足元にご注意ください

気付けばハマる、そこは沼。劇団☆新感線を中心にお芝居について好き勝手書き連ねる場所。

再履修した【剣劇「三國志演技〜孫呉」】

刀剣乱舞もヒプマイもメサイアも踏んでない、早乙女友貴以外のキャストほぼ初見のオタクが飛び込んだ三國志演技、キャストの顔と芝居をちゃんと把握した状態で2度目の観劇を終えました!

推しが出るからって軽い気持ちで観に行ったら、推しは出ているどころじゃなかったし、推し以外を観るためにチケットが増えた珍しい演目です。

一度目に刺さったところも、前回は知らなかったところも、たぶん変わってたところもたくさんあったので、配役別感想だけもう一回まとめます。


前回は番手順に書いたけど今回はランダムにいく。

ちなみに初見時のレポはこちら。


W主演

孫策/梅津瑞樹

やっぱりこの人を主役として祀り上げた荒牧さんのプロデュース力が凄すぎるのでは???だってこれ梅津さんのための脚本じゃないですか???梅津さんのオタク、息してる???


2度目だからこそ楽しみにしてたんですけど、1幕序盤で七三から迫り上がってくる孫策ちゃんと虚空を見つめていたんですよ……虚空を見つめる強気な孫策と、幼馴染に戻る無邪気な伯符。だんだんその強気が暴走して、だんだんその無邪気が加速する。知らない間に振り幅がどんどん大きくなっていく芝居。いや、だから、とにかく芝居がうめぇのよ。

梅津瑞樹はこんなに芝居が上手いんだぞ!!!って見せつけるプロデュースぢからが強すぎる。


1回目はよく見えなかった「おやすみ」の表情が観たかったのもあって下手側の席に座ってたんですけど、すごいニッコリした、貼り付けたような笑顔から、低い冷たい声の「おやすみ」が飛び出してきて温度差で風邪ひきそうでした。そんな顔してたんかよ……


前回も書いたけど、孫策の狂気は決して好みではないんですよ、好みではないのについ目で追ってしまう、可哀想で痛ましくてゾッとする笑顔。

笑顔見せられてんのに「可哀想」「痛ましい」って思わされるのマジで何?!孫策はめちゃくちゃ興奮した顔してるのにこっちの肝が冷えていくの、マジで何?!??!って感じでした。芝居がうめぇ……


序盤からひっそりと狂っていくので、我々が対面できてる芯からマトモな伯符ってめちゃくちゃ一瞬しか存在しないわけですけど、わたしは梅の枝を持って現れて「仕方ねえな」って顔して微笑んでる伯符がメチャクチャ刺さってます。

初見のとき周瑜をオペラで抜いてて突然隣に現れてギョッとしたので、今回は絶対に登場するとこから見る、と決めていたシーンでした。

アレが本来の孫策なんですよ。あのニュートラルで穏やかで無垢で芯の強そうな、あの孫策こそが、周瑜の隣に立っていたはずの本来の孫策の姿なんですよ……!良すぎて、言語化できなくて、ぐう……って唸ることしかできない。

いや〜〜〜全体的にオペラグラスが吸い寄せられる役者さんでした。


芝居とは関係ないけど、2度目はありがたいことに花道近くで出捌けを堪能できたお席だったんですよね。初登場シーンで花道を歩いてきた孫策に「思ったよりデカい」って感じたのは何だろ、肩幅?あんなデカい印象なのに父上の前ではやっぱりめしょめしょに小さくなっててほんとすごい。

あとマジで芝居と関係ないけど、死ぬほど顔が良い。孫策と美周郎がキメ顔で並ぶシーンは圧倒的に美!!!!!!!って感じでした。ビジュアルisパワー……


2幕ではねえ、2回もキレイな天丼を披露していてアドリブ力を感じました。天丼って難しいんだよ、ちゃんと他の人にも気付いてもらえるタイミングで、無理なく同じネタ引っ張ってくるんだから…!

あとやっぱりこの人の殺陣がめちゃくちゃ孫策っぽくて、元からそうなのか今回そうしてるのかすごい気になってる!ちゃんと剣が重くて、人を殺せるタイプの殺陣だ……って思いました。


周瑜荒牧慶彦

わたしが一番好きな周瑜は、雪の中、伯符に合わせて皆に嘘を吐きながらギュッと痛いほど服を握りしめた拳です。

あそこの孫策の「周瑜が全て知っている、これまでのことも、これからのことも」(的な雰囲気の台詞)は、手前のシーンでこれまでのこともこれからのことも殆ど何にも喋ってないんだから、つまり「俺の人生はお前が好きに仕立てて使え」じゃん!!!

序盤で俺にお前を丸ごとくれ、と請われて迷わず従った公瑾に、自分を丸ごと差し出すという伯符からの絶対的な信頼……

それを目配せだけで全て理解して、泣きそうになりながら、白くなるくらい拳を握りしめて気丈に笑って見せた周瑜めちゃくちゃ良かった。


個人的には、荒牧さんはあんまり今回の脚本との食い合わせが良くなかったんじゃないかなって思ってます。どうしても狂言回しとシェイクスピアっぽいレトリックの独白が多かったけど、この人だれかと会話してる方が絶対良いと思ったし、余白を持ってる台詞の方が好きだった。

っていうか自分の心を飲み込んだときの演技がメチャクチャ良かったので、感情をそんなに事細かに説明しない方向の脚本で観たいが?!となりました。

結合男子、わりと期待値高めです。


2幕はねえ、めっちゃ楽しそうに笑うじゃん。剣ぶん回しながら、楽しくて仕方ないって顔してる。ニッコニコなのよ。よかったね……

2幕中盤に入ってる謎の舞踊コーナー(ありがとうございます)の剣舞がすごくすき。荒牧さんは殺陣っていうより剣舞がすごく綺麗。踏み込みも太刀筋も美しくて、乱戦より真ん中に立って掛かられるタイプの殺陣が観たかった。もっとバチバチに踊ってくれてええんやで。


息の整わない周瑜を応援させられる場面で、孫策からの指示でベッタベタのぶりっ子台詞をぐだっと言わされた客席に向かって「もっと可愛く!」って即ダメ出しした荒牧さん、マジで分かってんな!!!って思いました。こんなにオタクのこと分かりすぎている俳優兼プロデューサー、この人が自ジャンルに踏み込んで来たらと思うと恐怖すら感じる。ほめてます!!!


新しい時代

孫権/廣野凌大

もしかして:すごく台詞回しが上手い???

狂言回しの時の独特なレトリック
気弱で真面目な権坊
太史慈に懐く孫権
上に立つ覚悟を決めた皇帝孫権

ぜんぶ同じなのにちゃんと少しずつ違ってて、あんなに台詞にバリエーションあるのにちゃんと同じ人なのすごくない?

だって権坊として喋るときに「なのです」って語ったらめちゃくちゃ違和感あるじゃん。でも狂言回しとして喋ってるときは「なのです」って言ってるのにちゃんと孫権なんだよ……伝わる気がしないのでこの辺で畳みますが、しゃべくりが上手いひとってすごいよね、って言う話です。


しかも権坊のときに両腕が身体の前に落ちている感じを意図的にやっていることが分かったので、身体コントロールに長けているひと!!!!って興奮しました。

皇帝孫権として喋っている瞬間、両腕は体側に収まってますからね。そのあと自分は弱い、って言い出すとまた腕が前に落ち始める。

中盤、一般兵士たちと喋ってるときの姿勢ももっとちゃんとよく見とけばよかった〜!


あと孫権双剣なんですけど、あんなに回せるのすごいね?!初見で意味わかんないくらい回しててあわててオペラして、柄にふたつ穴が空いてることは確認したんですけど、2回目どう頑張ってみてもその穴をどう使って回してるのかさっぱり分からんかった。だって回したあとちゃんと持ち手を掴み直さないといけないんですよ?なんで掴めんの?落としたり飛んでったりしないんですか?

剣を飛ばしはしないけど、手を間違えて怒られるかわいい孫権は2幕で目撃しました。止まっちゃった孫権に、はい、ここから再開ね、って誘導する太史慈、いのちたすかりました。師弟!!!!!!!


でもさあ、本編の殺陣はめちゃくちゃ苦しそうにトドメを刺していてこっちが苦しくなるんですよね。「相手も死にたくないと思っているだろうから戦いたくない」という優しい孫権が、強くなる覚悟を決めて容赦なく敵を斬るけど、斬る瞬間は毎回とても辛そうな顔をしてた。

嫌なんだよねえ、戦うの!!!でも変わるために頑張ってんだもんねえ!!!

ほんとうは弱虫な孫策は強い自分を偽って、周瑜は独りぼっちでその意思を守っている一方で、次世代の象徴である孫権「大将が弱くても良い」「足りないところは周りを頼れば良い」をひとつずつ積み上げていくの、ほんと新しい時代って感じがしました。太史慈の項目に続きます!


