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気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

半日で書き殴ったフランケンシュタイン初見感想【かきこに】

2月23日、にちようび、大阪前楽。

東京公演期間に狂ったように荒れていたタイムラインがずいぶん落ち着いた今頃、ようやく、フランケンシュタイン初見です。かきこに回です。

混乱と絶望が渦巻くこの頭の中を、どう文字にすればいいやらわかりませんが、そんなのはいつものことなので、がんばって書きます。

いつもどおり勝手な解釈しかない!!!ので優しい人だけ聞いてください。





アンリ、アンリ、置いていかないで

ねえお願いアンリ、わたしを置いていかないで。


そんな気分になった観劇後のわたし。言ってることの意味はあんまりよくわかってない。でもアンリが私を置いて行ってしまったと思ったんです、確かに。

正直、2幕の途中までは「あー、今日だけでもいいかも」とか思ってたんですよ。満足していた。

でも最後の最後、アンリが「ビクター」と呼んだ瞬間に、絶対に千穐楽も観ようと決意したよね。


ねえ、北極にいたのは、

泣くように歌った彼は、

「ビクター」と残酷に呼んだのは、

あれは確かにアンリだったよね?


ちょっとまだ解釈もぐもぐ咀嚼してる最中だから中途半端なんですけど、ねえ、あの瞬間アンリはようやく、遂に、ビクターを置いて本当に行ってしまったんでしょう?


アンリの記憶は無いと言った怪物が

アンリの記憶を以って語る北極の歌

復讐をしにきたと言った怪物が

ビクターに来いと言った安寧の地


アンリは最後まで優しくて残酷だった。

わたしはね、もう一度アンリに会いたくて、会いたくて会いたくて仕方がないんですよ。



ビクターとアンリは分かり合えない

前評判どおり、まじで本当に救いのないおはなしでした。(ほめてる)

かきこにペア、ほんとうは弱くて脆い孤独なビクターと、正論で絶望を振り撒く独り善がりな確信犯アンリ、相性最悪の鬱ルートだった。(ほめてる)

(大好物ですありがとう。)


ビクターとアンリ、1幕でどんどん理解し合って、部下からパートナーへ、友から親友へ、お互いの距離を縮めていくけど、結局いちばん根本のところで分かり合えてなかったんだなと思いました。


アンリの目指した「死体の再利用」は、確かに自然の摂理に反する「神への冒涜」だったけれど、決して「死者の復活」では無かった。

生命科学として、死んだモノを使って新しい命を生み出す「創造」だった。


でもビクターの「生命創造」は最初から最後まで「よみがえり」でしかない。

愛する人を、喪ったあの人を、この世に呼び戻す禁忌を犯す。何度でも。それはまさしく「神への冒涜」だった。


幼いビクターは大人たちから禁忌を責められ、美しい言葉で着飾ることを覚えたと思うんです。「よみがえり」を願う実験に、「未来」を語るもっともらしい大義を掲げて。

アンリは戦争の中で、ビクターが掲げるその大義に、美しい理想に同調したでしょう。

でもビクターが本当に望んでいたのは「よみがえり」だった。それを知らず、アンリは自分の命を捧げてしまう。それが研究のためになると信じたまま。


怪物が生まれたとき、アンリの目指した「創造」は成功した。アンリが命を賭けてまでビクターに託した研究は実り、実験は成功した。新しい命は確かにそこに生まれたのだから。

だけど、ビクターにとってそれは「失敗」だった。ビクターが望んだのは新しい命ではなく、「アンリの復活」だったから。

生まれた怪物を、ビクターは拒絶し、殺そうとした。それはつまり、アンリを拒絶したということ。だから怪物は、怪物になってしまった。


お互いを最も理解しているのに、常にすれ違い続けるビクターとアンリ。

哀しすぎる…



最後にビクターを救ったアンリ

でもね、わたしは最後に結局アンリがビクターを救ったと思ったんですよ。アンリは確信犯なので結末は絶望なんですけど、アンリは確かに救ったつもりなんだよ、きっと。知らんけど。


アンリの復活に失敗して3年。

ビクターは反省して、現実と折り合いをつけて、ジュリアと結婚を許されるところまで叔父と和解してるわけじゃないですか。


それなのにビクターは、怪物の策略で姉が死んでしまったとき、やっぱりエレンを生き返らせようとしてしまうんですよね。

アンリで手痛く失敗したのに、また。


怪物はきっと分かってるんですよね、ビクターがエレンをよみがえらせようとすること。だから城の実験室を破壊しておいたわけでしょう。

ビクターが二度と間違いを起こさないように。


ここからは、ほんとに誰かに怒られそうだなと思いながら書くんですけど。

ビクターの孤独を生んだのは、エレンとジュリアだったと思ってるんですよね、わたし。

母の死や近しい者の死と正面から向き合えずに「よみがえり」へ逃げてしまったビクターに「それでいい」と赦しを与えてしまう存在だから。

亡き人にお別れを言えない子に、死を認められない禁忌の子に育ってしまったのは、彼女たちのせいだと思うんです。


だから、アンリは彼女たちを殺したのだと。ビクターが、よみがえりの呪縛から逃れられるように。


彼が蘇らせたいと願う人を先に消してしまって

「よみがえり」を認めてくれる人も殺して

その代わりビクターを非難する人も誰もいない

安寧の地、北極でふたりきり。


そう、アンリはビクターを北極に招くんですよ…

カトリーヌと語った、人間の居ない平和な地へ。


怪物はビクターを殺すこともできたのに

ビクターに殺されることを選んだ

ビクターが今度こそちゃんと

アンリにお別れを言うことができるように。


ちょっとだいふ泣きながら観てたシーンなので7割くらい捏造してると思うんですけど、怪物が「ビクター」と呼ぶ声があまりにも優しくて、まるで酒場でアンリが「仕方ないな」とビクターの世話を焼いたときみたいな。なんかそんな優しさを感じて。


