足元にご注意ください

気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

薄味が惜しい【紅鬼物語 初日】

今年に入ってから感想をサボりまくっていますが、新感線はちゃんと書こうと思います。劇団☆新感線2025年春夏公演 いのうえ歌舞伎 譚 Retropective「紅鬼物語」初日公演を観てきました!

各地方からあらゆるジャンルのオタクが集結しているのに、この客席の誰ひとりとして今から始まる物語を知らない初日公演、やっぱりワクワクが桁違いだな〜〜〜と思います。


役者はすごく良かったんですけど、脚本とあんまり仲良くなれませんでした。新感線じゃなかったら楽しく観てた気がするけど、新感線なので感想が辛口になっているような気がするエントリです。

冒頭だけ核心的なネタバレ避けてるけど、役者別感想は思い切りネタバレなので各自自衛してください。


全部味わえたけどまあまあ薄味

初手でこの感想もどうかなと思うんですけど「やりたいこと全部に手を付けたら柚香光以外ぜんぶ薄味になっちゃった」という印象かも。

いや、面白くなかったわけではないんですよ!!!!!!役者も演技もとても良かったし、満足した。でも、狂う気配はない。いや、局地的に狂いそうになった箇所はありますが、そういう意味じゃなくて。「劇団☆新感線」の作品はなんというか、自分にとってもっと「刺さる」ものだという期待値があるから「そこまでではなかったな」という感じ。

まあ、脚本が推しによるものではないので「それはそう」なんですけど……(推しによるものだとしても前科があるから怖いわけなんですけど……)


ゲスト俳優がわりと居るのに、ゲスト俳優より番手の低い劇団員に見せ場が多く作られていたのが薄味の大きな要因かなって。青木さん、劇団員の村人使っていろいろさせたくなっちゃいました?わかるよお、劇団員の見せ場、楽しいもんね。でも先に主要キャラクタの物語をちゃんと紡いでくれよな?????


初日でテンポがまだノってないってのも大いに関係しているとは思いますが、本筋と関係ないギャグが多くて、そのわりに本筋の主要キャラクタの話があんまり深まらないから「ギャグやってる暇あったら深掘りして?!」と感じてしまうとこが結構あった。

初日だからウケたけど……2回目以降も同じネタで笑えるかどうかは自信がないかも……


それから、いろいろ伏線張ってあったし面白くなりそうな要素がたくさん散りばめられているのに、その舞台装置が期待したほど活用されなくて……というか、せっかく登場させた要素のほとんどがオチには全く関係して来ないのが納得いかないのかも!「貸せ、新感線の地獄はこうやる」って立ち上がりたくなる気持ちが出てくる。

この部分に関しては「演出で省かれてしまった」可能性もあるのでなんとも言えないけど、「言いたいこと」と「やりたいネタ」と「ラストの展開」のつながりが弱いんだよなあ。どうしても比較するので……おれたちの中島かずきと……



配役別感想走り書き!

以降、ネタバレには配慮しません。順不同!



紅子/柚香光

現役時代はトップになる前しか観たことないのであんまり記憶がないんですけど、指先まですげ〜〜〜丁寧な所作をする人だなと思いました。あと体幹とバランスがすげ〜〜〜強い!!!!!ふつうの芝居も全て指先まで筋力でコントロールされてる感じっていうか、自然体で立ってる姿勢なんてひとつもないんじゃないか?

鈴木拡樹とあんまり身長差がないからか、2人で並んでいるときは常に下の段にいるか膝を曲げるかしており、その中腰でそのしなやかさ、何?!と思いました。なんか、大衆で女方を見ているような気分でした。その着物の中に隠れてる体幹、何??!?


役まわりとしては、宝塚を退団した直後の男役トップが初めて女性を演じます!妻です!娘です!母です!ってなったときに見るべきものは全部この板の上にあった。女優・柚香光の必携バリューパック。

ただ、これはわたしの柚香さんへの解像度の問題かもしれませんが、天海祐希を見ているが故に、アテ書きも演出も、もっとドヤ顔できたんじゃないかなと感じてしまったところはありました。いや、洋ドレスで出てきたところにはかなり思想を感じたけど……


「かわいい柚香光」がめちゃくちゃかわいかったし、「かっこいい柚香光」がかっこよかったので楽しかったです。

爪付けて、素手で戦って、爪外して、剣奪って、殺陣やって、デカい爪生やして、殺陣やって、小道具含めてちょっと忙しすぎるだろとは思いました。デカい爪の造形もちょっとどうかと思いますが……!

