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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

たらふく情報仕入れて浴びた二度目のスリルミーの話【スリルミー 成河×福士ペア】

昨日の松柿ペアに続いて成福ペアのレポです。松柿がスリルミー初履修で、前情報を一切入れずに、チラシすら見てないレベルの知識で観ました。

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 ら、とんでもねえ突飛な解釈が生まれてしまって、あまりにとんでもねえから帰ってひとまず元ネタの基本情報(wiki)とパンフと感想レポを山ほど読んだ。あとCDも3パターン試聴した。たらふく情報摂取して、もう一度素直な気持ちで観ようと思いました。

以下、ネタバレ、比較、考察雑多な感想レポ。比べて書きはするけど、みんな違ってみんな好きが根底にあるよ!

 

ちょっとここに正座しなさい

素直な気持ちで観るって言った子だれ?暗闇の中で上手から成河さん歩いてきた時点で既に私の狂気に殴り殺されそうでした。

しかも上演2分前にTwitter確認したら、フォロワーさんの福士「彼」は自死だった説を読んでしまったからその時点で死亡した。まだ暗転すらしてない。むり。そもそも結末知ってて素直な気持ちで観れるわけなかった。

だって冒頭の「私」にもう「彼」は居ない。「彼」は居ないんだよ…あんな思いをして手に入れた「彼」なのに、もう自分の物ではなくなってしまったんだよ…?99年、永遠じゃなく死ぬまで、ずっと一緒だと思ってたのに、「私」の死と「彼」がこんなに違っていたとは、思わなかったよね…。わたし(これは筆者。ややこしいな。)たぶん「彼」は数年のうちに逝ってしまったと思うんですよね。呆気なく。悲しいほどに。(ここは元事件の話をまだ読んでません。)そうかあ、だから「彼」が三人称で「私」は一人称なんだな…って、のっけから情緒が崩壊していますが、まだ成河さん歩いてるだけだから。喋っても歌ってもいないから。開始30秒で全てを放棄した1月20日午後4時過ぎ。

 

 

喋り出した成河「私」

成河さんは初めから狂いまくっている。(全身全霊で褒めてる)狂気の演技が大好物なわたし、松下「私」よりも分かりやすく狂気な成河「私」に開始1分でぶん殴られる。

あの人さあ…刑務所にいる間に足を悪くしてるんだよね…虐めに遭ったのか、ゲームに負けた自分を自分で罰したのか…。とにかく成河さんは暗転の中でも「私」であり続けていると悟った。これが後で効いてくるんだよ。覚悟しておくんだよ。

お話ししましょうって言いながら肝心なことは何も話す気がない成河「私」。「彼」とのほんとうの思い出は私だけのもの。って思ってそうだなって、確か松下「私」のときも思ったけどすっかり忘れてた。途中で「友情が必要だった」って嘘を吐くのもそうだし、審議官の質問に答えているようで、実は全く違うことについて話しているんだよね。自分の文脈だけで喋ってるから、「なぜあの時理性が効かなかったのか…」は、「自分の意思ではなかったのですか?」への答えではないでしょ?ただの自問自答でしょそれ?松下「私」は少なくとも答えようとはしてたぞ!

とにかく、分かりやすく狂っている成河「私」のおかげなのか、ただ筋を知っているからか、松柿後の宣言通り、成福はずっと「私」目線で観ることができました。ちなみに「私」目線の観劇でいちばんダメージ受けたシーンは、オペラで「私」を抜きながら聴いた「死にたくない」ですね。耳から福士誠治のあの弱々しい声が入ってくるだけで死にそうなのに、その間ずっと無表情な成河「私」、最後の「死にたくない」だけ辛そうに眼を瞑るんだよ?こっちが死ぬわ。

 

 

ふ、ふ、ふ、福士誠治

って叫ぶしかなかった。心の中で。極髑髏にぶん回されて以来のご対面。兵庫、兵庫、お前、誰?わたしの知ってる兵庫はそこには居なかった…。

(極髑髏ネタバレレポ↓ 春ごろWOWOWで放送予定だよ!) 

