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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

舞踊の感想を言語化するという挑戦【劇団朱雀 祭宴】

復活公演の岐阜で「これはつまり、ゆっくんの舞踊が好きだな???」と知ってから観るたびに脳がじゅわじゅわに蕩け続けているわけですが、舞踊の感想をレポに残せない問題をそろそろ解決したいなって…

これまで視覚情報として受信したまま、絵も描けなきゃ言語化もできずにいた自分なりの舞踊の感想と「何が好きなのか」を、初めてテキスト化してみようという試みです。優しく見守っていてほしい。


祭宴序盤3公演めちゃくちゃ良かったのにあんまり溶けず、Twitterでダンス有識者のツイートに邂逅して、28日昼公演でぐちゃぐちゃになって、東京千穐楽で答え合わせした、自分の中のいまの舞踊の好みと認識を書きました。基本的に「みんな違ってみんな好き」と「ホンマかどうか知らんけど」が大前提にある。


脚運びの話

これはゆっくんと同じように脳がじゅわじゅわ溶ける巳之助さんの舞踊にも同じことを感じているから脳がどれだけじゅわじゅわに溶けてても自信を持って言えるんだけど、片足を上げても、飛んでも、回っても、どの瞬間に「ストップ!」って止めてもその瞬間の体勢で静止できそうな脚運びが好き。

つまり、片足を上げるか、飛ぶか、回るか、とにかく不安定な体勢のはずなのにむちゃくちゃ安定しているのが死ぬほど好き。

またしたなの走る振りのとこ、そんなに頭の位置が動かないのはバグだろ?!って思うし、いろんな写真で切り取られたゆっくんの舞踊を見ると、何で軸足その方向に向いてんのに脚そんなに上がってて上体がそんな真っ直ぐ前向いてられんの?!みたいになってることが多い。そんで地面に着いてる軸足が完全に自重を芯で支えている感じがしてそれがほんとうにすき。


祭宴のゆっくん舞踊であんまり脳がじゅわじゅわしてないのは、まずシンプルに裾幅の広い衣装が多くて脚運びが見えづらいってのと、曲のテンポが早くて目が追いついてないのと、足を振り上げたり片足だけで身体を支えたりする瞬間が少ないんじゃなかろうか。知らんけど。

28日に突然ぐちゃぐちゃになれたのは「衣装で脚運びが見えづらい」ということを自覚して観たからです。あと、ようやく邂逅できたダンス有識者のツイートで、ターンの軸と姿勢と筋肉の知識を齧ったのが大きい。そう、ほんと、お出しされるものに対応できる受容体を用意するって大切。教養があればあるほど、知識があればあるほど、興味があればあるほど受容体って増えるから、オタクは学び続けないといけないなと思いました。


縦軸と横軸の話

基本的に三部の後半で必ず兄弟で並ばれるので比較せざるを得ないんですけど、太一さんは横軸だけどゆっくんは縦軸みたいなとこない?

日舞も身体の仕組みも何にも知らねえのでマジで戯言でしかないんですけど、太一さんは背筋?肩甲骨?のあたりを使ってグッと肩を開いた、その逆三角形の上辺っていうかさ、右肩から左肩を結んだその肩線に軸があるような感じ。右肩が下がってれば左肩は上がってる。左右に揺れる振り付けがとっても映える。

対してゆっくんは縦軸を持ってて、上下とか回転の方が映える気がしてる。地面から頭の先まで、踵の上に腰が乗って胴が乗って頭が乗って、全部のパーツの重力が縦軸を通って支えてますって感じがすき。どんなに脚を動かしても腕を動かしても胸・胴・腰が縦軸で整ってる感じがある。っていうかむしろ面なのでは?

例えば手を挙げるとき、太一さんは肩軸を動かすから、逆の肩が下がって腰が下がって膝が緩んで、って全身に動きが波及するのに対して、ゆっくんは胴から肩までの部分が面で固定されてて、その面を支えにして挙げた腕が乗るってイメージ。もちろん連動もさせられるけど、手足の動きの反動を胴で吸収しちゃえる感じっていうか…(よく分かんなくなってきた)

全然わかんないけど、男性の着物姿って肩も腰も幅があるほうがキマる気がしているから、上半身を広く見せる魅せ方とか関係あるのかなあ。太一さんは女形で胸を張ってるはずだからそれに関係するのかなあ。とか思い始めるとちゃんと日舞を勉強したくなってしまいますね。