身体能力めちゃくちゃ高そうなので、もうちょっと落ち着いた、乱戦じゃない殺陣が見たかったなあ。物語としても、蒼と栃ノ木との対峙をもうちょっと戦って欲しかった。シンプルに、見たい。

それから、次はかずきの脚本でも観てみたいなとも思いました。もうちょっと「かわいさ」を押し出さない女性の役とかも、やっぱりハマりそうだし。


キャラクタとしては、結局、蒼のところから逃げた理由と、10年経って会おうとしている理由とがいまいち理解できてないんですけど、私だけ?

「思わず食っちまって頭真っ白になって逃げた」「だって弱っていて」という栃ノ木との会話は嘘で、蒼を救うために覚悟して食べたということ?というか、女中も覚悟して食べられた感じ?でも、罪悪感で逃げた?女中の頭を残して?娘を連れて?でも娘には人間として生きて欲しい?論理が結構むずくない?

人肉を食べると鬼の力が強まって鬼の姿になっちゃうのかなとも思ったけど、冒頭で栃ノ木たちに「人間の姿になれと言っただろう」と言っているので、鬼は意識的に人間の姿になれることがわかっており……

ちょっと、次もうちょい気合い入れて物語を追わなきゃなと思いました。このへん省略されてるか今後追加される気配もするけど……


源蒼/鈴木拡樹

なんだかんだ言って月髑髏と映画版刀剣乱舞しか観たことがなかったんですけど、ふつうの人間を演じるとこんなにニュートラルな印象のひとなんですね。ニュートラルっていうか、「人間臭さ」みたいなのがまっっっっっっったく無い。こんなに清廉で無臭な人間、いる??!!?!?!このひとって、もしかして、すごく、人間離れしているのかも……


源蒼という人間は、鈴木拡樹という俳優の無臭さと、物語の深みが足りないのとで、ちょっとあんまり人物像がわからないままなんですけど、生きることに葛藤している「いいひと」なんだろうな、たぶん。おそらく。知らんけど。

紅子を愛しているところがあんまりわかんなかったから、10年も探している理由がね、ちょっと薄いんですよね。この辺がもうちょっと咀嚼できると物語がもうちょっと「わかる」気がするんだけどな……

生きることを諦めて死の匂いに引き寄せられたときに「紅子を見届ける」という生きる理由ができて、彼女の生死を見届けるまでは死ねなくて、紅子に自らが刃を向けた時にその役目の終わりを感じたから、納得して死んでいったのかも。いやお前がいちばんに死ぬんか?!とは思いましたけどね?ちゃんと最後まで見届けなよ!



藤/樋口日奈

彼女のパワー、もっと使って???!!?!?!

ちょっと、人間臭さと浮世離れした感じの塩梅がすごい。あんな緩急、アリ?

ものすごく全身コントロールされた母と、無臭の父との間に生まれたのが、こんなに本能のまま奔放な娘なの、まじで鬼の子だなと思いました。いい意味で。

もっと藤の無邪気な狂気に焦点当てても面白かったと思うな……!序盤の藤の空気具合がすごく勿体無い。紅子を引き立てるためなのはわかっているのですが……勿体無い……

7歳の藤が出てこないのも、ちょっと物語のわかりづらさを加速させているかもしれませんね。藤はこの旅を、父を、どう捉えているんだろう?


桃千代との「子世代」の話にもっとフォーカスされるのかと思いきや、そうでもなかったので違うんか〜と思っていたのにラストが完全にこのふたりの話だったので「ほなもうちょいフォーカスしてもろて?!!?!」と混乱しました。一目惚れであのラストはちょっと、感情が収まらないのでもう少し恋愛と信頼を築いてほしいかも……

書いていて気がついたけど、14歳くらいの設定だったらわりと全体的に納得したかもしれません。父と別れた時は4歳。無邪気に血を舐めちゃうのが14歳。たぶん全体的に藤がちょっと、いやかなり幼いんですよね、17歳にしては。17歳って太刀影の早乙女友貴だし、刀衣の早乙女太一ですよ。

桃千代も……いや、この話は桃千代の項目でします。



桃千代/一ノ瀬颯

とても良かった!!!!!というか、一ノ瀬颯のオタク大勝利演目だったのではないでしょうか……キャラクタとしては納得行ってないところもあるけど、助演男優賞はこのひとかもしれない。

そう、キャラクタとして納得行ってないところがあるのでなかなか手放しに褒められなくてもどかしいね……


桃千代はさあ、記憶を失ったままなところが納得行ってません!それ、藤の父でもあるけど、お前の主君でもあるんやぞ!!!そこは思い出さんかい!!!