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 そのスタイルはまじで凶器。と思ったら喋り出した声も凶器だった。柿澤「彼」が悪戯っ子みたいに足音忍ばせて寄ってきたのも最高だったけど、福士「彼」が無表情で忍び寄ってくるのほんと最高。柿澤「彼」が同学年の早生まれなら、福士「彼」は4月生まれって感じ。冷めてる。ぜんぜん「私」のこと見てない。成福から入った方々の松柿の感想で「え!お互いを思い合ってる!」って驚いてるのをたくさん読んで、あんなに食い違ってるのにどういうこと?と思ってたけど、成福お互いのこと何にも考えてなかった。びっくり。まさに両一方通行。

「彼」についての考察は章を改めるとして、ねえ、福士「彼」が奥に下がっていくとき頭ぶつけないように首をくいと傾げるの、最高じゃなかったです…?知ってる?あれ別に普通に歩いても頭ぶつけずに通れるんだよ…カテコで一回だけ普通に降りて行ったのちゃんと見たんだからな!そういうとこ!ずるいぞ!(好き)

「そういうのが欲しいんだろ?」をちゃんと理解していて、まさに「そういうの」そのものとして存在する福士「彼」、誰よりも狂気に満ちている。ずるい。成河「私」がちょっと不憫になる。アレに会って正気で居られると思えないよ…

 

 

また突拍子もない解釈を垂れる

松柿が狂ってなかったとは口が裂けても言えないけど、いちばん狂ってたのは成河「私」で、いちばん壊れてたのが福士「彼」だと思った。

ハンマーで殴り殺すのになんでロープが必要だったんだろう?ナイフじゃだめだったの?何で10歳くらいがいいって指定したんだろう?なぜ父は長子を蔑ろにしたんだろう?炎に魅せられて何を破壊したかったんだろう?なぜ(福士「彼」に限るけど)愛が無いのにキスできるんだろう?

で、再びたどり着いた突拍子もない解釈を垂れ流す!

「彼」は幼い頃、レイプ犯罪に遭った。それは10歳の夏休み。攫われ、ロープで首を絞められながら襲われた。同性愛を禁忌とするユダヤ教の敬虔な信徒である父は、息子を恥と罵った。夏休みが終わり、「私」がひさしぶりに再会した「彼」は、それまで仲の良かった優しい「彼」とは別人だった。「彼」は自分と同じ同性愛の罪を共有する相手がほしくて、「私」の相手をすることを了承する。

「彼」は過去の自分の恥を全て破壊してしまいたい。だから燃やす。窓ガラスを破壊する。他人の幸せを奪う。過去の自分と重なる弟を殺したくて、本当は自分を殺したくて、代わりに10歳の自分の代わりの子供を殺す。ロープで首を絞めるようにして、でも苦しまないように一思いに。顔を潰して、自分の身代わりにして沈めてしまう。知らない男に着いて行ってしまった馬鹿な子供は自分だけじゃないと安心する。だって過去の自分を殺した「彼」は、もうライターを弄ばない。

あのね、「私」に嵌められたと知る「99年」の「勝負の終わり」で「彼」が笑ったように見えたんですよ。「私」に背を向けたまま、またゲームが始まるって、密かに喜んでいるみたいに。その後、「私」と向き合って「まさかお前が」って怯える顔が、どうしても「彼」の演技に見えてしまってもうだめ。あ〜〜〜この人「私」の裏をかくゲーム勝手に始めてる〜〜〜!と思ってしまってもうダメ。だってユダヤ教も自殺は罪だから、死にたければ誰かに殺してもらうしかないじゃん。殺してもらうに足る理由と場所を手に入れちゃったじゃん…

というトンデモ解釈。「彼」の愛が皆無で最高。個人的には「私」を完全に玩具としてしか見ないほどに壊れている福士「彼」がいちばん恐ろしいよ!

福士「彼」の冷たい声質と、双一方通行の殴り合いが好みだったので、CDはいれまりにしました。実際はどうか知らんけど。でも頭の中で鳴ってる松柿と成福の声が上書きされてしまうのが怖くて聴けてない。プレリュードを永遠にリピってる。

 

 

「彼」の名前を呼ばない「私」

契約書の血のサインはリチャードに見えたけど自信は無い。(ちゃんと血のサインが入っていて驚いた)

「私」は一度も「彼」の名前を呼ばないんだよねえ。三人称だからってだけじゃなくて、呼びかけることもない。「私」の中には「彼」しか他者が存在しないんじゃないかってくらい、呼びかける必要性を感じてないよね。自分は名前呼ばれるの好きなくせにね。

そこらへん、実は我々も「私」に騙されていて、彼の名前を呼んでいいのは自分だけ、とか思ってそうな成河「私」。松下「私」は喪失感で名前を呼ぶのすら辛すぎるって思ってそう。それか、柿澤「彼」に名前を呼ぶのを禁じられたかどっちか。福士「彼」は「私」から何と呼ばれようと無関心そうだよね…ほんと「私」を歯牙にもかけない福士「彼」の壊れ方がすごい…

 

 

「私」の計画がいつ始まったか

松下「私」は、スリルミー初見だったこともあるけど、やっぱり殺人の話が出てから計画したと思うんですよね。倉庫に火を付けてから日に日に自分から死に近づいていく柿澤「彼」を引き留めるために、刑務所の中を選んだ感じ。お坊っちゃまで弁護士の力を信じてて、知能は高いのに思考は純粋だから「幼い」と言われてしまう。

でも成河「私」は違う。「一本のマッチが全てに火を付けたのです」の台詞は、松柿では「彼」が狂い始める火だったけど、成福では「私」の策に点いた火だったと思う!!!