太史慈早乙女友貴

代替わりの時、あんなに孫権を守って支えている太史慈がひとり拱手してないのはもしかして主従じゃなく、隣に並ぶ者であることを選んだのかなって思いました。孫権は、いつでも本音をこぼせる、弱さを見せられる友を得たのかもしれないって思ったんですよ。

あんまり記憶が定かではないけど、片膝つくとき右膝をついてませんでした?か?そうすると踏み込みが逆になるから、剣を持つ武将として恭順の姿勢は示しているんですよね。たぶん。どうしよう左膝ついてたら。どちらにせよオタクの妄言なので許されたい。

周瑜が喋ってる時はただ前を見てるだけなのに、孫権がしゃべり出すと権の方に目線を送るの、ほんともう……健やかに仲良くしててください。


最後は一緒に笑顔で賑やかな宴へ向かう2人がさあ、はじめは「ここでいい」って頑なに宴会には加わらなかった太史慈がね、しっかり孫呉に居場所を定めているのがわかってとても良いなと思いました。

なんか敵だった時もあんまり陣営に馴染んでなさそうだったじゃない。気の良い部下たちのことも、気には掛けてたけど宴には加わってなさそうだったじゃない。それが孫権の姿に感化されて、部下たちとも話をするようになっていったわけでしょ。

っていうか最後の宴に向かう直前、初見(開幕2日目)のときは誰とも会話せず下手で佇んでたのに、今回見たら兵士たちと会話してたもん。成長!!!

ちなみに花道寄りの1階席下手を選んだ最大の理由は、2階席からは全く見えなかった「似合ってるぞ」を見るためです。表情までしっかり見えて最高でした。ごちそうさまでした。


いや〜〜、ほんと、弟属性を付与されがちな早乙女友貴の「兄性」を引き出してくれてる三國志演技、感謝しかない。


殺陣は体感2日目より全体的に速くなってた気がします。周りが速さについてこれてるのもそうだけど、ゆっくん自身がちょっとゆっくりな足捌きに慣れて、「待ち」の動作を減らしたから遅く見えなくなってる感じもあったような気がします。自信はない。

そういえば最初の孫策との殺陣で周瑜が割り込んでくる瞬間、ぜんぜん「待つ」とか「躊躇う」とかの印象なくギリ間に合ってる感が出てるのはシンプルにすごいなと思ってます。飛び込んでくるタイミングがドンピシャ。周瑜の項目で書きなさいよ)


あとこれは完全な覚え書きなんですけど、建業?建昌?とにかく城攻めの階段を駆け上がる3手前くらいの立ち回りで、たぶん片脚を上げるとこだと思うんですけど、重心の置き方がいつもと違って、どっちかっていうと太一さんのバランスに近い動きだったのが珍しくてすごく脳がじゅわっとしました。

あの城攻めはどう考えても三おじ+孫策との立ち回りが圧巻なんだけど、今回めちゃくちゃ殺陣が速くなってた〜〜〜!!!ただ1対多数じゃなくて名のある武人たちを相手にした立ち回りで、しかも剣だけじゃなくて戟・昆・手甲って変則的な武器だからものすごく楽しかったです。何回でも観たい。


2幕孫権との師弟対決は、どうやら身体能力Sのステータスを持つらしい孫権と楽しそうにやってんな、とTLを眺めてたんですけど、今回手合わせ前に双剣を回した孫権に、ちょっと剣をくるくる回して対抗したら、孫権がもっとくるくる回して煽って客席から歓声をもらったもんだから、ありがてぇことに早乙女友貴の本気のぶん回しが見られました。「俺に勝てると思っているのか」じゃないのよ。なんで朱雀じゃないのに殺陣も扇子も長物もあって剣舞まで見られるんですか?!早乙女友貴バリューパック。ありがとうございました。


なお、周瑜戦では「私のために戦ってー!」と言わされた客席に即答で「いいだろう」って言っちゃうチョロい太史慈さま、その後のタームで観客にダメ出しした周瑜との比較も相まってめちゃくちゃ良かったです。そういうとこだぞ。


黄祖/玉城裕規

いやもうこんなん好きやん。

無理です。こんな手招きされてる沼に落ちないでいるの無理。次の現場、どこですか???


まずこのひとの狂気が好みすぎる。もう一歩向こう側へ踏み込んだら途端に壊れてしまいそうな危うい狂気。壊れずに戻ってこれてよかったねえ、黄祖……!

それからほんと最高なあの長台詞。喜びから空虚さへ、絶望から恐怖へ。黄祖の感情の変化と一緒にぐるんと回る盆舞台。

敵役がただ1人で喋ってるだけであんなに場面が保つの、脚本もすごいけど役者はもっとすごい。背景も小道具もなんにもない舞台で喋ってるだけやぞ?!

脚本との相性もめちゃくちゃ良いんだろうけど、声に乗せる感情の振り幅と、身体表現から滲み出る精神状態の振り幅がとにかく大きくて、ただ喋ってるだけのシーンなのにこっちが受け取る情報量が異様に多いんですよ。何回でも咀嚼できるあのシーン。何?!?!


あとねえ、わたしは目撃してしまった。孫策との一騎打ち、ずっと防御に徹していたのにどうしても止まらなくて終わらなくて、仕方ないから一太刀浴びせるあの瞬間、とても嫌そうな、泣きそうな顔で踏み込んだ黄祖ちゃんの表情を……

斬った自分の手をすごく哀しそうに見つめる黄祖ちゃん、心から不憫で2幕との温度差で脳がバグを起こす。


2幕さ〜!あれは「軍事訓練である!」なので、めちゃくちゃ強いのに「殺さなくても勝たなくても良い」から、めちゃくちゃ活き活きしてるの本当に刺さるよね。楽しそうに生きていてなにより。

でもって乱戦のときちょっとサボってんのめっちゃ好き。立ち回りもふよふよしてるし、全員で孫策周瑜に斬りかかっていくとき下手でしゃがんで孫権とニコニコ駄弁ってるのもかわいいね。

でもひとつだけ言わせてもらって良いですか?太史慈とも戦ってほしかったよ。


黄祖も「戦わなくて良い世」に向かって一歩踏み出したひとなんだよね。殺さなくて済む選択肢を選ぶことができるようになったひと。よかったねえ、よかったねえ……


おじさんたち

ちょっとかなり力尽きたのでここから文章量が減る。


韓当/郷本直也

やっぱり好きすぎる韓当。声色の使い分けがはちゃめちゃに好き。なんか、すごく、結合男子の十六夜なんだよな…..

「死ぬんだね、大殿でも」の、信じられない気持ちと現実に絶望する心が同居してるあの感情の説得力がすごい。

前にも書いたけど「そのために戦争してんじゃないの?!」の本質突いてる鋭さがほんとに好きだしグッとくる。強い人が戦う理由がソレなの本当に素敵。彼は彼の生き方を貫くために行動してるところがいいよね。


黄蓋/高木トモユキ

前回書くの忘れたんですけど、孫権に現実を突きつけるのが黄蓋っていうのがメチャクチャ良い。いちばん脳筋っぽくて、いちばん何も考えてなさそうな黄蓋に、考えろって言わせるの本当にずるい。

それまで感情で走る役回りだった黄蓋に、あんな真面目で素敵なシーンが用意されてるのほんとうに良い。


2幕の個人的な戦いのところで(たぶんゆっくんのおふざけで)突然登場した黄蓋めちゃくちゃ笑ったな!!!ほんとにどうしようもないところに行くまで、どうしたらいいかわかんない顔しなかったところがさすがだなと思いました。陽だまりの樹から2作目の共演で甘やかしすぎましたか?


程普/冨田翔

めちゃくちゃ良いとこ取りするこのキャラデザは荒牧さんのお気に入りかなんか?って前回書いたら、キャラじゃなくて冨田さんが荒牧さんと仲良しの先輩だって教えてもらいました。権力!!!

この先周瑜は自分が騙った孫策の人生を背負って、ただ独り強く立って権を支えていくことになるけど、きっと行き詰まった夜はそっと程普が幕舎を訪ねてきて、何も言わずに月を見ながらふたりで酒を飲むんだろうなって思います。

導いてくれる良き先輩が居て良かったですね!!!


劉表/冨田昌則

きっと殺陣めちゃくちゃできる人なのに剣を持ちすらしない1幕。

梅の花を観に着いて来てって尋ねてOKくれた黄祖ちゃんに、背を向けたまますごく優しく微笑んだ劉表さまが観られてしあわせです。


満を持しての2幕の孫家総掛かりさあ、いちばん中国剣術っぽくて、格式のある家から出てきた領主って感じの立ち回りでめっちゃ良いよね〜!

黄祖ちゃんとの手合わせは、黄祖ちゃんがめちゃくちゃ楽しそうで好きです。あとTwitter/Xで毎日のように黄祖ちゃんと仲良ししてるのも大好きです。ありがとう劉表さま。


孫堅松本利夫

父としての登場が少なすぎる孫堅、2回観てもやっぱり父としての登場が少なすぎるよ〜〜!父親要素が少なすぎて演技云々の話ではない。

でもやっぱり亡霊が呼ぶ「策」と父が呼ぶ「策」は違ったよね。逃げろ、と叫んだ孫堅は、確かに父だったよ。でも少なすぎる!!!!!

孫策周瑜に焦点当てようと思ったら、そりゃ前後をギュッと圧縮しなきゃいけないのはわかりますよ。わかりますけど、権に至っては生きてる父との共演ゼロですからね。もうちょっと父要素くれ!!!!!