怪物がビクターに告げる「ひとりだ」という宣告も、かつて姉が留学するビクターに「ひとりよ」と言い含めたみたいな、「しっかりしなさい」と諭すみたいな、そんな言葉に感じた。

「ひとりだ」ということは「もう自分は生き返らない」ということ。

人間が誰もいない北極で、 ようやくビクターは生き返らせずに死者に別れを告げることを覚えたんだと思ったんです。

あらゆる痛みと引き換えに。


アンリ怪物は優しく諭したつもりかもしれないけど、ビクターの傷が深すぎるので結論は絶望です。ビクター、あのあと生きて戻れるのかな…いや、戻りはするんだろうな…戻るけど抜け殻なんだろうな…

どう転んでも鬱エンド…(すき)


このあたりまじで記憶が定かではないから、ほんともう9割くらい捏造だと思うけど…



アンリの痛み

怪物がビクターに「俺の痛みをお前にも」「大切なものを奪ってやる」と言うのがずっと噛み砕けずにいます。

怪物は、ビクターのせいで何を奪われたんだろうって。怪物は「生まれたことが苦しみ」ならば、ビクターの大切な人の命を奪うのは何故なんだろうって。


それはもしかしたら、ビクターにお別れを言ってもらえなかったからかもしれないなってボンヤリ思ってる。

このへんはあんまり噛み砕けてないので結論も論理性もない。噛み砕く時間がないので!!!(あと数時間で大千穐楽が始まってしまう)ただの感覚値でとりあえず書き残しておく。


アンリには親が居なくて、ビクターという友が全てだった。その友のために命を捧げたのに、友は捧げた命を喜んではくれなかった。

斬首台で、死を恐れる自分を奮い立たせるように歯を食いしばったアンリは、

自分が罪を被ることこそが、ビクターにとって100%正しいと信じて疑わないアンリは、

「アンリの復活」を願ったビクターの元で蘇ったあの瞬間、ビクターに裏切られてしまったんじゃないかなあ。


アンリはビクターに、自分の死を糧にして進んでいってほしかった。

ビクターはアンリの死に立ち止まってしまった。


ひとりぼっちで、ちゃんと葬ってもらえもせず、怪物が生きている限りビクターはアンリを悼むことはない。

生きてもいなけりゃ死んでもいない。

そんな中途半端な存在。

(あれ?どこの偽義経???)

うん、やめよう、この項はここでやめよう。



ビクターの話をしよう

結局ここまでアンリの話しかできていないので、ビクターの話をしましょう!!!

わたし、坊ちゃんって呼ばれる立場の不遜なかっきーが、だんだん弱っていくのが、とってもだいすき!(参考資料:スリルミー)

アンリの牢で泣き崩れるかっきーが、とってもだいすき…ホント…ご馳走様でした…

ちょっと何が好きなのかまだ咀嚼できてないんだけど、とにかく「すき…」ってなるから、これはもう好みなんだよな。すきです。


ビクターは「人とは違う」「天才」と言われ続けて、普通の人間とは違う何か別の存在に押し上げられてしまったけど、かっきービクター自身はちっぽけな「人間」以外の何者でもなかった。

(中川さん実は観たことないけど、たぶんあのひとは全然違うアプローチなんだろうなという予感だけはしている。)


かきビクターにとって、こにアンリだけが自分を「人間」として扱ってくれた。

友として。親友として。

初めて同じ目線で会話ができるひと。

呑んだくれるビクターを「天才の悩み」と別格に押し上げることもせずに、一緒に呑んでくれるひと。

喪って、失敗して、壊されて、それでも殺すことを躊躇ってしまうひと。


人間が誰もいない北極で、ビクターはちゃんとアンリにお別れとありかとうを言えたかな。

ビクター、弱くて未熟で寂しがりやで、すぐにヨシヨシしてあげたくなっちゃう。

大丈夫よ、大丈夫、いい子ね…



ここでタイムリミット

何も書けてないけど、わたしはもう梅田芸術劇場に来てしまった。大阪千穐楽です!!!

ダブルキャストがリンクしてる話とか、舞台セットの話とか、書きたいことは山ほどあるけど、何も書けてねえ。


とにかくかきこに回は、こにアンリがわたしの情緒を全部持って行っちゃったから、わたしはかきビクターを甘やかすことしかできなかった。

ありがとうDVDのある世界。


別ジャンルのエントリとかプレゼン資料とか重なってたから、昨日の終演後から「締切前かな?」ってくらい追われるようにいろいろ書いた。疲れた。

でも今日観たらどうせもう一本エントリ増えるんだろ。知ってる。


ということで…満身創痍で千穐楽行ってきます…