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【考察】月天蘭は遅すぎたの…って泣いてる話【髑髏城の七人 Season月】

 12月半ばに上弦→下弦と観たっきりだけど、ずっと書きあげきれずにいる天蘭考察をライビュ前になんとか!な気持ちで殴り書き。

頭から思いっきりネタバレです。あと、かなり偏った解釈入ってるので、ご容赦いただける人だけ、よければお付き合いください…

全編勝手な想像です。

 

捨天蘭のチビ時代

「俺たちは身も心も殿に捧げていた」って捨之介の台詞、今回ちょっと違和感を感じていて。

ワカで小栗捨がこの台詞を吐いた時、遠くを見て過去を思い出す横顔がすごくまぶしくて、そこから戻ってきた絶望の表情に、ああこのひとの心は8年前、殿と一緒に死んだんだなって感じました。

アカとか鳥はいいんですよ。あのひとたち自分を持ってるオッサンだから。風も懐の広い捨之介で違和感がなかった。

でも月はさ、あんなに一生懸命でまっすぐな捨之介が、あんなに夢中だった信長を捨てて8年、どうしてこんなに明るく生きてこられたんだろう?って。

 

先輩方のレポでも既出ですけど、きっと月髑髏の捨之介は身も心も捧げる"ように"仕えていただけなんですよね。

一人だけ小姓じゃないし、殿と直接やりとりしていない(天魔王が繋ぎの役目)し、でも忍びには見えないし、殿との距離を感じる。月捨は影武者でも地に潜る忍びでも、信長が野に放った間者でもなく、本当に普通の青年で、普通に暮らして、その等身大の市井の人々の様子を信長に伝える役割だったのかなって。(勝手な想像)

 

でもね、それに対して、天蘭は本当に「身も心も」捧げていたんだと思うんです。

 

蘭兵衛については初期設定が女性なんだから言わずもがな、月髑髏の廣瀬蘭も三浦蘭も、大切に可愛がられていただろうなって。

殿は蘭丸を褒めて、愛でて、可愛がって、きっと忠臣に見せびらかして、与えた課題を期待通りにこなす蘭丸を見て、きっと優しい笑顔で微笑んでいた…蘭はそんな殿が大好きで一緒にいたくて、殿もそれがわかってたから「どこまでも生き延びろ」とわざわざ命じたのよね。そうしないと彼は後を追ってしまうから。

 

対して天魔王は逆に、人前には出さず、笑いかけることもなく、とにかくスパルタ的に厳しく育てられたと思う。(完全なる想像)

たとえば孤児だったとか、そういうところから信長に見込まれて密かに小姓として取り立てられて、殿の意向を忠実に実行する分身として生きていた…とかどうですかみなさま??

天魔王という名前も、もともと彼の異名だったのかも。殿の機嫌を損ねた家臣のところへ安土城天守閣という第六天から遣わされた、殿の意思を継ぐ者。昔から彼はそう生きてきたのかもしれないなって。ガキのくせに超冷徹に制裁与えて「我の言葉は殿の言葉と思え」って、絶対言ってた。(勝手な想像)

天魔王は「いかに信長らしくあるか」が存在意義だったと思うんですよ。蘭丸とは違う意味で、分身として身も心も捧げてた。

 

「身も心も捧げた」ってことは、「自分」は殿のために存在していて、殿がいなきゃ存在意義なんて無いんですよね。

 

信長が天魔王に蘭丸への伝言を伝えたのは、天魔王が「信長の分身」以外の生き方は出来ないと知っていたから…

信長の分身として生きた天魔王と、信長の側で生きたいと願う蘭丸を引き合わせることで、自分が居なくなった世界を、ふたりで生きていってほしかったんじゃないかな…

 

そう、口説くのがさ、遅すぎたよ天魔王…!

 

8年前にちゃんと会ってれば、蘭丸とふたりで生きてこられたんじゃないの?!!安土城踊ってる場合じゃないよ!!!