小説も読み返しました

わたしが唯一触れた三国志北方謙三版の小説を読み返しました。全13巻のうち、孫策との周瑜が登場して孫堅が死ぬ1巻。辛酸を舐めた孫策が自立する2巻。脂が乗って父になった孫策が死ぬ4巻。もちろん魏呉蜀並行して話が進むから、取り急ぎ孫家のとこだけ抜き出して読んだ。

太史慈はめちゃくちゃ面倒見のいいヤツだったし、程普はめちゃくちゃ軍を率いるのが上手かったし、孫権がめちゃくちゃしっかりした弟でした。

大喬小喬を攫ってくる3巻はこのあと読みます。そう、実際は孫策周瑜は結婚していて、孫策は死ぬ前に父親にもなってる。姉妹それぞれに一目惚れして、まとめて攫ってくるっていう二人の無謀っぷりが小気味いいエピソードなんだけど、そのあたりのロマンスがぜんぶ割愛されてるのも、剣劇としていいバランスだったと思います。


何にも知らずに飛び込んだけど、面白かったなー!って思えるお芝居だったし、推しのバリューパックだったし、いい役者さんに出会えたし、新しい沼の気配も感じていて満足です。ブロマイドは売り切れすぎていて笑ったね。

千穐楽まであと少し、怪我なく事故なく走り抜けられますように!

思てたんと違う(ほめてる)【剣劇「三國志演技〜孫呉」】

主演陣をぜんぜん知らなくてすいません……の気持ちで乗り込んだら、早乙女友貴が美味しいところ根こそぎ持ってったので「我々のための演目では?!?!」と大混乱した三國志演技のエントリです。

万が一、演目名でこのエントリを踏んだひとがいたらいけないので注釈を挟んでおくと、早乙女友貴のゆびと日舞の脚運びに脳がドロドロに溶ける、劇団☆新感線クラスタによるエントリです。

申し訳ないんだけどほんとうにゆっくん以外はほぼ、名前は知ってるけど顔が一致しないレベルのハジメマシテだったので頓珍漢な感想を繰り広げてても色々許してほしい。顔も覚えたしチケットは増やします。



とりあえず1幕と2幕は分けて語らねばならんな?


1幕:企画ってどこまで?

わたしの知ってる三国志はドラマチックに脚色された北方謙三版の小説なのでオリジナルがよくわからないんですけど、呉の建国ってハムレットだったんですか???

孫策周瑜なんてさあ……ただでさえオタクが好きなモチーフなのに……強くて顔が良い男がべしょべしょになるオプションメニューをそこかしこに追加されてて笑ってしまった(褒めてます)


今回の三國志は荒牧さんが企画したって確かに読みましたけど、まじで不勉強なのでぜんぜん詳細知らなかったんですよ。このひとプロデューサー業やってるってマジ?っていうか今回の舞台のキャスティングとキャラクタ設定にどこまで噛んでますか?!これは誰の意思??!?!

荒牧さんも梅津さんも廣野さんも玉城さんも、出演者ほとんどハジメマシテなわたしでも感じる。この人たちにあんな役を演じさせてるの、オタクがめちゃくちゃ喜ぶやつでは?


正直「三国志」の物語としては解釈違いも色々あるんですけど、定番の題材に「この役者はこんな演技させると輝きます」って調味料をしこたま加えまくったアレンジ料理って感じでとっても美味しかったよ……


1幕:キャラクタ別の感想

周瑜荒牧慶彦

劣等感に苦悶する荒牧さんと、大切なものが手からこぼれていく荒牧さんで味付けされた周瑜

いや……美周郎って主人公足り得る才能とエピソードを持ってるキャラクタなのに、なんで劣等感持ってるんですか?!本人の英雄譚を捨てて他キャラクタを輝かせるスパイスに徹してしまうのあまりにも潔くてすごい。

周瑜との対比でいろんなキャラクタの魅力と人生が見えてくる脚本。周瑜に才気にあふれた美丈夫としての評価を受けさせないって決めたの、誰??!!?!


そもそも「軍略家」と「策の理解者」って要素を、どちらも程普に預けてくるのずるくないですか???いろいろ及ばない周瑜、はじめての概念。

赤壁の戦いであんなにキレキレの強気な戦略を取る参謀なのに、ちょっと至らない部分が多すぎてもどかしいんですけど、荒牧さんとしての得意分野というか、味変としては最適解なんだろうか……


わたし今回、荒牧瑜公瑾のことが最後までよくわからなかったんですよ。周瑜のテンプレを踏襲してないのはわかったけど、今回のキャラデザが掴みきれなかった。主人公なのに……

たぶん前半のコメディの塩梅がだいぶ混乱の原因なんですけど、あんなに取り乱して劣等感を抱えているのに、突拍子もない軍略を自信持って提示できるその差がね、ちょっと飲み込むの難しいです。

けど一晩寝て、あのコメディはもしかして後半の「あのときこんなことが!」のための布石だったのでは?と思いつきました。いや、それにしたってちょっとキャラブレしてない?!

後半は孫権から狂言回しを引き継いだこともあって、ちょっと本人の感情とか仲間からの評価とかがうまく追えなかったのが惜しいです。


そうだ、踊りながら歌い出したところもびっくりしました。突然2.5次元を観てる気分になった(ほとんど観たことないので偏見かもしれない)

殺陣もお好きで上手なんだろうけど、どっちかっていうとそれより剣舞がメチャクチャ綺麗だなって印象の方が強く残ってます。せっかく踊るならもうちょっと踊ってくださってもよかったんですよ……


ちなみに荒牧さんはPPVV2で観たことありました。あと山姥切やってるひと、ってのは知ってます、観てないけど。と思って調べたら梅津さんも山姥切やってるひとだったのでこの覚え方はダメってことがわかりました。本科と写し、ちゃんと認識しないとだめだ……

三國志で初めて自覚したんですけど、どうやらわたし、役者を認識するとき声が優先するっぽくて……荒牧さんの声ニュートラルすぎるのか、なかなか認識できなくて今後もちょっと苦戦しそう。


いや、あの、2幕のプロデューサー業がちらつくので役としての純粋な感想が書きづらいです。ほぼ初対面だけど言わせてください。こいつ好き勝手しやがったな?!(ほめてます)


孫策/梅津瑞樹

強い梅津さんと、めしょめしょになった梅津さんと、こどもっぽい梅津さんとで味付けされた孫策

北方版の孫策は強すぎる輝きで綺羅星のように一瞬で消えていくまさに「小覇王」だったんですけど、梅津策伯符、吸引力のある強さと常に消えていきそうな危うさを両立させてて頭がバグを起こしそうでした。

大将軍としての荒々しくてイメージ通りな孫策と、ふるえるちいさなこどもみたいな伯符。おなじひとなのかちょっと信じられないところから始まったのに、程普のおかげで最後ちゃんと「おなじひと」として理解できるの、脚本と演技力の妙だと思いました。


狂気がだいすきなわたしですが、実は梅津さんのめちゃくちゃピュアで幼児化みたいな狂気はそこまで刺さんなかった(煮凝りみたいな狂気ばっかり浴びてるからかな…)んですけど、絶妙に「かわいそう」と思わされて悔しくはなりました。芝居がうめぇ。脚本としてはそんなに可哀想じゃないのに、梅津さんの表情があまりに痛々しくて、この時代に生まれてこなければ…って脚本通りにまんまと同情させられてしまった。


あと、脱いだときわりと身体が出来上がってるな、思ったより線が細くないんだな、という印象を受けたんですけど、めしょめしょになってる伯符がとってもちいちゃくて頼りなくて、骨格変えられる人?って驚いた。

それと表情管理が繊細すぎてオペラグラスが捗るのなんの!2階席後方だったのでアトレック8倍持っていって良かった。殺陣も横移動がそんなに多くないから充分追えたよ。


そう、孫策は殺陣がねえ!そもそも力押しに技術が伴っている感じがとても孫策っぽくてよかったんですよ。でも精神状態に合わせて剣の扱いが変わっていったのがめちゃくちゃよかったです。きっと殺陣で演技できるひとなんだろうなあと思いました。知らんけど。

なお、梅津さんはほぼ初対面です。映画版の「漆黒天」に出てたそうなんですけど、アレも出演者ミリしらで観てるからぜんぜん記憶にない……


孫権/廣野凌大

ちょっと廣野さんのことはまだよく分かってません。とにかくリズム感と運動神経に長けたひと。あと舞台と客席の距離感を掴むのがうまいひと。

頼りないところと人たらしなところが混在する孫権狂言回しとしての台詞が多くてちょっとシナリオとしての味付けなのかキャラクタとしての味付けなのか判断しかねてる。とりあえず廣野さんの殺陣、めちゃくちゃリズム感ありそうなテンポだったからダンスと殺陣をもっとください!!!!!ヒプマイ観ればいいですか…?

ちなみにワーステ1の映像を観ているので出会ってはいるはずなんですけど、認識していませんでし……ハッ!!!ワーステで「風間さんめちゃくちゃ踊るじゃん……」って思ったの、もしかしてそれ廣野さんなのでは??!?!やっぱ踊れるじゃん?!


シナリオとしては、孫権が前半の狂言回しを任されていることで、物語は終始孫策の話なのにちゃんと孫権の覚悟と成長が見えるようになってるの、脚本の妙ですわよね〜〜〜!

終盤で本筋に絡み出す人懐こい孫権と、終盤は本筋に入らない無口な太史慈の組み合わせのバランスも良きでした。は?こんなのオタクみんな好きな組み合わせじゃん???だからさあ、この脚本、どこまでが脚本家でどこまでが荒牧さんですか???