 

犯罪のスリルが終わればまた「彼」に捨てられてしまうから、成河「私」は「あんなことバレたらどうする?」と煽って少しずつハイリスクな犯罪に「彼」を誘導していったんじゃないかなって。放火の翌日に部屋に行って、話し出すのは「私」なんだもの。(あそこのピアノがすごく不穏で、松柿では不安の表れだったのに、成福では「私」の企みが「彼」に忍び寄る音に聴こえてさあ大変。)

契約書の話になったのも「私」が法律を強調したからだし、契約書に「できる限りで」と付け加えたから、「彼」の指示に従わなくても、「私」は契約を破ってはいないことになる。契約の範囲内で「彼」の裏をかくことができる。と思ったらほんと最高級の狂気で震えるよね。

しかもほんとに「彼」が過去に犯罪の被害に遭っていたとしたら、「私」が代償にと望む行為は「彼」にとってはトラウマなわけでしょ。福士「彼」が「私」を受け入れるのは、父親に殴られた日とか、そういう自暴自棄なときだけだったんじゃないかなって。それを「私」が分かってないはずがないと思いません?!わざわざあのタイミングで彼を追い詰めて、トラウマを引き出して、殺人に意識を向けさせたとしたら?「彼」の犯罪のアイデアに怯えるように見えて、実は一度も否定してないんだよね、「私」。ずっと「彼」の表示を見つめてて、彼が振り返ると急に怯えた顔するの。ねえ、その顔演技じゃん!!!

「私」が演技してる最たるところが、僕の眼鏡/おとなしくしろの電話で話すところ。暗転してるとき、成河「私」が落ち着き払ってるの観た???松柿も福士誠治も、いつも闇の中でも役のままじゃん。暗転してる中で福士誠治がタイプライターの机片付けるときも、奥から出てきてジャケットを椅子に掛ける時も、福士誠治じゃなくて「彼」じゃん。舞台に上がったらずっと、「私」と「彼」として存在してるはずじゃん。自分だって冒頭で闇の中歩いてきたときもう53歳だったじゃん!!!?!?!

なのに電話の前後は全然狼狽えてない成河「私」、絶対それ演技〜〜〜〜!どうしようどうしよう、って言ってれば、「私」がボロを出さないか心配な「彼」が構ってくれるからワザと不安がってるやろそれ!!!眼鏡落として事情聴取されて、はじめて「彼」のほうから「どうだった」って話しかけられて嬉しくて、でも「もう会わない」って言われたのが誤算で、引き留めるために必死で突然「自首する」とか言い出して、あれ彼がここで離れようとしなければ完全犯罪が成立していた気配さえある。同じ「幼い」でも、純朴で綺麗すぎる松下「私」と違って、成河「私」は駄々っ子がデパートの床でゴネてるみたい。

取調室でも、彼が1人で助かるなんて言うから取引の話を持ち出して、「彼」から2人で生き延びようと言わせてる。それがとっても嬉しいのに我慢して、キスを受け入れておきながら、いつも彼にされている「欲しいものに目の前で逃げられる」をやって見せて、にやける顔を見られないように背を向けたまま「わかった」って「彼」に従ったフリをして実は勝利を確信してるんだよアレ。

でも拘置所では死にたくないという彼に辛そうに目を瞑っていて、裁判の結果だけは「私」にも賭けだったのかな。でも成河「私」がそんな同情するはずないからな…わかんないな…

 

 

スリルミー恐ろしい

台詞も歌も動作も殆ど同じ、型のあるお芝居なのに、なんでこんなに違うの?????考察の余地ありすぎじゃない???????

髑髏城の七人も過去とか動機とかかなり考察の余地がある脚本だし、実際これまで10パターン演ってるわけだけど、あれはさあ、そもそも脚本が違うじゃない?同じ脚本の月ですら、台詞も動きも立ち位置もそれぞれキャストによって多少変わったじゃない?

スリルミー、まだ2回しか観てないし過去CDもまだ聴いてないけど、あれ細かい動きもぜんぶ一緒でしょ?透過率50%くらいでレイヤー重ねたらシンクロするやつでしょ?なのになんでこんな違うのさ!!!!!こわい!また再演があったら一瞬でお金が溶けていくのが確定しててこわい…

 

さて、ようやく成福の感想も吐き出したので、そろそろCD聴こうかな…覚悟しなきゃね…こわい…スリルミー沼こわいよう…