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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

観比べスリルミー2021 松岡×山崎ペア

マチネで成河福士ペアを観た3時間後にソワレで観た松岡山崎ペアの感想エントリ。

ほんとは5/1を観てから書きたかったのだけど、そういうわけにはいかなくなったので頑張って書きます。

差分にぶん殴られましたよ!!!!!


3年前の松下柿澤ペアの、もはや朧げな記憶との比較も出てきます。みんな違ってみんな良いなあとニコニコしながら差分を楽しむエントリです。


とりあえずひとつだけ言えるのは、スリルミーでマチソワなんかするもんじゃないよ!!!!!

(体力と気力と記憶が保たない)


お巡りさん、こっちです!

なんかヤベェ人がいます!!!!!
って気持ちになった松岡私19歳。

狂気を隠す気が全く無いな?????


2018成河私の狂気だだもれ19歳も大概だったと思うんですけど、松岡私はさらに上を行くとんでもねぇ奴だった。

初見スリルミーが2018松柿ペアだったので…私ってもっと普通を装える人だと思ってたんだけど…

松岡私、絶対周りから避けられてるタイプだと思う。ちなみに松下私は話しかけられれば愛想が良くて、成河私は話しかけられても相手にしてなくて、松岡私はそもそも誰からも話しかけられない。


山崎彼と再会した瞬間からもう完全に目がイってるし、抑えきれない彼への感情が声のボリュームに出てるし、言い募る勢いがあまりにも前のめりで、まだ何も事件起こしてないのにお巡りさん呼びたくなるくらいヤバい。


歌い始めたら、憤りとか、もどかしさとか、そういう感情が声からどんどんあふれてこぼれて、オーバーフローした感情に歌声が追いついていませんが??!?!?!

歌声より声色に感情が乗る感じ、この人ストプレでもう一回観たいなあ〜!!!と思わされますが、とりあえずめっちゃ怖かった松岡私。



狂気と正気の逆転

松岡私の最大の恐ろしさ、狂気と正気の発出が、我々の感じる普通と逆だってところなんですよね…


いちばん狂気を振り乱してるのが19歳登場シーン。本来なら最も純粋で、圧倒的に彼のほうが優位であるはずの出だし。

「待ってたよ!もう来ないかと思ってた!」の勢いがもう怖い。

座席がね、あのほら、左右の一段上がってるとこ。あれの舞台下手側だったんですよね。松岡私が詰め寄ってくる延長線上にわたし。圧がすごい。

山崎彼、毎回あのテンションの松岡私に会ってよく平然としてられるな…って思った。


そんで、100分のうちいちばん安らかに、穏やかに、冷静に話すのが護送車の中なんですよね。

知ってたよ。君がそうするって分かってた。これで君は僕のもの。


いや、逆でしょ??????

ストーリー的にはここで私の狂気が明らかになって、彼が衝撃を受けるラストシーン。

私のほんとうの狂気が露見するシーンなのに、いちばん「普通」なの怖すぎる!!!

えっ、なに?どういうこと?ストーリーも展開も歌詞まで知ってるのに大混乱ですよ。

松岡私、なんでそんなことに???


私って、総じて情緒不安定ぎみ(に見せてる)だけど、松岡私、感情の振れ幅が大きすぎて、こっちはもう身を任せてぶん回されることしかできない…

マチネで観た「成河私に出会ってしまった福士彼」も相当かわいそうだったけど、「松岡私に気に入られてしまった山崎彼」は本当に不憫。



山崎彼があまりにも19歳

そんな山崎彼。キャスト陣の中で唯一ノーマークだった山崎彼、クリーンヒットです!

等身大の19歳感がめっっっちゃよかったんですよ…

ほんとに…いい具合にイキってて、いい具合にプライドが高くて、いい具合に未熟で…(全部ほめてる)


完璧な「超人」の彼ではなくて、「超人」という概念を利用してわがままを通そうとしているというか、そこに見える幼さというか、なんかとにかく等身大だった…


知ってる?「死にたくない」のあと、後ろ向いて三角座りする山崎彼、左腕を口に押しつけて、声を殺してずっと泣いてるんですよ。暗闇の中で。


プライドが高くて知能が高くてトラウマを抱えた自信家な男がボロボロになるのに弱い。

福士彼より柿澤彼が好みだったのも同じ理由だったな。

完璧っていうより自信家な彼の方が好みです。とか言ってるけど、新納彼を観たわたし、生きてますか…?(執筆時はもうにろまり観劇後です)



几帳面か神経質か?

マチソワで実感した各ペアの比較をひとつ!基本的にみんな違ってみんな良い精神だよ!

あのね、まずね、マチソワでぶん殴られた差分、成河私は几帳面で、松岡私は神経質なのがめちゃくちゃ刺さりました!


成河私はバードウォッチングのメモの取り方も、メガネの掛け方も、座った時の足の揃え方も、すごく几帳面。

キッチリ、キッチリしてる。靴脱いだら福士彼の分までキッチリ踵から爪先までピシッと揃えて並べてあげそうな感じ。ついでに泥汚れも拭いてあげる。

とはいえ福士彼も、リュックにロープとかハンマーとか仕舞うときにキッチリ仕舞ってたのでわりと几帳面だと思います。成河私が揃えるって分かってるからわざと揃えないだけで、靴も綺麗に脱ぐ。


松岡私は、わりと大雑把なんですよね実は!でもめちゃくちゃ神経質。イライラしてそう。バードウォッチングの時、めちゃくちゃ右肩上がりの字を書いてそうな感じ。(成河私はキッチリ四角い教科書みたいな字を書く)

靴は2人分、床のタイルの目地に合わせて揃えようとするんだけど、綺麗に揃える前に彼に意識を持っていかれて中途半端に踵とか揃ってない感じ。

そんで山崎彼は見たまんま雑なのがいいぞ!ロープとか適当に突っ込む感じ、とてもいいぞ!!!!!