基本的にはコミュ力抜群なガキンチョ!って感じなのに、最初は自信がなくて途中でべしょべしょになって元気にグレて、覚悟決めて武に目覚めて、策に託されてまたべしょべしょに泣いて、最後は立派にひとの上に立つところまで成長がしっかり描かれてるの、天才すぎてみんな好きになるじゃん。


それから孫権はねえ、衣装もよかった〜〜〜!とりあえず編み込みポニテがかわいすぎる。ひとりだけ英字ロゴTっぽい衣装で、それどういう世界観???と思ってたけどいざ観てみたら「次世代の若者」感が強く出ててめちゃくちゃ良いなと思いました。そう、新しい世がはじまるんだよ。

孫堅孫策よりかなり身軽な装いだけどアニマル柄が大胆に使われてて、やはりお前も孫家の男!!!って感じでした。おおきくなあれ。


程普/冨田翔

完全にハジメマシテです!!!

本来は周瑜が持つべき「軍略家」と「孫策の理解者」のステータスを持つ、インテリメガネの冷静なベテラン軍師。若者相手に膝を折る柔軟性もあり、主人公の育ての親ポジ。

まだ未熟な周瑜を認め導く存在としても、孫策の二面性を繋ぐ役割としても、真面目なトーンで物語にピンと緊張感を張る役割としても、出番そんなに多くないわりにめちゃくちゃ重要なキャラクタでしたよね???

設定が美味しすぎて、番手も上で、このキャラデザ荒牧さんのお気に入りかなんかですか???と思いながら観てた。


黄蓋/高木トモユキ

完全にハジメマシテです!!!と思ってたのに、陽だまりの樹で出会ってた……

懐が深くて情に厚いオッサンとして味付けされた黄蓋シンプルに自陣に欲しい人材でした。このひとがマブダチだったってだけで孫堅の豪快な人柄がわかるし、この人が将として率いてる軍の強さがわかるよね。

三おじ、キャラクタと個性と役者のバランスが良すぎて癖になりそう。

キャラデザが女性向けゲームみたいにパキッとわかりやすく組まれてる上に、シナリオゲームみたいにちょっとしたセリフで描かれてない関係性を示唆していて、脚本がほんとよくできてる……


韓当/郷本直也

両方映像だけど、弱虫ペダルと初代テニミュで観ました!!!あと、ヒプマイの天谷奴零やってるひとって知ってます。こっちは観てないけど……

韓当、完全にわたしの好きなキャラデザで天を仰いだ。あんな軽薄なのに武器がゴツい棍なのも良すぎる。いやほんと、キャラデザが女性向けゲームだからぜったいにひとりはあなたの好みが見つかる三國志演技、構造としてめっちゃおもろいですね。

オタクのための舞台かと思いきや、「一日中ダラダラしてたい」ってゴネたのを怒られた韓当に「そういう世界を作るために戦争してんじゃないの?!」的なことを言わせていて刺さった……いま現代で歴史物を上演する意味!!!!


いやまじで、これはもうねえ、脚本がわりとすきですねたぶん。(荒牧さんの影響がどのあたりまで出ているのか読めないので断言できない)

おぼんろの末原さん、いちど観に行っておかないといけない……


劉表/冨田昌則

鷹揚で穏やかで人が良さそうな偉いひと。敵陣営なのに良いひと。このひとがいるから黄祖が憎めなくなる。

戦続きの世の中で、兵士として駆り出される農民の人生とか、戦が及ぼす農業への影響とか「平和のために戦う」メッセージを静かに紡ぎ続けるひと。現代に時代物を上演する意味……

調べたらBANANA FISHに出てたし、プロフィールに「殺陣師」って書いてあって目ん玉飛び出た。

どうりで!!!!!!!!!!!(2幕の感想に続く)


太史慈早乙女友貴

出演者がひとりずつ殺陣披露してモニターに名前が表示されていく2.5次元っぽいオープニング(偏見)で、ひとりだけセットにもたれて盆舞台を回っていくだけで剣を抜きもしなかった太史慈です!!!強い謎の男、出し惜しみされとる!!!!!と初っ端から笑い転げました。


ものすごくつよいひと。いや……武がつよいひとの役ってこれまでもそりゃ観てきたけど、今回は武だけじゃなくて将としても強いひとだった。人望のあるタイプのつよいひと。面倒見の良いタイプのつよいひと……

ゆっくんに「将」「師」っていう「人に慕われる役」を当ててくれた三國志演技、ほんとうにたすかる。孤独な強者と護るべき者がいる強者、目線の置き方ひとつ、気の配り方ひとつ取っても全く違うからね。常に他者の気配を探り、護るべき者を気遣いながら生きて戻るために立ち回る早乙女友貴こいつも俺も生きたまま戻る、という意志を持った立ち回り!!!!!いのちがたすかる。


奇しくも三國志初日と同日にゲキシネ版が封切りを迎えた舞台「天號星」のエントリにも書いたんですけど、ほんと、早乙女友貴って確かに「兄」なんだよなあ……

早乙女太一の弟、と表現されることが多いですけど、下に妹さんがいらっしゃるので「兄」でもあるんですよね…

とはいえ今回「面倒見の良い兄貴分」みたいな立ち位置に置かれてたの、すごく良かったなあってしみじみ味わってます。川北長次の長吉観たときの「良かったなあ」と同じ感覚。

すっごいイマサラな話をするんですけど、早乙女友貴って確かに「弟」なんだけど、このひと「兄」でもあるんですよね???という気付きを得たんですよ。


入場特典のデッッッッッカハリセンに書かれてる女性向けゲームみたいなセリフ、まさか初陣に向かう孫権に向かって言うなんてえ……お師匠ぅぅ……

太史慈、立って控えてるときも座ってる時も、重心をね、踵に乗せ切ってなかったんですよ。いつでも孫権のほうへ一歩踏み出せる姿勢なんだよ……つよくて面倒見の良いお師匠……たすかる……


それから殺陣、めちゃくちゃ速いのはそれはそうなんですけど、劇団朱雀の兄弟殺陣より遅いのもそれはそうじゃないですか。

剣速は速いまま、切り返すタイミングとか、足を地面から離して次の一歩を踏み込むまでの動作とかがめちゃくちゃゆっくりになるのは他でも観たことあるはずなのに、今回はなんか立ち回りにすごく見覚えがあって、殺陣の解像度がものすごく上がった気がする。朱雀の殺陣をていねいに再生してるような感じ……そもそも立ち回りがゆっくりになるとだいすきな脚運びがよく見えて最高ですね。

でも今回ちゃんと表情も見たよ。相手の剣を受けて押し返すときにちゃんと苦しそうな、力む表情をしてるのとか、初めて見た気がする。いつも速くて顔まで観てる暇がないか、圧倒的すぎて歯を食いしばる暇がないので……


そうね、確かにめちゃくちゃ強かったけど、ちゃんと剣の一騎討ちで互角になる殺陣を兄弟以外であんなに長く見せてもらったのが珍しかったのかもしれないなと思いました。天號星の対いぶき戦はどちらも朝吉が本気じゃなかったし、大勢に斬りかかられて楽々さばいてるほうが多いし。

ちゃんと剣を受けて、弾いて、躱して、切って、それなりにダメージも受けながら戦うのが見える立ち回り。いのち、たすかる……


そういえば、他の出演者のみなさんの過去作調べてたらみんな軒並み刀剣乱舞に出演していたんだけど、早乙女友貴もとうらぶ役者枠に入ったのか……という不思議な気分です。チケットは持ってない。


黄祖/玉城裕規

わりと知ってる気がするけどどこで観た??!?!と思ったら、配信の弱ペダと映画版の刀剣乱舞もいちおう観たけど、たぶん魔界転生の印象が強すぎるんだろうな……

キャスト陣の中でゆっくんの次にちゃんと認識して観れてるのが玉城さん。それでも少ない。

ヤンデレ気味で憂いと絶望に味付けされた黄祖、良すぎたよね???????


遊ぶみたいに軽やかに剣を振るう黄祖太史慈と対比して孤独な強者って感じでめちゃくちゃ良かったです。その孤独な強者がぐずぐずに崩れていくの、大好きにきまっとるわ!!!

彼の主である劉表がいいひとで本当によかった。良い主に出会えてよかったね黄祖……彼にも平和な時代に生まれてほしかった。

基本的には復讐の連鎖の話なのに、敵側が先にそこから離脱しようとするのも珍しいなと思いました。復讐したって何の意味もない、っていう、現代に時代物を上演する意味かもしれない。脚本〜〜〜!


孫策との決着のシーン、立ち回りの途中で衣装の装飾の布がおそらく意図せず外れてしまってちょっとヒヤヒヤしたんですけど、川に落ちていった孫策を呆然と見下ろす黄祖が、手に持ってたその外れた布を足元にぽとりと取り落としたのがあまりにも良くて震えました。元から取るべき布やったんか?!ほんとにハプニングだったとしたら、役者ってほんとうにすごい。あの布は確かに手から滑り落ちるべき布でした。


それからちょっとフライングで2幕の話をしますけど、てとてと走ってきて嬉しそうにちょけてる黄祖ちゃん、楽しく生きててめちゃくちゃ良かったです。末永く健やかに暮らしてほしい。

わたしこのひとの沼にうっかり落ちそうな自覚があるのでちょっと及び腰になっています。声が好きなんだよなあ……


孫堅松本利夫

ゆっくんと結構共演してるはずなんですけど、過去作あんま観たことないのでハジメマシテでした。

欲を言うともうちょっと殺陣の重心を低く重くしてほしかったんですけど、立ってるだけで「圧」があって、梅津さんが跪きたくなるのもわかるかもしれない。っていうか、梅津さんがめしょめしょになるから余計に大きく見えるよね……体積と存在感が見合わない。選択範囲の拡張モードでも発動してるんか?

