星親子がわかりやすく"悪い"から、彼らに復讐する側の人間は"悪くない"って対比させがちだけど、この芝居そもそも「善人不在」なんですよね。むしろ悪くないように見えた彼女たちのほうが"分かりにくく悪い"というか、どっかが歪んでた気がする。


諸星親子はさあ、行動原理がめちゃくちゃ分かりやすいんですよ。筋も通ってる。自分が良ければあとはどうでもいい。金を稼ぐためには何でもするし、結託した相手のことは意外と裏切らない。そう、裏切らないんですよ。親子でもっとギスギスするかと思ったけど、最後まであの2人は結託してるんですよお。「親父ィ!」って、最後に思いついたネタもちゃんと報告するんだもん。タスキだって渡しちゃうんだもん。


大はなんで良夫のことを裏切らないのかな…あの2人の親子関係とか、あの2人の考えてることとか、諸星親子についてはサッパリ何も分からないまま終わってしまった…私たちが知らない間に会社は大きくなって、知らない間にどんどん服が金持ちの服装に変わっていって、他の人たちの思惑はいっぱい喋って歌ってくれるのに、諸星親子のことは最後まで「金払え」とすぐ歌うことしかわからない…なぜ…



音楽が良すぎ

冒頭で書いた。せっかく章立てしたのに、章立てに入る前のプロローグで大半喋っちゃうの、ほんとうに悪い癖だと思う!!!


もっかい書くけど、すごく重苦しい酷い人生を歌ってるのに、あんなにかわいくて爽やかでキラキラした音楽なの、信じられないんですよね???かわいい恋の歌っぽく仕上がってるけど、その2人は犯罪者と犯罪者ぞ???


バランスの話と繋がるけど「金払えソング」がめちゃくちゃ不穏というか、定期的に歌って刷り込まれるマイナーコードの歌じゃないですか。暗くて不気味で悪そうで。圧倒的「悪者」な諸星親子のテーマソング。だから、他で明るい曲が来ると対比で脳がバグを起こすんですよね。歌詞噛み砕く前に「明るいかわいい楽しい〜〜〜!!!!」ってなる。ダメです!!!


カーテンコールが良すぎ

ダメ押しのハッピー演出!!!カーテンコールかわいすぎでしたねハッピーー!

諸星親子以外のみんなが順番に肩を叩いて起こしていくあの感じ、お互いちょっとはにかみながら、目を合わせてニコニコしちゃってるあの感じ「ああ、良い話だったー!」ってなるじゃん。違うから。みんなお互いのことよく見て!ハッピーエンドと違うやろ!!!


えー、ここまで4000字ほど書いてきましたが、言ってることはただ一つ。

「ハッピー!と思わされてるけどほんとは違う」

後半これについてもう少し書きます。
闘いはここからだ。



諸星親子がわからん

いや、さっき書いたわ…

今度から先に目次作るのほんとにやめようかな…でも書いておかないと書きたいこと忘れるんです…


諸星親子のことが何ひとつ分からない衛生。大の母はどうしたの?どうやって議員と懇意になったの?大に反抗期はなかったの?ビジネスのアイデアはどっちが出してるの?経営で親子喧嘩しないの?小子のことどうやって育てたの?ねえ、教えてよ…


いちばん怖いのは、「諸星親子は絶対的に悪い奴」っていう前提文脈があるわけだけど、それってわりと他のキャラクタ目線で刷り込まれたイメージでしかなくて、私たち観客が「悪い奴」って判断できる要素はほとんど無いんじゃないか…?

古田新太が悪い顔して下ネタ連発してたら問答無用で悪人感が出るからめちゃくちゃずるいと思う。あの人、今でもカッコいい役出来るのに、悪い役したらカッコ良さとか出さずにまじで悪い奴になり切れるの本当に意味がわかんない。あの人たちが本当に悪いことしたところ、観ましたっけ???いや悪いのは悪いんだけどさ。実はあんまり観てなくない…?

火を付けたのはサクラの住人、殺したのは議員と秘書、豚に喰わせたのは禎吉と麻子。確かに家を燃やして脅したけど、そもそもその住人もグルなら被害は出てないわけじゃん…?(もちろん脅しちゃダメだけどさ。値段は安いし仕事はちゃんとするんでしょう?)