これと関係あるか自信ないけど、Shake Hipの「my mind my my…」のとこ、手と胸を左右に動かす振りのとこ、ゆっくんめちゃくちゃ苦手そうですよね。いつも半拍遅れる。自分がダンスできない民なので検証もできないけど、肩と胸とをわりと柔軟に動かすっぽいのでボディを面として重心取ってると動かしにくいのかな?って思ってる。まあ、ちょっとサボってるだけの可能性も余裕でありますけど…

復活も幕引きもShake Hipはゆるゆるだったので、今回はじめてゆっくんの「ガチShake Hip」を観て衝撃を受けた。めっちゃ踊るじゃん…めっちゃ踊るのに「my my」のとこ遅れるじゃん…(ちなみにここで軽く曲げたゆびがめっっっっっちゃすき)

っていうかほんとゆっくんが踊り始めるとゆっくんしか観れてないから他のダンサーやら殺陣組やらとの比較が全く出来なくてわろてる。己の観たいものしか観てない客でごめんな…主演の女で三人並んでてもぺこ熊ぜんぜん観てない…映像…頼む…


キメのタイミングの話

ゆっくんが顔を残して振り返るのがめちゃくちゃすき、というフォロワー大先輩のつぶやきに首がもげそうなくらい頷いたんですけど、日舞とか主演の女とかで見得の後に顔を残して振り返りながら遠ざかっていくの、ほんとうに脳がぐじゃぐじゃに溶ける。たいてい片脚をひょいと持ち上げながら振り返っていくから余計にじゅわじゅわになる。

ゆっくんの芝居でも殺陣でもわりとそう感じてるんですけど、直前までしれっとしてるのに、見得とかキメとかスタートとかのタイミングで突然バチッと完成された体勢に重心を置きにくる気がしています。そんでその後の余韻がすごい。「今!」ってキメてから「今!」が終わるまでが長いっていうか、「今!」の間にわりと動くっていうか… 見得っていうかサビって感じ。例の「振り返り」もこのサビの間に行われる動きだから、あの振り返りはもうずっとピークなんですよ。最初にキメた身体の軸のロックを下から順に外していって、最後に頭だけ残ってるイメージです。

主演の女の中盤でようこそって手をくるくるして踊り始める時も、手を挙げたタイミングで「今!」が始まって、頭を下げる瞬間まで「今!」が続く。あそこは手を挙げた瞬間に、腰が乗って胴が乗って頭が乗った軸に支えられたキメの姿勢が完成しているので…いくら手が動こうがあれはずっとピーク。

逆に太一さんは「今!」ってタイミングで自分も舞台も背景も照明もぜんぶ含めて絵画みたいに綺麗なシルエットを見せるために、ワンテンポ前に向かって盛り上げて一旦キメて、そこから「今!」でもう1段階仕上げに行く感じだと思ってます。

どれだけ文章化しても伝わる気がしないので、死ぬほどわかりにくい手書きのグラフも載せてみる。青が太一さんで緑がゆっくん 。縦軸がキメのテンションっぽいやつで横軸が時間。真ん中の縦線が「今!」のタイミングです。何となくのニュアンスだ。伝われ。

「今!」のワンテンポ前にピークを持ってくる太一さんと、「今!」に入る寸前に目線をピッて正面に向けてからからその後しばらくずっとピークのゆっくん。って感じです、知らんけど。

ゆっくんはShake Hipとか槍とかも、フッて息を吐いたらその瞬間から突然ぐわっと集中モードに入るんですよね。スイッチ入れてからトップギアに入るまでが短いっていうか、助走が短いっていうか。

太一さんはちょっと、ずっと限界超えてる感じがするからよくわかんないけど…キメの後にいったんストンと落とす「静」の時間が無いと、あのひともしかしてずっと上げっぱなしなんじゃないの…知らんけど…


腹筋と背筋と重心の話

28日に「太一さんが背筋でゆっくんが腹筋」って忘れないようにツイートしてたんですけど、千穐楽で紫のゆかり観るまで忘れてた。仰ぎ見る姿勢の話です。

立ったまま上を見上げるとき、刀の先を床に付けて半円を描きながらちょっと反る振りのとき、背中合わせで座ったまま手を後ろに差し出すとき、太一さんは骨盤を前に倒して背筋で反ってる感じするけど、ゆっくんは腹筋で上体を倒してる。それ、反ってないよね???(SUKI)

太一さんはわりとしっかり背筋使って「反ってる」感じがするし、そうするとどうしても頭の重さが後ろへ行ってしまうけど、頭を使った重心のコントロールが上手いのでスムーズに戻って来られるんだろうなーと思って観てます。槍を回す時は遠心力と逆のリズムで頭の位置を動かして相殺してる感じがゆっくんよりも強い。