「出てくるだけで」っていう重鎮感はすごくよかったけど、もうちょっと存在を生前に振ってほしかった……孫堅のひととなりが黄蓋たちを通して見えるって言ったよ。言ったけど、あんなに亡霊として悪影響を及ぼすなら、もうちょっと生前の本当の孫堅を描いてほしかったよ!!!!!


1幕:脚本と演出と殺陣

今回の脚本の味付けは全体的にわりと好きだな?!と思ってはいるんですけど、演出としてはちょっと長ったるいと感じたシーンもいくつかあって、そこはもうちょっとコンパクトにして、他の余韻に時間使ったらいいのにな……と思っちゃった。

亡霊シーンとか、たしかに見せ場ではあるんだけどね……もうちょっとオモテでの影響に時間使ってほしかったなあ。

役者さんに初見が多かったのでそういうシーンはそれぞれオペラして把握する時間にしてたけど、まさかそういう意図じゃないよね???


あとはやっぱり殺陣ですかね。いや、荒牧さんメチャクチャ殺陣取り入れたいひとなんだなって思い知ったというか……めちゃくちゃ戦うやん?!!?!しかもちゃんと武器にバリエーションがあって飽きない。

いやまじで企画ってどこまで噛んでんだろ……ということで2幕の話に続きます。


2幕:オタクの夢か?????

特別御前試合、オタクが企画したスペシャルステージでは????????

わたしの推し劇団☆新感線座付作家の中島かずきに対してもよくこの表現を使うんですけど、このひとやりたいこと全部やりやがったな???

権力を持ってしまったオタクはねえ、ずるいんだよねえ……

どうもありがとうございます!


ドリームマッチというタイトルにふさわしい組み合わせ。観たかったやつ全部入ってた。

っていうか劉表の殺陣がふつうに強すぎて笑った。当たり前だよそのひと殺陣師だってよ!!!!

殺陣師をさあ!剣劇と銘打った芝居の本編で劉表として使うの贅沢すぎませんか?!!?!?!抜けよ、剣を。

まじで好き放題やってて笑うしかない(ほめてます)


2幕:早乙女友貴のことが好きすぎる

階段での立ち回りも、剣での一騎打ちも、師弟対決も、長物から剣への持ち替えもあるのに、なんで扇子まで持ち出したんですか?!!?!!?!?!!?!

しかも主役ふたりの後ろに背中向けて現れて、ふたりが左右に分かれたらその間から扇子持って登場するの、主人公じゃん。優遇されすぎている。2幕って早乙女友貴ショーでしたか??!!?!?!


扇子で弓を引くみたいに手を斜めに上げるわたしのだいすきな振り、観たことあるやつすぎてぜったいアヤノ先生だと思ってオペラ落としそうになりました。両手でつよくにぎった。

ちょっと早乙女友貴のゆびを摂取するのに忙しかったので扇子の群舞はほとんど見てません。となりに玉城さんがいたのは見た。あの並び、ビジュアルが良すぎて眼福だった。


いや〜〜〜なぜ??????????


しかも師弟対決の「フリ」をしっかり拾う形で登場するラスボス……

総掛かりに登場してこない時点で察してはいましたけどね、総掛かりの終盤で七三のセリが下がっててめちゃくちゃ笑っちゃったよね。

去り際の捨て台詞、ちょっとニヤッと笑ってて、楽しかったんだな……と思いました。


スペシャル殺陣ショー、スペシャ早乙女友貴ショーの間違いだった。ねえ、荒牧さんゆっくんのこと好きすぎるでしょ?????


対ありでした

帰りにパンフとブロマイド買おうと思って並んでたら早乙女友貴のブロマイドが売り切れました。

「早乙女さん?さあ…」「わかる!めっちゃかっこよかったよね!」って会話も聞きました。

お隣の荒牧さんファンのお姉さんは開演前「たぶん今日観たら沼ると思ってもうブロマイド買ってあります」って言ってました。

わたしは何を観に行ったんですっけ?


思わぬところでチケットを増やされる日々!です!対戦ありがとうございましたァ!


【追記】チケットは増えたしレポも増えました!!!

ここにエンタメ極まれり【スーパー歌舞伎 ヤマトタケル】

ワンピースぶりのスーパー歌舞伎!これアレか、もしかしてステアラでやる予定だったやつ???って席に着いてから思い出しました。

今年はちゃんと記録しよ、と思って忘れないように幕間に書き殴ったメモを元にしているので、いつも以上に脈絡がない。

ちなみに、わたしのヤマトタケルの知識は荻原規子の白鳥異伝のみです。小碓、大碓、武彦、橘、八岐大蛇を退治した剣…全部知ってるけどぜんぶ絶妙に違う。ちゃんと古事記読もうと思いました。


スーパー歌舞伎ってこうだった

オープニング、なぜか宇宙に浮かぶ地球が投影されて「スーパースペクタクル…?!」と混乱しました。

幕が開いたらいきなり廻り舞台で横幅いっぱいに並んだヤマトの男たちによる「壮観なビジュアル」でぶんなぐってきて、さすがスーパー歌舞伎だな!!!って感じ。

わたしはワンピース歌舞伎が初スーパー歌舞伎にして2回目の歌舞伎だったんですけど、当時の思い出がすごい蘇ってきた。そう、歌舞伎isジャパニーズ・エンタテインメントなんだよな!!!!!

(6年前の拙いレポ……もう6年経つの??!?!)

ちゃんと伝統的な歌舞伎の技法を、これでもか!!!!!!ってくらい派手な演出と絢爛豪華なビジュアルで次から次へとお出しされるのすごい好き。御覧じろ日本の伝統芸能!ドヤ!!!って感じ。しかもこれを40年くらい前からやってるの、ほんと歌舞伎って意味わからんよな…(ほめてます)


豪華な衣装!!!鳴り響くツケ!!!豪快な立ち回り!!!大量の紙吹雪!!!心配になるほど壊されるセット!!!不安になるほど飛び交う樽!!!大胆な宙乗り!!!ほぼぜんぶ本家歌舞伎にもある要素です!!!(嘘でしょ?!!?!ってなる)

ほんとここにエンタメ極まれりって感じでした。最高。


クマソ、飛び交う樽

そう、樽が飛んだ。

そもそもクマソとの戦い、スーパー物量シーンだったんですよ。ジャンヌ・ダルクかと思った。舞台上に、群衆はね、作れるんだよ!!!!

ほんとクマソ陣営、圧倒的物量だった。二階建てのセットに所狭しと並んで宴会を楽しむクマソの男たち、西の果ての手強い軍勢をビジュアルでお出しされてこっちが弱気になっちゃった。めちゃくちゃ強そう。


しかもそのあと花道と客席通路から相模やら琉球やらの陣営がわらわら出てきて、まだ増えるのォ?!ってギョッとした。

カテコで判明したけど、出演者4列に及ぶほどいました。4列って!!!!!筋書き買ったら写真のある主要登場人物だけで13人いた。(主演ダブルキャストなので14人分あった)

物量!!!!!!!


そんな物量バトルシーン、まじでダイナミックというか、あなたたちもしかして、派手にすることだけ考えましたよね???っていう…(すき)

小碓は髑髏城の百人斬りかな?ってくらい斬ってるし、アクションチームはガンガン飛び回るし、途中で樽の山を崩したと思ったら舞台上でポイポイ樽を投げ付け合うクマソと小碓……

ワンピースの滝のような本水にもあっけに取られたけど、樽を投げ合う小碓とクマソタケル弟にもあっけに取られたよ。歌舞伎なんでもアリだな。(すき)


そう、團子くんね、やっぱり本人も若いし小碓も若い役だから余韻とかは正直ちょっと若々しくて物足りないところもあるんだけど、どう考えても殺陣がうまい。圧倒的な強さ。

クマソタケル兄の腰から刀を抜いた瞬間、空気が変わるんですよ。殺陣への解像度が低くてどこが上手いのかちゃんと言えないけど、剣舞でも殺陣の手を踏んでるんでもなくて、ちゃんと目の前にいる相手を斬っている感じ。その後ろ手に相手へ向けた切先がちゃんとガチで牽制になっている感じ。人を斬れるタイプの殺陣だった……

なんだろうね、運動神経が良いのかな。体幹が強いのかな。わからん!けど学んだ。團子くんは殺陣が上手い!


