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前情報なしでスリルミーを浴びて溺れた話【スリルミー 松下×柿澤ペア】

ちょっとまってなにこれ混乱がすごくて混乱。スリルミー松柿を観てきました。前情報を何にも入れずに観てきたスリルミー、狂気という名の金槌で殴り殺された気分です。しんどい。しんどいけど過去のCDを買おうと迷わず決めました。明日成福を観るときまでにどれ買うか決めます。

以下、ネタバレもくそもない書き殴り感想!

こちらスリルミーというコンテンツ自体が初履修なので色々とご容赦ください!

 

混乱

終わってから感想を喋っているひとたちは、何を喋っているの?そんなに笑顔で何を喋れるの?え?何?わたしはいま何を観たの?こんな狂った物語をあんな長調に乗せて歌い上げるの狡くない?!

昔っからわたし狂気の演技が大好物なので、頭から終わりまで好物の大洪水で感想が言語化できなさそうな気がするけど、書かなかったら気が狂いそうなので勢いで書きます。

とりあえず配役すら見ていないわたし、明日の成河は彼なの私なの?!?!福士誠治はどっちなの?!(いや普通にわかるけど、髑髏でぶん回った身としては成河彼が観てみたいわけだよ)

 

 

歌と演技

「私」は演技が上手い。「私」だけが50代と未成年を行き来する。年齢だけじゃない、その間にあった人生も含めて描かれる変化。冒頭から「私」の人生に何か取り返しの付かないことがあったことがわかるのって怖いよね…人を殺したくらいじゃあそこまで壊れないもんね…と思いながらゾクゾクした。狂気大好物です。

 

「彼」は歌が上手い。「彼」の感情はいつもメロディに乗っている。「彼」が普通に喋るのは「私」に語りかけるときだけ。いつも「彼」が歌い、つられて「私」が歌い出す。主旋律はいつのまにか「彼」から「私」へ移っていく。舞台はいつも「私」が主役で、その三人称の通り「彼」の“地の文”は存在しない。だから「彼」は歌に感情を乗せるしかない。「彼」は弱音さえ歌でしか吐けない。

獄中の「彼」の歌だけエンドレスで流しながら眠りに就きたい。

 

 

ストーリー

あくまでも「彼」は三人称でしかない。それなのに観客は「彼」目線で物語を追わされているのほんと何なの?!?!ほんと、何なの?!?!

 

 

話が飛ぶけどBAUに感謝したい

ストーリー話す前にこれ書かなきゃいけなかった。

アメリカに「クリミナルマインド」ってシリーズのドラマがあるんですけどね。FBIのBAUチームに所属する心理分析官たちが異常犯罪者の心理を分析して追い詰めていくサスペンスドラマ。(けっこうエグい)わたしこれ大好きで全シリーズ観倒してるんですけど、なんかほんと、そんな気分。(どんな気分だ)

狂気には理由があって、その人なりの理論があって、最初から最後までそれは一貫していて、支配者である「彼」の狂気と、従属者である「私」の狂気は別のところにある。従属者には従属者たる理由があるし、お互いへの過信が綻びになる。ほんとうは別物なのに、自分たちは同じだと思ってるから。

そういう、ドラマでよく取り上げられる犯人側の哀しさが、メインストリームでドカンと降ってくるからもう好きでしかない。毎日でも浴びたい。

 

 

ストーリーの話に戻る

つまり、「私」が一人称で地の文も存在するのに「彼」目線で話を追わされてしまうってことは、「彼」は普通の犯罪者で、「私」が精神異常者、いわゆるサイコパスだったってこと。「私」に共感できずに「彼」目線で物語を追ってる時点で、異常なのは「私」だと明示されてたってこと。

「彼」の動機は何となく描かれているのに「私」には動機が無い。34年経ったいまでも動機を理解してもらえていない。つまりそういうこと。なんてこった!!!

 

 

「彼」とは

物語の半ば、「彼」が殺人に思い至るシーンで、ふと恐ろしいことを考えてしまった。

「彼」は実在したのだろうか?

もちろん、2人は触れ合うし、会話するし、電話もする。電話を弟に取り次いでもらう、なんて細かい描写まである。矛盾は承知。でも、本当に「彼」なんて存在した?「彼」は「私」の別人格なのではないか?