信長の誤算は、天魔王が本当は"天魔王"ではなく、ただ愛されなかった"人の子"で、素直に伝言を蘭丸に伝えられなかったことなのかもしれないなって…

 

 

生きる理由を失った天魔王

身も心も捧げた殿を失い、殿が遺した「蘭と生きる」という選択肢も選べなかった天魔王。

「自分」を持たず、殿のようだと認めてくれる他人もおらず、アイデンティティの完全なる崩壊ですよね。まさに亡霊、天魔の御霊なわけです…(何度でも言うけど完全なる想像)

 

信長の分身でしかない天魔王は、信長が世の中から忘れられた瞬間に誰でもない存在になってしまう。本当に生きる意味を失ってしまいます。だから、自分が信長をこの世に留めるしかない。

それぞれ過去を再現することで信長をこの世に再来させてるって考えたら (あれ?死んだ人を再生する?プレイヤー?演目違い…)あの全く違う天魔王像もどうにか共通点を見つけられる気がしないでもない…こともない…笑

 

下弦の鈴木天魔王は青年期。さとみ生駒たんを心酔させる「信長の分身」としての狂気を演じきる頃の天魔王。

上弦の早乙女天魔王は、殿の冷徹さを真似ることを覚えはじめた幼いあの頃。うまくとのみたいにできたら、みんなにほめてもらえるんだ。まだカナコ生駒ママに甘える無邪気さも残っているチビ天魔王の再現。

 

天魔王ちゃん、再現することでしか「自分」でいられないから…

だから、蘭兵衛を意のままに従えて、捨之介を「使う」立場に立って、まさに信長を再現していたあの2幕の短い時間は、彼にとって自分らしさの境地以外の何物でもないと思うの。エゲレスからの手紙が来ても、まだ彼はとても楽しそうだったもの。

そして世間からも「天魔の御霊」だと認知されたから、躊躇いなく生駒を斬り、蘭兵衛を斬る。もう彼らがいなくても「信長の生まれ変わり」として生きていけるから。天魔の鎧がある限り。

 

そんな最後のアイデンティティを最高の笑顔で剥ぎ取っていく捨之介ちゃん…まじで鬼畜っ…!

 

って書いてて気付いたんですけど、全てを失った天魔王は、ずっと脱ぐことができなかった信長の分身=「天魔王」の名を、最期に脱ぎ捨てていくんですね…!?!!

え?どういうこと?自分から全てを奪った捨之介に、自力では脱げない「天魔王」という鎧を着せて復讐したかったのか…それともほんとはずっと重くて苦しかったのかな?脱ぐことができて救われたのかな?(天魔王救済ルートを永遠に探すマン)

ほんっと霧ちゃんは2回も捨之介を鎧から救い出してくれて優秀すぎ尊い

 

もう一度言います。全部勝手な想像です。 

 

 

死ぬ理由を失った蘭兵衛

蘭丸は、特に罪深い下弦の廣瀬蘭は!!!

(刀の血でうっとり紅をひく上弦三浦蘭も最高に蘭丸で美しくてつらかった)

参照:過去エントリ

dramatic9ri.hatenablog.jp

  

蘭兵衛としてあれだけいい街を作っておきながら、アッサリと、むしろ嬉々として無界を斬り捨ててしまえるのは、蘭兵衛としての人生すら「殿が蘭丸に望んだ姿」として過ごしていたからなのかなあと。

アイツ、きっとそもそも蘭兵衛として生きてなかったぞ…!「どこまでも生きのびろ」という殿の命に従うために蘭兵衛と名乗っていただけにすぎなかった…?

 

「殿に愛されたお前と」があんなに効果的なんだってことは(ライビュは死ぬ気でここの表情を抜いてほしい)、蘭兵衛はあの口説きで、殿の最期の言葉だけじゃなくてきっと捧げた身も心も幸せも思い出したんだよね…つらい…(そのくせ落ちる直前に霧丸に蘭兵衛と呼ばれてまだハッと振り返るのまじで罪深い)


月蘭はきっと一番「あの頃」を忘れられないタイプ。自分は殿のそばにいて、殿を真似するチビ天魔王と好青年な捨之介がいて、性格も境遇もバラバラなのに全員が殿のほうを向いて、キラキラ輝く主君を一緒に追いかけていた、まるで学祭な安土城

あの頃に戻れるものなら戻りたい、と一番願ってるんじゃないかな。わたし、闇落ち直後に蘭兵衛が「捨之介も仲間だ」と嘘を吐く理由が思い当たらなくてね?霧ちゃんに絶望を与えるためだけに嘘を吐くようには思えないし、そのあと躊躇いもなく捨之介斬るし…

夢見酒で思い出した過去ではきっとまだみんな同じ側にいて、あの一瞬、蘭はその頃の自分に戻っていたのかなって…(勝手な想像)

 

ワカ髑髏から観てきたのに、月髑髏で初めてこんな色々湧き出させてくるダブルチームなにこれ怖い!