あと二階建てセットがめっちゃよかったなあ!明かりが消えてだんまりが始まって、二階の窓が開いて明かりが差して、戦いが始まったら後ろの壁がバンバン壊されていく。思い切り壊すねえ!って笑っちゃったし、最後は屋根まで落として心の中で手を叩いて喜んじゃった。屋台崩し、本家の歌舞伎でも観てみたいです。


蝦夷、飛び交う人間

フラッグの演出ってスーパー歌舞伎お馴染みなのかなあ???炎が燃え広がる様をフラッグで表すの、雰囲気ピッタリですごーい!と思ってたら神の炎を起こすことになって、割と人数の多いフラッグ炎隊が2倍になって「やっぱり物量……」と思いました。

炎タイムが思ったより長くて、ちょっと単調になってきたな〜と思ったタイミングでアクションチームによる大バク宙大会。ぐるんぐるん回るフラッグと人間。最終的にトランポリンまで出してきてポンポン飛び出してくる人間。すごい。


そういえば蝦夷編で初登場した武彦、いやこれみんな好きになるやつだな……と思ったら本当に最後までめちゃくちゃ良いやつで、3幕で小碓に肩を貸すシーンとかほんとグッときた。

素直で感情が表に出やすい小碓と、ちょっと斜に構えて冷静で大人な武彦、組み合わせとしてパーフェクトだよね。白鳥異伝も読み直そう。


武彦の福之助くんととヘタルベの歌之助くんがリアル兄弟だってことは、帰ってきて筋書き読んで初めて知りました。

兄弟ふたりを付き従える團子くんが1番年下。そう考えるとホント、めちゃくちゃ若い座組みだなあ…!


正直、小碓がまだ子供っぽい役柄の1〜2幕は他のお役も含めて全体的にちょっと余裕が少ないというか、ピリッと締まるシーンが少ない印象を受けたんですよね。四代目が抜けたってこういうことだなって実感した……

この話をすると別の論点が入ってきそうだからアレだけど、シンプルに公演の構造として、歌舞伎座で真ん中張れるベテランの役者が手綱握ってるかどうかで、やっぱりメリハリとか重みとかが変わってくるのは当たり前だよなって話です。中車さんの帝、リアル親子なのはすごいエモいけど、ぶっちゃけるともうちょっと重鎮感が欲しかった。


ちなみに、若い座組みなのは分かっていて團子くん回をわざわざ選んだので観劇体験としては満足しています!!!

それに、心配しなくても3幕では團子くんの「凄味」にぶん殴られることになるので……


病床のヤマトタケル、狂気

大好物の狂気をお出しされて笑うしかなかった3幕。スーパー歌舞伎、全体的に予想を超えすぎて「わはは!まじかやべえ!」って笑いがちです。ほめてる。


愛する大和の国の手前で病に倒れた小碓、自分の限界を信じたくなくて、故郷を夢見て、焦点の定まらない生気を失った目でフラフラになりながら進むちょっとヤベエ姿がぐさぐさ刺さった。

絶望と期待と諦めがないまぜになった表情。「凄味」ってまさにアレのことだよ。素直で無邪気だった小碓が、女がみんな愛らしく思うと言われた尊が、あんなに自信満々だったヤマトタケルが、ボロボロになって、ただひたすら叶わぬ未来に手を伸ばしてる。


歌舞伎ってわりと「死際」をめちゃくちゃ劇的に描くから、ヤマトタケルの死のタイミングで宙乗りかなーと思ってたんですけどね。

まさかあんなにスッと密やかに命を終えるとは思いませんでした。美しかった。

そうよね、せっかくの宙乗りはキラキラと希望の光を目に湛えた小碓がいいよね!!!!


宙乗りはぜったい鳥になって飛んでいくんでしょう、と思ってはいたけど、あんなに鳥だとは思いませんでした。衣装もそれはそうなんだけど、飛ぶ前の舞台上での舞踊がさあ、顔の動きとか完全に鳥でびっくりだよ。

宙乗り宙乗りで長袴の裾も吊られてて、手は鳥だし足も吊られて何の自由も効かないバランスも取れない体勢こわ……と思ってしまったけど、まあシルエットの美しいこと!!!

宙乗りって江戸時代からあるらしいですね……歌舞伎すご……


ちなみに1幕でも、小碓より圧倒的に大碓の方が好みでした。キラキラ純情主人公属性より、ちょっと影を背負ったニヒルな役の方がハマりそうな気がする。キャラデザ的には武彦みたいなイメージ。

なんか團子くんて頭が良さそうなんですよね、とても。だから草薙剣を置いていくとか、そういう判断をしなさそう。頭脳派の方が似合うよ、きっと。いや、初見なのでなんも知らんけど!


それにしても小碓は、ヤマトに兄姫という妃がありながら、余裕で弟姫を囲い込んで、躊躇いなくみやず姫も貰い受けるの、さすがあの大碓の弟って感じ。

そもそも冒頭で兄姫を妻としながら弟姫に手を出そうとするのを、弟姫が咎めてた気がするんだけどな。大碓も「悪いこと」だと分かってやってる感じがあったと思ったんですけどね……

小碓、無邪気に喜んでるからな!!!もっとタチが悪いぞ!!!と思ってしまうけど、どういう理屈なんだろうな?


兄姫、どタイプ

突然ぶっちぎりで頭の悪い感想ですいません。米吉くんの兄姫、どタイプでした。

新春浅草歌舞伎でも第一部2幕の与話情浮名横櫛・お富の役が刺さりすぎてヤバかったんですけど、ちょっと歳を重ねた女を演じる米吉くんがめちゃくちゃ好みだということがわかった。妹より姉、姫より未亡人。


2幕ラストの船の上の場面で、絶望を呑み込んで昏い目をした弟姫もめっちゃタイプでした。あの翳りのある表情、さすがあの姉の妹だなって思った。いやまあ同一人物ですけども……

とにかく酸いも甘いも分かっている側の米吉くんがすき。


米吉くんをちゃんと認識したのはFF歌舞伎なので、ユウナのかわい〜いイメージが強かったし、顔も可愛い系だし、未亡人は新悟さんの印象が強かったけど、ちょっと気怠げで大人の余裕が出た米吉くんの女方、とても良いんだ……もちろん姫はあざとかわいいんだ……

関係ないけど、苔玉くんは「かわいい」で、米吉くんは「あざとい」って感じです。どっちも好き。


そう、今回は米吉くんも團子くんも1幕で一人二役の早替わりがあって、立ち回りが大混乱で面白かったです。

一人二役で同じ人が演じてるその二人が立ち回りを繰り広げて代わる代わる顔を見せるタイプの歌舞伎の早替わり、ほんと面白いよね。


ワンピースではルフィとハンコックが二役で、2人が取っ組み合いしながら入れ替わってたけど、今回は大碓/小碓の兄弟と、兄姫/弟姫の姉妹が両方入れ替わり立ち替わりするから……たぶんあれ30分間くらい 、登場人物4人もいるのにずっと2人芝居だったよね???

そもそもあんな豪華な衣装を早替えで仕上げるのもすごいし、物理的に衣装着変えてバタバタしてるだろうに、ちゃ〜〜んと全然違う人物として登場できるのがほんと……早替わりってすごいよな……


余談ですが「エヒメ」と「オトヒメ」が「兄姫」と「弟姫」だってのは、帰って筋書き開いてもしばらくわからんかった、なるほどね……ニホンゴムズカシイ……


衣装、景気がいい

とにかく派手で派手で、ビジュアルisパワーなお衣装でした!!!景気がいい!!!

クマソのタケル兄弟、背中にそれぞれタコとカニを背負ってて、胸には龍と魚を抱えててとっても可愛かった。クマソって海沿いの国だっけ?と思って調べたら熊本あたりらしい。フルーツも出てたし南国だね。


帝と大后は胸元にジャラジャラと勾玉を身につけていて、まさに白鳥異伝……!!!

皇族は冠の意匠がまた素晴らしくて、翔三くん…綺麗だよ…と思いながらオペラしました。市川翔三くん、ワンピース歌舞伎のカマバッカ王国で見つけた美人です。クマソの女も皇子も美人さんでした。


小碓の衣装は物語が進むごとに少しずつ豪華になっていって、何者でもない自信のない小碓から、強く人心を掴むヤマトタケルになっていく様が見えて素敵だった〜!

特に2幕の、たぶんカテコでも着てくる金の衣装!!3幕はちょっと天狗になってるからか赤も入ってゴテゴテしてくるから、やっぱあの2幕がいちばん神の力がそばにあって最盛期って感じなんだろうな。

あれはねえ、ちょっと短めの袂に肩のあたりから放射線状に金の模様が入ってるんですけど、海に消える弟姫に追い縋って手を伸ばす場面でその模様がいちばん綺麗に見えて、すごい残酷な衣装!!!!!と思いました。ほめてます。

いちばん神に愛されている衣装が、弟姫を失う時に1番輝くようにできている……


同じ船の場面で弟姫の衣装も、大きな袖の柄がとっても綺麗で、船室から顔を出したときとか、小碓を振り切って我が身を抱くときにいちばん綺麗に柄が見えて、残酷……と思いました。とてもいいよね。


あと素敵だなって印象に残ってるのは、山神さまと姥神さまのお衣装です。同色の柄物の布を何重にも襲ねて縫い合わせたみたい着物、めっっっっっちゃ素敵でオシャレだった!!!!!!!!あの加工のスカートかジャケットが欲しい。かわいい。すてき。


あと個人的に気になっていたのが武彦の衣装。小碓と合わせて結構いろんなお衣装に着替えるけど、ずっと蝶が飛んでる。ぜんぶ蝶の柄。なんでなんだろうなあ。気になるなあ。


書き殴りメモ、終了

物語については、兄殺しの小碓が向き合う敵がいつも「兄弟」なこととか、父帝との関係とか、史実と白鳥異伝と合わせていろいろ捏ねくり回せそうなネタはあるものの、今回は力尽きたので割愛です。


予習せずに行ったから、團子くんと中車さんと猿弥さんと翔三くん以外の出演陣の顔とお名前が一致せずだったけど楽しかったです。ごめんね。筋書き読んで勉強します。

たしか宝塚のパンフレットも同じスタイル(もっと細かい場ごと)だった気がするけど、幕ごとの配役書いてあるのホント天才。

おかげで琉球のおどりがものすごく好きだった踊り子さんのお名前がわかりました。市川笑野さんでした。

あと笑三郎さんの倭姫がものすごく魅力にあふれていたので次もチェックしようと思いました。


後ろの子役がめちゃくちゃかわいくてオペラしたんだけど、名前判別不可でした。特に帝の裾持ってた子がめっちゃ好みだったな。

歌舞伎の世界って総じて角子似合いすぎで、大和の血だな……と思いました。白塗りの角子、そんなに似合うかよ……


いつも以上にぶつぎりだけどおわりです。スーパー歌舞伎、やっぱり半日かけて味わうドデカ大衆エンタテイメントだった。

何も要らんからとりあえずビジュアルとド派手立ち回りにぶん殴られに来い!!!!!って感じ。なのに話の筋がちゃんとしてて(語彙力がない)、ちゃあんとエンタメと教養を両立してるのが最高だなと改めて思いました。あー楽しかった!!!