そう、太一さんは基本的に頭と膝で重心のバランスを取っているような気がします。女形ってたぶん髪とか髪飾りとか帯とか、後ろに垂れているものを美しく見せるために上体を後ろへ反らして、そのぶん膝を前へ出すことで重心のバランスを取ってる(ダンサーズは膝を前に出さなくても上体を反る姿勢が取れてしまうスキルがあるから逆に違和感が出る)んだと思うんですよね。

それってたぶんどっちかっていうと爪先に重心が乗るのでその瞬間「ストップ!」って言っても同じ姿勢では止まれないけど、流れるように重心移動できるから安定感はある、みたいな…

あ、だからワンテンポ手前に向けて重心を一旦安定させてから「今!」って見せ場の「静」に入るのかもしれない。


ゆっくんは腹筋、っていうか腹の下の方、身体の中心に重心が常にあるようにコントロールしてるイメージです。太一さんの重心の置き方が「動」で、ゆっくんの重心は「静」って感じ。いつもそこにある。

「腹の下の方」ってのが分かりにくすぎて調べてみたら「丹田」っていう名前があるらしい……それどっかのフォロワーのツイートで見たな???叡智の集まるTL…勉強になります…

とにかくその丹田が全ての起点になっていて、丹田から上半身に縦軸があって、上体を倒そうが手を回そうが脚を振り回そうが、身体の中心にいつでも戻って来られるうな重心の置き方、好き…槍回す時も、腹筋で自分の縦軸を重心の上に固定して遠心力に耐えてる…気がする。

私のだいすきな脚運びもたぶんこの辺に関係しているっぽいなと踏んでいて、「脚を上げる」「膝を持ち上げる」んじゃなくて「腹筋使って腰から太腿の筋肉を引き上げる」って感じの動き。脚の付け根じゃなくて丹田から動かしてる感。自分で脚を動かしてみて感じたことなんですけどこれ以上の言語化はできる気がしない…


首の位置の話

振りの中では太一さんのほうがしっかり反るのに、ラストのシルエット決めるところでは絶対にゆっくんが上見てて太一さんが俯くの、あれは打ち合わせ無しでああなってるんですかね?

中合わせで刀をおさめるところも、榊を床に置いて膝をつくところも、ラストの扇子閉じるところも、ぜんぶ、ゆっくんはわりと真っ直ぐ前か、上に目線を置いてることが多くて、太一さんはほぼ下を向いている。まあそれ以上でも以下でもないただの事実確認なんですけど…


書き残しておきたいのはHa Na Biのラスト、全員前に出て一列でポージング決めるところのゆっくんの横顔キメが好きすぎて、脳がパァン!と弾けるのでなんにも覚えてないって話なんですよね。衣装も好きだし顔のそばに添えられたゆびも含めて完璧すぎた。まじであの瞬間のブロマイドくれ。

なんか、あの、全然覚えてないけど、日舞の立ちでは絶対にやらない首の角度じゃなかったですか?あれなに?とにかくなんにも覚えてないのよ。日テレプラスの録画を実家に頼んだので現物が届くまでのタイムラグがつらい。

いままで見てきたゆっくんの見得って、とくに日舞では少しだけ俯き加減のところから鋭い視線で見上げるようにキメにくることが多かったし、三部は兄貴と背中合わせだと上向くくせに正面向いてる時はほぼ俯いているひとって認識だったので、Ha Na Biはそういう意味でもなんか言葉にならない衝撃を生みました。とにかく早く映像で観たい。


未来の自分のために

舞踊で感じたことを言語化しようの試み、なんとかいま言いたいことは書いた気がする。たぶん。おそらく。なんか出てきたらぽろぽろ追記するかもしれません。

舞踊ってほんといままで感想を咀嚼して出力する方法がわからなくて、この人の舞踊がすきとか、あの振りがすきとか、この衣装がすきとか、あのゆびがやばいとか、とにかく出てきた素材を丸呑みするしかなかったのを、なぜ好きなのか、どこが好きなのか、どこが好みじゃなかったのか、咀嚼する手がかりを初めて見つけられたのがほんとうに嬉しい。ありがとうフォロワー…歌舞伎の舞踊演目もきっと解像度上がるよこれ…うれしい…

東京は終わってしまったけれど、まだまだ始まったばかりの劇団朱雀 祭宴、Hulu配信が発表されて、これはマジで門戸を広げにかかっているなと感じて楽しくなってきた。

東京公演おつかれさまでした!
沖縄まで全員怪我なく騒ぎ続けられますように!