 

 

裏切られた天魔王の話

捨之介の考察書いたころは、天魔王は裏切られたんだーって思ってました。(いまも思ってるけどそれどころじゃなくなってる)

dramatic9ri.hatenablog.jp

  

「仲間」なんて夢マボロシの如くなり。人は裏切り裏切られ、利用し合いながら生きていく。信長の振る舞いを見て、そう信じていたのに、かつて同じ場所で同じ教えのもとで生きてきたはずの蘭兵衛まで無界の仲間の命乞いに来る。はい興醒めー。

必要が無くなれば切り捨てる。それが天魔王の、信長の「常識」だった。

 

そんな天魔王の前で、捨之介は仲間を謳い、兵庫たちは髑髏城へ乗り込む。天魔王は仲間なんて信じないから、生駒も、蘭兵衛も、裏切られる前に裏切る。それなのに蘭兵衛は裏切られた相手である天魔王を庇って死のうとしている。

なぜお前は裏切らない?!と天魔王さま大混乱。鈴木天魔王の表情筋が炸裂するシーンです。早乙女天魔王の哀しみの顔は辛すぎて直視できません。(オペラでガン見)

 

ここで「仲間」を語る捨之介に負けてしまったら、これまで生駒や蘭兵衛まで裏切った自分の生き方全否定ですから…「だまれだまれだまれ!」わかる…つらい…

今回の天魔王、「仲間」って台詞にほんと敏感。すぐ扇子で口元隠す(上弦早乙女天)し、すぐ口歪める(下弦鈴木天)もんね。

同じ側だと思っていた2人に「裏切らない」という形で裏切られてしまった可哀想な天魔王…という考察をベースに、アイデンティティ考察を加えてこねくり回して出来たのがこのレポです。

 

 

自分を持たない捨天蘭

福士捨のおかげで初めて気が付いたのが、兵庫たちはみんな「自分のため」に髑髏城へ乗り込むってことでした。捨之介のためじゃないのよ。


「誰かの犠牲の上に生きるのはもう嫌だから」捨之介を救いたい霧丸。
荒武者隊の子分たちに掲げてきた自分の信念を通すために戦う兵庫。
面白いものが見れそうだから付いてきた贋鉄斎。
愛した男を地獄から救うために立つ極楽。
自分が生き残るために本能で選んだ渡京。
ごめん、おっとうはよくわかんないけど…

そして対する天魔王のささやきは常に「他人のため」!!!蘭への口説きは「殿のために生きよ」、生駒の自害は「私のために死ね」、最後は捨之介にも「平和のために首を差し出せ」と。

蘭兵衛は死ぬときは自分のためだったけど、無界の皆のために生き、殿のために落ちた。

捨之介は常に誰かのために傘を差し出し、霧丸のために城へ乗り込み、天魔王を助けるために鎧を剥ぐ。

 

そこへ飛び込んできた霧丸は「俺は捨之介を守りたいから」空っぽの仮面持ってけって言う。さらにそのうえ、「全て失った俺たちが今後生きていくために(なんて言ってないけど)」金500枚寄越せと。
なんて自分勝手!そりゃあ半蔵怒るわ!

 

でも「自分のために他人を救う」霧丸こそ、他人のために他人を救おうとしてきた捨之介をほんとうの意味で救ったんだろうなって。


捨之介が他人のために自分を犠牲にするって設定は前からだけど、特に月捨は純粋に「他人のために」と信じてお節介してる。(そう、お節介なの〜〜月天にとっては大きなお世話なの〜〜!そして食い違って絶望が生まれる…すき…)

他人のためという気持ちのいい言葉に隠れて、本当に正しいことが見えなくなってしまうこともあるんだなあと、ぼんやり感じた年末年始だったのでした。

 

 

つとめ、御苦労。

今回もやっぱり長丁場な好き勝手考察レポ、12月観劇ぶんはこれにてようやく終了となります…

好き放題書き殴ってちょっとスッキリしたので、心置きなくライビュで打ちのめされてきます。

これきっとライビュ観たらまた長々と書く羽目になるから!しばし休憩です…

 

2月に下弦2回目入れてるんですけど、前日の上弦を本気で探すかどうかはライビュ観て決めます…とか言いながら、もう探し始めてはいます…ほんと沼…みなさまもどうぞ登城の際、意図せずウッカリ沼に落ちないよう、足元にはご注意ください…!