同じ時代を生きてて良かった【舞台 中村仲蔵】

観たというより「目撃した」という気持ちがどうしても先行する中村仲蔵、東京千穐楽。芝居の魅力を再確認したお芝居でした。

芝居の魅力を再確認させる芝居を、舞台作品というエンタメとして上演するって、演じる側としてはハードル高すぎだと思うんですけど、まじでほんとうに出演陣が誠心誠意この芝居に向き合って全力で板の上で芝居しているのが伝わってきて、この芝居が見られて良かったなあって心から思った。もちろんすごく面白かったけど、その面白さよりも「いい作品だった」って感想が上回るほど良い芝居体験だったので書き残しておきます!!


他に誰が仲蔵を演れただろう

舞台で活躍する役者さんはたくさんいらっしゃって、その誰もが唯一無二の道を歩んでおられるのは分かっています。

でも、中村仲蔵は、この舞台は、きっと藤原竜也以外の誰にも演れなかった。

そう思わせるほどの怪演。「怪演」って表現は人生で初めて使ったけど、ほんとに存在するんだなって思いました。


舞台に立つこと、芝居に生きること、役を突き詰めること。血筋も経歴も持たず、我が身ひとつで役者という生業に命をかけて向き合って、追い求めて、突き抜けて、前例を飛び越えて、血反吐を吐きながら、ただひたすらに「もっと良い芝居」を求め続けた孤独な伝説。

これは、この舞台だけは、藤原竜也以外の誰も真ん中には立てなかった。彼が演じるべくして上演された芝居でした。藤原竜也と同じ時代を生きててよかった。


わたしが舞台を観るきっかけになったのが藤原竜也で、舞台の沼に足を踏み入れて最初5年くらいは彼の舞台作品を片っ端から観てた。とはいえ全て観られたわけではないし、映像作品なんかもっと見逃してるし、ただ、生で観る舞台の面白さを教えてくれたのは間違いなく彼だった。

SNSもやってなければトーク番組にもそれほど出ない。ただあの人の芝居に、存在感に、役として生きる姿に惹かれて、それを観るために劇場へ足を運んでいた大学生の私。あの頃の私に、はやく藤原竜也の仲蔵を観せてあげたいよ。こんなすごい芝居を演る人だよ。中村仲蔵、間違いなく彼の演劇人生で代表作のひとつになる演目だと思いました。(なお映像は圧倒的にカメレオンがすきです)


舞台装置と外郎売

大きな三階建てのセット二つが縦横無尽に動いて空間を作っていくの、めっちゃ良かった。ロンドン・ウエストエンドのLes Misérablesみたいだなと思いました。

とにかくデッカイ舞台装置の使い方がうまい。(褒める語彙力が足りない)

両サイドに階段が出てくる「地下」の奈落とか、二つのセットがパカっと割れて「道」を作った雨の街道とか。舞台になったり楽屋になったり、2階でメインの芝居が進んでいる間も3階にいる役者たちがしっかり時間の経過や物語の膨らみを作っていたり……


そのデッカイ舞台装置が作る緻密な空間がいちばん良かったのが外郎売です。っていうか舞台装置云々を置いておいても外郎売はやばすぎた。

本家歌舞伎の外郎売は観たことないので知識としてしか知らなくて、冒頭は「わあ、外郎売だ!」くらいにしか思ってなかったんですけど。ねえ、あんなに個人の技量が試される演目だなんて知らなかった!!!!

最初は淡々と喋り出したのに、どんどん藤原竜也が作り出す渦に巻き込まれて、どこまで行くの?って引きずり込まれていくあの衝撃ったらないよ。

それを演出しているのがあのデッカイ舞台セットなんですよ!!!


最初はセットの全部の空間にロールカーテンみたいな幕が降りててただの壁なんですよね。それが外郎売が盛り上がってくる中盤あたり、観客も「どこまで口が回るの???」って思い始める頃。デッカイ舞台セットの幕がひとつだけ上がる。食い入るように仲蔵を見つめる役者がいる。ふたつめ、みっつめの幕が上がる。みぃんな引き込まれるように外郎売を見てる。どんどん幕が上がって、どの役者仲間たちの目も仲蔵に釘付けになっている。

わたしたち観客が「引き込まれていく」感覚を持つタイミングで、舞台の奥の役者たちも同じように引き込まれていって、板の上の真ん中にひとりぽつんと座る仲蔵に前も後ろもみんな引きずり込まれていくあの瞬間、いかに仲蔵が「伝説」だったかを肌で感じた気がしました。吸引力がすごい。

っていうかそんなことになってる藤原竜也すごくない?どうなってんの???


花道が最高

話が前後するけど、前情報をなんにも入れずに千穐楽へ飛び込んだので、客席に入ってびっくりしたんですよ。ブリリアに花道なんて作れるんだ??????!?!新感線もやろうよ、花道ブリリア。


歌舞伎は出捌けが大きな見せ場になっていることがほとんどだし、花道って「もうひとつの舞台」って感じだけど、仲蔵の花道はもっと「象徴」って感じがしました。

仲蔵が何度も口にする「目を瞑ると浮かんでくる、まっすぐに伸びる一本の道」が、木戸銭を払って観に来た客の間を通っている。芝居の盛り上がりを生み出す華やかな舞台装置じゃなくて、先の見えない不安と未知への恐れが入り混じった、こことは違う何処かへ続く道。未来と現在との端境。

こうやって考えたら、与えられている役割としてはもしかしたら本家の歌舞伎と同じなのかもしれないけど、よりその象徴性が際立っていたなあという気がします。


ていうか、前方花外席から観る仲蔵、あまりにも「すべてが見える」ので最高だったんですよお…

花外って「花道芝居がぜんぶ背中になっちゃうからイマイチ」みたいな通説があるけど、いや確かにそうなんだけど、成志さんも高嶋さんも莉生くんも背中向けてたけど、それよりもライトを背負って花道を進む役者たちの表情が見えるの本当に最高だった。


1番良かったのはねえ、ちょっとどのシーンか忘れましたけど、ひとりでゆっくり花道を進む藤原竜也が、舞台からのライトの逆光に入って、まさに「光」から「影」に足を踏み入れる瞬間を目撃したことです。足元の照明とか客席側からのピンスポとか、花道の役者の顔を照らす照明なんて山ほど用意されてるのに、たぶんどれも敢えて使われてなくて、七三を過ぎるあたりで急に前半身が影に入って、光を背負ったまま影を抱く仲蔵がビジュアルとして完成されててハッとした。ちょっとどのシーンか忘れましたけど…

忘れた理由は、ほかの3つの花道芝居がシーンとしてインパクトが強すぎたからです。っていうか、書きたい感想の7割が花道芝居な気がする。


my fav 花道芝居1:さきの引っ込み

この作品唯一と言っていい引っ込み芝居!!!(感想には個人差があります)

※感想には個人差があります!!!


引っ込み芝居が唯一だったかどうかはね、感想には個人差がありますのでね。わたしはこのシーンだけが明確に「引っ込み」だと思いましたという話。

花道を使った印象的な演出は多々あったけど、引っ込みという形で「退場」をあんなに劇的に印象付けるのほんとずるいなー!と思いました!尾上紫さんのお役、どのシーンもそんなに長くないのにめちゃくちゃ印象的でずるい。(母たちめっちゃ良かった)


おっとりのんびり天然っぽさを発揮していた、良いとこの娘さん然としたさきが、家が没落して落ち延びるしかなくて、険しい顔で哀しみを堪えて、新左の未来を憂える強い母の姿を見せるあの引っ込み。

新左の運命が反転した瞬間を表すのに、あんなに効果的な引っ込みある?!!

っていうか、そこでガチで三味線弾く市原隼人もずるすぎるんやが??!!?!