もちろんそれを指示した、それを良しとしている会社、っていう時点で悪いんだけど、なんていうか、直接的な犯罪表現はできる限り避けられてた気がするんだよね。

住宅地の前にホテル建てても、パチンコ屋建てても、飲み屋買収しても、それは罪じゃないじゃん…?「悪どい商売だ」と思わされてるけど、実際にそれで生活が成り立ってる人たちがいて、街が成り立っていて。私たちはその搾取の実態を知っているわけではない。脅させて殺させて握り潰させて会社を大きくした「らしい」ってことしか分からない。人が永遠に使うものから永遠に金を取る。あくどいけど、それって商売の基本でもあるからな…


唯一明示されてるのは、麻子と議員を殺したこと。でもそれだって、どちらも先に裏切ったのは相手の方だった。結婚を「どちらでも構わない」と承認したのに、麻子は2人が死んだと思って笑った。ハゼーは2人と一連托生だと言っておいて、裏で2人を亡き者にしようと諮った。

裏切られたから殺る。それはもちろん罪だけど、小子だって、あのあとどんな理由でもつけて殺せただろうに。禎吉だって、行方不明?にさせる前に見つけられただろうに。有象無象の罪を踏み倒してきた(と言われている)彼らにしては慈悲深い判断だなあと思うのです。

いや、そもそもあの結婚式の騒動が禎吉の仕業だって、気付いてないのか?ほんとうに?気付いてるけど麻子が居ないから無害だと思って放置してるんか?このへん言及あったっけ…とにかくあの2人が何を判断基準にして罪を犯しているのかが最後まで分からなかった。分からない。諸星親子のことは何ひとつ分からない…



瀬田夫人がわからん

いちばん歪んでいると思ってる瀬田夫人、だいすき。

馬鹿を憎んで人を憎まず。

これを宗教の根底に置いてしまう衛生、わたしの性癖にぶっ刺さってきたよね!!!


人々の頭が悪いのだから仕方がない、その悪い頭でも分るように工夫したら宗教になりました、ってヤバすぎんか?!それはもう「分からせる」を放棄した結果だよね…分かんなくてもいいから私たちの言ってることを信じて動けってことでしょ…


刑務所から出てきた瀬田夫人は、まだ説明を諦めてなかった。両手両足を使って「馬鹿でも分かるように」説明しようとしてたのに。労働組合を立ち上げた夫人は説明することを完全に諦めていた。だって箕倉さんにもほとんど説明しないんだもの。どうせ言っても伝わらないから、伝えることをやめてしまった瀬田夫人。いろんな罪を暴露したって伝わらないから、クソまみれっていうインパクトに頼ることにした瀬田夫人…

伝わっていないことにイライラすることもなく、伝わっていないことが当たり前、「分かっていなくて当然」とでも言うようにニコニコ笑って…

教祖様(名前を忘れてしまった)を信じる組合員たちを、彼らとの共有を諦めてしまった彼女はどんな風に見ていたんだろう…宗教は信じていなくても、宗教のおかげで頑張れる気持ちは分かる的なことを言っていた(台詞を忘れてしまった)瀬田夫人にとって、信じられるものはあったんだろうか。分からない。もう記憶が定かでないからわからない…


ラストだって、善悪を糾すはずのテレビは、ビジュアルに釣られて本当のことから逸れてしまう。復讐を誓ったはずの瀬田社長と禎吉まで、なんでかわかんないけど絆されてしまう。(なんで???)

説明しても伝わんないからってクソまみれにしたのに、結局伝わんないんですよ。小子よりもしんどいの瀬田夫人だと思うよ…



禎吉さんがわからん

禎吉さん、何の復讐をしてたんだと思う?「愛する麻子さんを殺された復讐」ではなかったよね。だって、結婚式で諸星親子が倒れたとき、一度戻ってきたあのとき、麻子さんの手を引いて逃げれば良かった。あの場に麻子さんを残して行かなければよかった。「諸星親子が悪い」ってことにすれば全部解決するから、そうしてるだけみたいな、歪な復讐心。愛する人の復讐っていう美談に見えるけど、実は全然美談じゃない。

麻子さんを殺すなんて酷い、とは思ってないと思う。それ以上にたくさんのひとを豚に喰わせてきただろうし。他人の死に対する抵抗みたいなのが無いよね。麻子さんを「殺した」ことより、麻子さんを「理不尽に奪った」大が憎い、みたいな。殺されたことよりも、奪われたことへの恨みの方が強そう。2幕より結婚式のほうが憎しみとか計画とかハッキリしてたもんね。奪われた「麻子さん」そのものを失って目的が失われたのを、瓜二つの小子で紛らわしてる感じ。だから「麻子さん」って呼んじゃうんでしょ…ダメだよ呼んじゃ…(すき)禎吉さん、2推しです。