……と思ってるんですけど、そういえば蒼を斬ったとき、誰かが「その人が母を……!」って言った気がしていて、もしかして桃千代ですか?もしかして思い出してますか?桃千代の母、もしかして10年前の摘発〜報復に巻き込まれて、蒼のせいで命を落としていますか?ただの聞き間違いですか?聞き間違いかなあ……

一瞬の台詞すぎたので次もうちょい注意して聞きたいけど……出自が明らかになっていないので(いないよね?)、そこんとこももう少し匂わせてほしかったかなあ。藤との関係もね、血を舐めて藤が人間に戻った=なんかそういう血筋の人間だったとかさ、いろいろさ、あると思うんですよね!


とまあ、かなり言いたいことはあるものの、新感線初出演の若手役者さんでこれだけ演技も殺陣も大活躍なの、もしかすると今後の出演もありそうかも〜〜〜と期待しています。

全体的にキャラクタの味付けが薄味なのでちょっと、まだ、演技の良し悪しとかはあんまりわかんないけど……今後のいのうえさんの調整でまた味変するかもしれませんし!



碓井四万/千葉哲也

今回いちばんの不完全燃焼ポイントは間違いなくここです。千葉さんの使い方、もったいなさすぎんか?せっかく千葉さんが修験道の法師として存在するのに、なんで陰陽師をあんなに使うの?どっちかでよくなかった?っていうか千葉さんのこともっと使ってくれや!!!!!!!

思わず口が悪くなる。10年前からの家臣で、失踪の日も一緒にいて、鬼を斬るための霊力を込められる人間で、めちゃくちゃ重要ポジションっぽいのに物語には全然絡んで来ない。なんで??!?!?!せっかく霊力込めてくれた刀、使わんのかい!!!!!

もっと、こう、蒼の精神的支柱になったり、当時の事件のキーマンになったり、いろいろ、できそうじゃ、ない?


それこそ新感線じゃなかったらたぶんここまで文句言ってないと思うんですけど、「新感線」に「千葉哲也」が出てるのに、「千葉哲也じゃなくてもいい」のが許せないのかも。まあ、IZOも鉈切り丸も観てないオタクが何を言っているんだと言われればそれまでですが……



坂上金之助/喜矢武豊

めちゃくちゃ良かった……朱雀で当たってない(はず)ので初見なんですけど、このひと、こんなに芝居できるんだ……

ただ、キャラクタが薄味すぎてなんもわかりません!蒼に仕えた背景も、強さの理由も、なんもわからん!キャラクタとして、桃千代と金之助、どっちかでよくなかった?ていうか、金之助と渡辺縄、どっちかでよくなかった?

いや、どっちかじゃよくないのはわかります。頼光四天王は4人なので……金之助も縄も、碓井と阿部辺も両方必要なのもわかります。わかるけど、それならもっと「金之助」としての必要性があったら嬉しかったなあ〜〜〜

せっかく早乙女友貴の腕を切り落とすという因縁があるんだから、なんかもうちょっと語られても良かったのになと欲張りたくなります。


喜矢武さん自体には存在感もあって、まっすぐで、ギャグパートの間合いも良くて、すごい良かったと思うんですよねえ。とにかくキャラの、とくに四天王の背景がもう少し欲しい。

劇中に登場する人相書は、まじで喜矢武さん作らしくて、初日カテコの早乙女友貴バースデー(EVE)ケーキも同じイラストが使われていました。よくできてんな。

配役表にもちゃんと「人相書/喜矢武豊」って書いてある。そしてその隣の小道具制作に「真鍋恭輔」を見つけたんですけど、それってあの真鍋さんですか?ノリさんではなくて真鍋さん?



渡辺縄/川原正嗣

劇中ではぜんぜん役名わかんなかった(そういえば背中の縄掴まれてなんか言ってたな)ので、主演後にパンフ開いて理解しました。渡辺綱ね!