前方花外から間近にみえるさきの表情と新左の三味線、贅沢すぎたmy fav花道芝居です…


my fav 花道芝居2:これより先は孤独

いやー、もう良すぎるでしょ高嶋政宏知ってた…

「目を瞑ると浮かんでくる、まっすぐに伸びる一本の道」の向こうから、ゆっくり微笑んで仲蔵を迎えにくる、歌舞伎界の特別な名跡團十郎」の姿。

その意味を悟って、一瞬だけ子供みたいな頼りなさげな表情に戻る仲蔵。

曖昧で明言されないけど、この確固たる師弟関係のふたりが、ほんとうにもう、並び立つ才能ってこういうことなんだなって。


仲蔵がもう戻れない花道に足を踏み入れて、ゆっくり團十郎がその道をあけわたして、花外席からはその團十郎の背中だけが見えてるんですけど、何の悲しみも憂いもなく、ただ堂々と道を譲ったその背中がほんとうに素敵で…

これほんとに蛇蝎と同じ人?って自信無くなって検索しました。間違いなくお兄ちゃんで合ってた。役者ってすごい。


その團十郎を追い越す仲蔵が、團十郎一瞥もくれず、思いも残さず、ただ前だけを見て進んでいくのがほんと、そういうとこだよな〜〜〜!

でも、ほぼ真横から観てると、追い越す瞬間グッと踏み出す一歩がすごく重いんですよ。別に足を踏み鳴らしてるわけでも、目立った歩き方をしてるわけでもないのに、すごく重い一歩。

あの一歩が、歌舞伎界の歴史的な一歩なんですよね。ほんと、演劇界のレジェンドを演劇で表現するの、高すぎるハードルを飛び越えていて眩暈がする。


my fav 花道芝居3:次世代への布石

鶴屋南北!!!!!!!!!!!

いや、待って、鶴屋南北!!??!!?!?!

笑三さんの後ろに立ってる見たことない若い衆的な斉藤莉生が、なんか意味わからん存在感を醸し出してるけど、それ誰???って思ってたら、ニヤッと笑って名乗った瞬間鳥肌が立った。無知な私でも名前聞いたことある狂言作家やないか……間違いなくどえらい大物だよ……


物語の構造として、あそこで次世代の大物狂言作者出してくるのはずるすぎる。本来は時代的にまだ鶴屋南北を襲名してないみたいなんですよ。でもあそこで名乗ることに意味がある。同じ時代を生きた役者で仲蔵の影響を受けない者が居ないように、五代目團十郎も、鶴屋南北も、すぐ後の時代を生きて仲蔵の影響を受けない者がいるものか!

東西の歌舞伎界に大きな大きな爪痕を残したことが、あの鶴屋南北の登場で明示されるの、ほんっっっっとずるくないですか??!!?!?!?!


ちなみに会場出てフォロワーさんと合流して開口一番「あの鶴屋南北の存在感なに??!!?!?!」って混乱が口から飛び出た。なんで、なんで突然そんな存在感出せんの????

それまで名も無い女方とか稲荷町の若手役者とか、物語の時代と世界を組み上げる一員としてスッと景色に馴染んでたくせに、あの花道でだけ突然「異質な存在」としてその場に立ってるの、本気で意味わからんのですが斉藤莉生って人生何周目?(ミステリアス・ストレンジャーのレポでも言いました)



良い芝居だったなあ…

ほんと、何回思い返してもこの感想しか出てこないし、終演後に呟いたこの投稿に自分で何度でもいいねしたい。

ねえ、思い出しました。三味線以外の市原隼人の話をまだしていません。畳む前に見出し追加する。


ずるすぎる存在

ねえ〜!市原隼人のずるすぎる肉体美!脱いだ瞬間笑っちゃったよ!!!!!圧倒的強者・陽の者の肉体だった。陰陽道なんてひとつも登場してないけど、陰陽ってほんとに存在するんだな……って思わされた圧倒的な「陽」の気。仲蔵の前に現れる「異なる者」として最高の存在だったよね。仲蔵はぜっっっったいに隠の者なので…


でも前述のとおり前情報をひとつも入れずに飛び込んだのでもちろん配役も見ておらず、結構序盤で八百蔵がナレ死してどうしようかと思いました。

歌舞伎役者…ほんと推しは推せるときに推さないと…人間いつ死ぬか分かったもんじゃないですからね…


二役目で出てきてほっとしたけど、今度は三味線弾きで腕も立つ武家の末っ子って、設定がトゥーマッチで白目剥きそうだった。中村仲蔵市原隼人、無敵じゃん。

雨の蕎麦屋で半身振り返った新左のシルエットが天才すぎて拝みました。仲蔵と一緒にわたしも「これだ……!!!」って心の中で叫んだよ。まぎれもなくあれが「「「正解」」」でした。


自信と野心しかない八百蔵と、誠実で欲の無い新左って真逆のキャラクタを両方自分らしく演じていて、この人ビジュアルisパワー!って感じなのに演技もできるし三味線も弾けるのほんとうにずるすぎでした。天才。


屋台骨のしゃべくり

ギリギリで思い出したのでもうひとつ見出し追加します。わたし池田成志のあの喋り方が好きすぎるって何回も言ってるんだけど、ずっと喋っててまじで最高だった。


ひとりだけ世界線を外れた存在で、でもデウス・エクス・マキナではなくて、ちょっと伝わりづらい歌舞伎の「別格」を自然に理解させる装置で、メタ的に物語の解説をしてくれる有難い存在。

ともすれば「ただの便利なシステム」になってしまいそうなのに、しかも他があんなに地に足ついた世界観のお話なのに、成志さんのあの独特な存在感がすごくちょうど良い感じに違和感を無くしていて、なんで???ってめちゃくちゃ思いながら見てた。

実在した過去の役者の話を誠実に堅実に描いてるのに、そこに違和感なく神様が登場してるの、普通は意味がわからなくないですか???


藤原竜也だったから成立した芝居だったけど、池田成志でこそ成立した芝居でもあったと思います。実はほぼ新感線でしか観たことないんだけど、あのひとはほんと、間合いの取り方が天才的すぎるし、板の上と客席とを繋ぐのが上手すぎるんだよなあ。

今度成志さんが出てる新感線じゃないストプレ(新感線にストプレなんてあったか?新感線は新感線というジャンルだね…)を観に行こうとあらためて思いました。


やっぱり良い芝居だったよお…

前情報入れてなさすぎていまどこで公演やってんの?ってサイト観にいきましたけど、明日から名古屋!そのあと宮城!福岡!大阪!と続くみたいです。全国ツアーじゃん。

大阪は新しいSkyシアターMBSですね。立地だけでめちゃくちゃ最高なのに、あのBRAVA!の後継劇場って聞いて、柿落とし前からハコのファンになりそう。シアターBRAVA!、快適だし演目ラインナップも良くてめちゃくちゃ好きだったんだあ…


柿落としとしてこの中村仲蔵を上演するって、劇場のあゆみとして贅沢すぎて羨ましい。(しかもちゃんと藤原竜也の舞台でSkyが命名権取っててほんと徹底してる…すご…)

オープニングシリーズの間に、ちゃんとSkyシアターに観にいきたいなと思います!!!


うっかり劇場の話になっちゃった。

仲蔵の感想に戻りますが、このカンパニーでこの芝居が上演される時代を生きていることに感謝したい。

プライベートに余裕があればもう一度(それこそ大阪へ)観に行きたかったです。外郎売の引力をもう一度感じたい…

映像としても残るかもしれないけど、現場で感じたあの引力は生の舞台ならではですよね。やっぱり現地で観る舞台をあいしてる、と再確認したお芝居でした!ほんとうに良い作品だった!!!

わたしたちも15世紀のフランスを共に生きた【舞台 ジャンヌ・ダルク】

観なきゃ観なきゃと思いながら、一度も観たことがなかった中島かずき脚本の外部作品。ついに!ジャンヌ・ダルクを!ようやく!観た!

実は白井さんの演出がちょっと肌に合わないんですけど、今回それを差し引いても超よかった。キャストひとりひとりのエネルギーというか、「自分が信じるものを自分こそが守り抜くのだ」という意志がほんとうに強くて、激動の15世紀フランスをわたしも一緒に生き抜いてきた気分です。

もう再再演だし、大筋は(大筋は)史実だし、ネタバレとか気にしないことにした。

  • わたしは彼女のことを何も知らない
  • 物量に押された1幕
  • 中島脚本に押された2幕
  • まさにLa Pucelleだった清原果耶
  • 生き残り背負わされた者、小関裕太
  • わたしたちも 15世紀のフランスを生きた
  • 人間臭いイングランド
  • ずるすぎる傭兵たち
  • あまりにも素敵すぎる「母」りょう
  • 括るには勿体なさすぎるけど括る
  • 白井演出の何が苦手なのか
  • 神は本当にいたのか?
  • 信じているものをただ信じる勇気
  • すごい、何にもまとまらなかった


続きを読む

「命のやりとり」を見せられている【劇団新感線 天號星】

太一さんお誕生日おめでとうございます!

初日振り2度目の天號星、東京公演 9/24マチネを経たエントリです。2回観たけど結局おんなじとこで「ハァ〜〜最高〜〜〜!!!」ってなっちゃってその先の感想に進めないので、とりあえずちょっとでもエクスポートして咀嚼して一歩ずつ進んでいこうね、という試みです。


続きを読む

全ては「ゲーム」だったスリルミー2023松岡山崎ペア

2021で悔しいくらいに刺さった松岡山崎ペア、2023でも悔しいくらいに大好きだった……もうすでにもう一回観たい……

  • 俺の大好きな松岡私と山崎彼
  • 俺の知らない大好きな山崎彼
  • それがゲームだったんです
  • 俺の知らない松岡私
  • 最高で完璧な夜


続きを読む