小子がわからん

小子は本当の自分を誰にも見せてなかったと思う。きっと瀬田夫人にも。無邪気な笑顔の仮面をかぶって、ニコニコ振る舞って、労働組合ではきっと教祖らしく振る舞って。そういう意味ではやっぱり麻子さんと親子だなあと思います。

麻子さんも他人に期待することを諦めてた。命令する人と、それ以外。禎吉さんはちゃんと「それ以外」に入れてたかな?入れてなかったんじゃないかな。誰でも一緒。最期までそう思ってたと思う。


瀬田夫人と小子は、いつ、どこで出会ったんだろう。どちらがどちらを見つけたんだろう。瀬田夫人は幼い小子を引き入れることを躊躇わなかったんだろうか。

たぶん、大が麻子さんを殺したっていうのは、禎吉が教えたと思うんだよね。禎吉さんはクズなので…でも禎吉さんはあんなに強い復讐心を持ってはいないので、何の影響だったんだろうなあ。家が嫌だったのかなあ。あの体操服屋さんのおじいさんは、一体誰だったのかなあ。父の元ではなくて、あそこで育ったんだろうか。わからない。結局わたしたちは小子のこともわからない…



ほんとうは怖いミュージカル衛生

そう、諦めたんですよね。瀬田夫人は他人に理解してもらうのを、説得するのを。麻子さんは他人に期待することを。小子は他人に頼ることを。箕倉さんは他人からの評価を。諦めちゃったんですよ。諦めた人たちが唯一諦めなかったのが復讐だったのかも。

反対に、何も諦めないのが諸星親子。諦めの悪い男たち。あの歳になってもまだ欲を捨てない良夫に、何もかも自分のものにしてしまう大。


人は誰もが何かを諦めていて、諦めずに全てを手に入れている人を見ると羨ましくなってしまう。なんか、そういう欲の話だったのかもって。

誰もが欲を持ってて、その欲を貫こうとしたら、誰かにとっては善人ではいられない。善人のように見えてもどこかに絶対に欲と諦めがあって、欲と諦めがある限り善人にはなれない。さらには他人を羨んで(恨んで)復讐を企てたところで暖簾に腕押し、成功しないし、成功したとしても何も残らない。そう、復讐は何も残らないんですよ…(かずきに鍛えられた復讐への虚しさ)


ふわふわ楽しい音楽で包み込んで、気が付かないうちに何かがスッとすれ違って行ってしまったようなお芝居。「うんこ」と「金払え」に目が眩んで、ほんとうの「汚ねぇもの」をはぐらかされてしまったような、めちゃくちゃ美味しい魚を食べたけど、なんとなく喉に小骨が引っかかったような、そんな気分。(どんな気分?)


「善人不在」なのに、どこか誰かに肩入れできてしまう。「善人不在」なのに、どちらかの悪人を応援してしまう。衛生を見て「これは善か?」と言われたら「どれも違う」とすぐ言えるけど、「じゃあお前は善か?」と聞かれたら言葉に詰まってしまう。「自分は悪ではない」と心のどこかで信じてるけど、その根拠のない自信をぐらぐら揺らされてるような感じ。悪はわかる。でも善って何???

「善人不在」と言われて「汚いミュージカル」と言われて、自分の生きる世界とは全く別のアングラな世界の話かと思ってたのに、想像以上に身近だったことの恐ろしさだったのかもしれない。ちょっと時代が昔だからまだ「別の世界の話」として見られるけど、もし現代まで続いてたら怖すぎたよね…


いつもは書いてるうちになんとなく着地点が見えてくるんですけど、結局最後までとっちらかったまま進んでしまった。いつも以上に筆が乱れているし、中身もないエントリになった自覚はある。でも(大阪には間に合わなかったけど)福岡の前に仕上がりました。

こんだけいろいろ「分からん」って言ってるけど、めちゃくちゃ楽しんだし全力で誉めています!!!!(伝わらなさすぎて泣きたい)


とにかく補完したくなる空白をたくさん持ってる衛生、もうちょっと長いこと咀嚼したかったし、もう一回ちゃんと観たかった…一度観ただけだと、最後のバキュームのキラキラとカーテンコールのニコニコで全部持って行かれるからね?!

映像残ってたらいいのにな〜〜〜〜〜