キャラは薄いし殺陣は乱戦だし、なんかせっかく監督がそこにいるのになあ〜〜〜!と、もどかしいシーンが多かったです。

人が多いから乱戦になりがちだけど、せっかく刀使えるひとがいっぱいいたんだから、タイマンにしても良かったのにね。中盤の乱戦と後半の乱戦の視覚的な印象が一緒になっちゃったから……

タイマンって、紅子vs蒼と栃ノ木vs金之助しかないんじゃない?エッ?このラインナップに栃ノ木vs金之助入るのめちゃくちゃオモロくないですか?その因縁もっと活かしてくれよ


渡辺縄の印象が薄すぎて殺陣全体の話になってしまいましたが、つまりそういうことです。


栃ノ木/早乙女友貴

いや〜〜〜〜〜登場シーンッッッッッ

薄い羽織かぶって赤い衣装でうずくまっていた女、どう考えても紅子だと思わせたいんだろうけど「絶対にこれ早乙女友貴」という確信を持ってオペラグラスにかぶりつきました。

女性の声色とシルエット……そこから低めのがなり声……栄養価が……高すぎて……その後しばらく話が全く入ってきませんでした。


2025年の出演1作目に続き2作目でも早乙女友貴による女性性を浴びることになるとは予想だにしなかった。まじで青天の霹靂、寝耳に水、薮から棒。その場でスマホの電源入れてフォロワーに連絡したかったもん。

早乙女友貴の女性性に喰らいまくった楠俤の感想はこちらです。


四天王に「馬鹿なの?」と言われ続けた栃ノ木は、ほんとうに馬鹿でしたか?とても本質をついていませんでしたか?今回のテーマの根幹を握っていたのは栃ノ木ではありませんでしたか???

ほんとはいいやつ、と言われた栃ノ木、たぶん蒼に対する「いいひと」と同義の「いいおに」だったんだろうな、と思うんですよね。

立ち回りの中で紅子へ語りかけるところ、ほんとに、鬼という種族への矜持と、同胞への情と、やるせなさと、そういうのが混じった絶妙な感情を早乙女友貴による出力でお出しされて、中島かずきが書いてくれない超好きなやつ!!!!!!!って諸手を挙げて喜びました。


紅子は「いいひと」である蒼と、「わるいひと」である八十八たちと、鬼として「いいおに」である栃ノ木と「わるいおに」として退治されるべき鬼という存在との間で揺れて、それでも蒼のそばにいるために「ひと」であることを選ぶんですよね。たぶんこれが物語の根幹だと思っています。

「鬼」という種族にとって人肉を食べることは「好み」ではなく「生存本能」であることが明かされる栃ノ木の訴え、まじで紅子への同胞としての善意でしかなくて、いいやつって……そういうこと!?の衝撃がすごかった。紅子に訴えかけるこのシーンの感情の揺れは、演技の噛み合わせによってニュアンス変わる可能性もあるし、まじで、早乙女友貴による繊細な感情の揺らぎが顕著に出るところなので!!!変わっても、変わらなくてもたのしみ!


ほんと、鬼はただ生きてるだけで「わるいおに」で、退治される対象なんですよね。

だって栃ノ木たち、誰ひとり殺してないんだもの。拾った死体を喰っただけなんだもの……橋のたもとで、お腹空いて蹲ってたら見つかって腕斬られたんだもの……(かわいそう)

ただ生きてるだけなのに……


惜しむらくは、そういう「いいおに」としての振る舞いが「小物感」になってしまっていたところです。動物に優しい田舎のヤンキーじゃなくて、カタギには手を出さない極道であってほしかったんだよな……!

せめて今度こそ最後まで「お馬鹿」にならずにいてほしいです!ヘドバンしてても、ふざけててもいいから……!


そう、ヘドバン楽しそうでしたね。どセンターで頑なに歌わない栃ノ木さん……!

1幕で無駄に仕込みマイクを実績解除していてめちゃくちゃ笑いました。早乙女友貴にマイクを持つ経験を与えるためだけのネタか?



八十八/粟根まこと

鬼より悪い人間の象徴、八十八さん。でもおれたちはもっと悪い人間のこと山ほど見てきたんだよな……新感線の地獄、こんなもんじゃないので……

2幕冒頭のシャブ漬けダンスとそこからの房吉の狂気がめちゃくちゃ良すぎて、最終的に村人全員を麻でシャブ漬けにして鬼に総攻撃!(自分は安全な場所に退避)ぐらいはあるかと思いました。麻の活用、わりと良心的な範囲だったじゃん。鬼に対しては短時間の睡眠薬にしかならなかったわけですし……あんなに1幕から伏線張ってたのに……