ちなみに2018の松下私は几帳面というより優等生だった。「きちんと育てられた、いいとこの坊ちゃん」感がすごい。

柿澤彼もいいとこの坊ちゃんなので、そんなに雑じゃないけど松下私ほどでは無いって感じ。ここは2人とも靴はちゃんと自分で綺麗に揃えそう。


ねえ、この勢いで田代新納ペアも書いていいですか?

無頓着な田代私とていねいな新納彼という新しい組み合わせを知ってしまったわたし、ちょっとしばらく立ち直れない。

ここはあれだよ、2人とも自分で揃えるけど、新納彼のほうが綺麗にピシッと揃ってるやつだよ。身だしなみにめちゃくちゃ気を遣う新納彼…もうむりだ。(にろまり分のレポでちゃんと書きたい)



99年は必然

松山ペアを観て知った1番の衝撃が成福ペアの特異性だって話をします!!!!

っていうか成河私の特異性かもしれない。

マッチを取り出すタイミングと、ハンカチを差し出すタイミングが天才なんですよホントに。


19歳冒頭、公園での再会時にに「火持ってるか?」って言われるやつ、松岡私も田代私も、彼が持ってない素振りをしはじめた途端スッとマッチ出すんですよね。

それだけでもう、わかるじゃん。十分じゃん。


成河私は彼が煙草を出す瞬間からもうマッチ差し出してるんですよ。彼がマッチ持ってないことすら予測してる。

だからあのマッチ差し出すシーン、成河私だけめちゃくちゃ「待ち」の時間が長いんですよね…


そんで契約書に血のサインをしたときはさ、私ってハンカチで拭くじゃん指。

成河私だけ当たり前のようにピッタリのタイミングでサインし終わった彼にハンカチを差し出すし、彼も当たり前のようにそのハンカチで指を拭く…

成河私と福士彼にとってはあまりにも自然なやりとり。私と彼との日常。なぜ他のペアには無いんだ…


でもこれ、つまり、福士彼が気付いていないだけで、成河私は最初から常に彼の一歩先を歩いてるんですよね。

成河福士ペアの99年は必然なの…最初から明示されてる…


なのに松岡私が護送車で「普通」「当たり前」の姿で穏やかな微笑みを見せつけてくるもんだから、ウワー!おまえたちの99年も必然だー!!!!と暴れ出したい気持ちになる。



生の暴走、若さの暴走

松岡山崎ペアの話に戻りますわよ。

成河福士ペアのキャッチコピー「資本主義の病」が「ほんまそれ」すぎて、松岡山崎ペアもキャッチコピーに思いを馳せながら観ました。

このペアだけさあ、2つあるじゃん。山崎彼の「生の暴走」と、松岡私の「若さの暴走」がダブルコンボ決まってしまったから、あんなことになったのでは?と思いました。


山崎彼にとってニーチェの思想は信念でもなんでもなくて、遊んでた女の子たちと一緒、手段の一つにしか過ぎない。

女の子にこんなに求められている。弟よりも、自分のほうが価値がある。

自分は超人だ。弟よりも優れている。でも超人は社会の枠で測れないから、この社会で認められないのも仕方がない。


自分が弟よりも優れているのだという正当性を示すために、超人思想に、藁にもすがる思いで掴んでるんですよ…

そうしないと居場所を失って壊れてしまうから。


他ペアの「彼」たちは、最終的にたどり着いたニーチェに「答え」を見出した感じなんですよね。求めていたのはこれだ!ってピッタリはまった感じ。

でも山崎彼はなんか違う。どこか、こじつけてる感じ。必死なの。19歳の山崎彼、幼くて、浅はかで、あの家で生きていくのに必死なんですよ。

めちゃくちゃ推せる。


がむしゃらに生きていただけの山崎彼、ほんと、暴走してしまっただけで、山崎彼にとって99年はぜんぜん必然じゃなかったんだよ…


はい、99年を必然にしてしまったのは松岡私ですね!!!

必死に生き残る術を探してもがいている彼の隣で、そんな事情はお構いなしに自分の欲望を満たしに行く松岡私。怖いよ。


山崎彼が必死でしがみついている居場所を、その存在まるごと奪って自分のものにしてしまった。

弟は生きていて、自分は犯罪者となり、完全犯罪すら成し遂げられなかった「超人ではない彼」は、もう二度と自分の居場所を手に入れられない。

しかも追い討ちをかけるように「私こそが超人」でしょ?絶望しかないよね…


松岡私には山崎彼の「生の暴走」がきっと見えていなくて、そんなに必死だと思ってないんだろうな。彼がそう見せてないから。

だから、褒めてもらいたくて、こっちを向いて欲しくて、自分の凄さを認めて欲しくてネタばらしする。

ほんと、若気の至りだよね…あれ黙ってれば、彼ももう少し生きてたんじゃないかしら…とさえ思う。


いちばん実年齢が役に近いペア、やっぱりリアリティのある、というか、生々しい芝居にはまた違った面白さがあるなと思いました。若いってすごい。

とか言いながら、45歳ペアを見た未来の自分、生きていますか???(にろまりエントリへ続く)



お話しします できる限り

みんな違ってみんな良い精神のスリルミーレポ。

ちょっと成河福士ペア成分が多かった気がしますが、松岡山崎ペアめちゃくちゃ良かったし何回でも浴びたい。


そろそろ記憶が薄れてきますので、はやく最後のペアまでちゃんと仕上げなくてはなりませんね!

個人的にめちゃくちゃ衝撃を受けたにろまりペアの話、残しておきたいのでがんばります。できる限りで。