 

前情報無しで観た今日だから言える、突拍子もないし、筋も通ってない思いつきなので苦手なひとは回れ右どうぞ。

 

殺人に至るシーン。「俺が最もいらいらしている相手を殺す。」殺人を思いついた「彼」はそう言う。誰ってそんなの弟に決まってる。初見の私でも分かる。それなのに、「私」は言うのだ。「それって、ぼく?」と。「彼」は否定せずに「お前以外で」と言い直し、それから標的は「弟」そして「弟以外」へと移る。

ここでどうしても「弟」と「私」がダブって見えてしまってもうダメ。父親の話が同じ人の話をしているように聞こえてもうダメ。とはいえ劇中に弟の存在もあるし、自分の中でもまとまってないからこれ以上の論理も何もないけど。例えば双子の兄弟で、大学4年のときに片方が死んでしまったとか、そういう。そう思ってしまったらもう抜け出せない。

 

まだ一度しか観てないから確かではないけど、「彼」が「実行」したことが描かれているシーンって、とても少なくないですか?血の契約書、誘拐、そして脅迫状。それくらい?

ふたり同時に何か行動することはほとんどない。ガソリンを撒くのも、鞄を漁るのもどちらかひとり。もう片方は何もせず佇んでいる。だからこそふたりで書いた契約書は異質で、存在感を放ってる。

「彼」が殺人を3日で準備をしたと「私」は言ったけど、あの様子だと道具を揃えたのは「私」だった。これも別人格を疑った違和感のひとつ。殺人に関しては全て「私」が実行していて、道具を揃えたのも、後処理も、眼鏡を落としたのも、全部「私」。しかも処理を「しなかった」ことを「彼」は知らない。一緒に居たのに。なぜ?

警察が家に来た時もそう。「弁護士なら俺がいる。取り調べで何を聞かれても、答えは俺が教えてやる」と「彼」は言う。ただし俺たちの関係は喋るなと。「彼」の居ない取り調べ室で、どうやって答えを教えてくれる?

実はぜんぶ頭の中の話で、ふたりの主導権の取り合いは、主導権ではなくて主人格の取り合いで、はじめは「彼」が主人格だったのに、いつのまにか「私」が「彼」を操りはじめて、主人格を乗っ取ってしまった。仮釈放されて再会した「彼の写真」それは主人格が「彼」だった頃の自分の写真…

 

とかね。考え出したらいろいろ出てきそうだけど、明日の成福までには時間が足りないので一旦ここら辺で畳むぞ!

 

 

明日は成福

とりあえずこれ以上考えるのはやめて、明日は純粋に新しいペアを浴びたい。ペアによって随分違うと聞いているので、新たな気持ちで浴びたい。新たな気持ちになれるかどうかは保証しない。たぶんむり。寝て起きてもたぶんむり。

と思ったけど、ようやく履修したから元の事件を調べたらユダヤ系の富裕層とかいろんな情報が出てきて脳の違う部分が悲鳴を上げている。別人格の話はもう今日限りだと思うけど、明日は別の意味でたぶんむり。

ああ戯曲本がほしい!なんかグッズ売り場で譜面付きって文字を見た気がするけどわからない。観る前はグッズにアクリルスタンドの意味がわからないなと思ってたけど、見終わっても意味がわからない。チャームと缶バッジに至っては、この狂気を身に付けるという狂気の気が知れない。何度も言うけど狂気は大好物なんですけど、個人的にはその狂気を携行品にお迎えする気にはどうしてもなれないので…戯曲本か楽譜集でお金を落とさせてください…ごめん…

でもほら、CDをお迎えしたら、あと99年浴びれる…やったね!!

どのペアにしようか…どこかで試聴とかできるのかな…と言いつつ、柿澤彼の感情が好みだったからかなり惹かれています。でも松也の私って底恐ろしいな…恐ろしいな!!!!!

 

うーん、配役が変わることが前提になっているこのコンテンツほんと恐ろしいよ…余地ありすぎて振れ幅ありすぎて正解無いやつでしょ…こわい…いつどこに遡っても違う正解に行き着くコンテンツこわい…こわい…すき…

 

 

(ちなみに成福の感想はこちら↓)

dramatic9ri.hatenablog.jp