房吉の狂気はシンプルに河野まさとのファインプレーだったのかもしれない。ほんと最高で震えたよ。


八十八を斬った紅子が「ついに人間を殺してしまった……!」って後悔するわけですけど、後悔する必要をあんまり感じない相手を斬った気はします。人間同士だったとしても、八十八は斬られていたんじゃないかな。



劇団員たち

新感線にしてはアンサンブルがめちゃ少なくて、舞台上にいる役者がほぼネームドだったような気がします。

劇団員それぞれにめちゃくちゃ見せ場があって良かったけど、物語全体のバランスとしてはやっぱり主要キャラクタにもっと見せ場というか、過去とか感情を明らかにさせるところに尺を使ってくれよ……という気持ちになるくらいには劇団員大活躍演目だった。

よく考えれば劇団の45周年記念公演ですし……確かに……そうなんですが……!


カナコさんの歌唱がしっかりあったのはもちろん、インディさんがめちゃくちゃ歌ったのが驚きでした。シャブ漬けも合わせて2曲あった……よね?!

インディさんは血糊の仕込みもすごかった。さとみさんもだけど、あんなにべちょべちょに血が流れたの、ひさしぶりに見た気がします。

よし子さんの菊と磯野さんの竹丸もめちゃくちゃ良かったですよぉ……あの2人が紅子を授かるまでの物語と、鬼の紅子を人間として育てるために苦心する物語にもそれぞれ一場ずつ必要だった。必要だったけど、それにはゲスト枠キャラとの配分がさあ……!


メタルさんと武田さんは、ほんと、造形のバランスとしてよくぞこの2人を置いたなって。あれはもう、全員がおなじ「小鬼トリオ」を想像したでしょ。去年末の天保十二年のシェイクスピアで、演劇の余白を想像で埋めるためには共通認識が大事、と改めて思ったわけですが、小鬼の共通認識は間違いなく持ってたよ。


河野さんは裏切りの本領発揮シーンが鮮やかすぎて拍手を送りたかったけど、最終的に保身のために妻を差し出すことも手のひら返しで紅子に寝返ることもしなかったので、あの一瞬の裏切りシーンの輝きがほんとにすごかったな。

麻で前後不覚になってるわけじゃなくで、ただ「タガが外れた」だけなところも最高だった。そっちが本質なんじゃん。


右近さんにソロ曲があるのは当然だし、あの癖と狂言回しのバランスは素晴らしかったけど、あの獣が存在することによって千葉さんの存在意義が薄れているのでキャラクタとして納得いってません。

あとは阿部辺の村木さんがほんとに大活躍すぎましたけど、このひとは劇団員じゃないんだよなあ……



まだ進化する演出

舞台転換の構造がまた進化してて面白かったんですよね〜〜〜!いのうえひでのり、まだまだ開けてない引き出しを持ってて本当にすごい。


移動式のパネル的なものを袖から動かして、そこに隠れて出捌けとか着替えとかやるのはこれまでもあったけど、舞台の真ん中にカーテンを引いて擬似幕を作って場面転換するのは新しかったよねえ〜?!

カーテンが閉じていく感じ、ステアラの場転を思い出しました。


それにしても、いのうえひでのりって「舞台袖」って存在を忘れてしまったのかな?っていうくらい、袖からの出捌けをしなくなりましたね。今回もほとんど、幕の向こうの板付きか、客席入り口から登場した。客席入り口って、客の入り口なんですよ……?

しかも今回わりと規模大きめの小道具?中道具?を通路使って運ぶので笑いました。客の間をそんな大きなもの運んでいくの、野外劇かなんかだと思ってる?


脚本とはちょっと仲良くできなかったけど、こういう新しい演出をどんどん試していくいのうえさんのことはやっぱり信頼できるなあ〜と感じてはいます。

お願いだから栃ノ木を「お馬鹿」にするのは我慢してください!!!!!


総じて、変化を観測したい作品

めちゃくちゃ文句言ったけど、そこそこふつうに楽しく観ましたし、劇団☆新感線作品ではなかったらそこまで文句言ってなかったかもしれない。

未見のひとに感想を伝える時に微妙すぎる表現になってる自覚はあります。演者と演出の良さで相殺されて、作品全体の評価としては「良かった」側に振れてるんだけど、自分の感想として「面白かった!」と力強く答えるには脚本に納得できてない感じ。


初日時点での評価って、まあ「初日ですし」という部分もかなり大きいはずなので、手持ちの残りチケットでの変化を観たいなと思っています。

大阪の後半と、東京の後半。ライビュに申し込むかどうかは大阪見届けてから考えたい。